イシュ・・・2・・・
「なにしゃりしゃりしてんだ?」
「そんなことが聞きたかったの?」
「いや。」
「花を食べてんだよ。あんたも食べる?」
「え?」
「転移できるようになるって花だよ。」
「それはすごい・・」
俺はびっくりした。そんな花があるのか。
『あるが,イシュに効くのは,毎日1キロくらい食べないと駄目だぞ・・』
『それは大変。』
「がんばって食べな。」
その声と一緒に,白い花が俺の前に山積みされた。
一つ食べてみる・・・甘い。
しゃりしゃりしゃり・・・
「で・・・言いたいことは何?」
「ああ・・・俺・・」
「両親のこと?」
「それもある。」
俺は花の脇に寝転んだ。腕を枕に時々花をつまんではしゃりしゃりする・・・
「俺・・・おまえにちゃんと礼とか言ってなかったと思ってな・・」
「は?なんなんそれ。いまさら。とりあえず,これが解決しなけりゃ,あたしも家に帰れないんだしさ。しかたないよ。手伝ってやるわ。」
こいつの家か・・・どんな世界なんだろう。行ってみたい・・・ふっとそんなことを考えている自分に驚く。
『青春じゃのう。』
「「は?」」
ドラヘの言葉に,俺たちは思わず同時に返しちまった。
『良きかな良きかな』
「ちょっと!!」
・・・
テントから, 誰か出てきた。振り向くまでもない。紫電先生だ。
「美優,そろそろもどらねえと,紫電先生が心配してるぜ。」
「先生が心配してるのは,あたしの事じゃなくて,あんたのことさ。」
そんなことは,分かってる・・・でも・・
「戻るぜ。」
「はいはい・・・」
言葉とともに美優が姿を現した。
少しほっとする。二人してテントへゆっくり戻る。紫電先生はテントの周りを点検している。大丈夫さ。ドラヘがいるからな。そうだろう?
『わしを買ってくれてるんだな。わしより美優を大切にしろ。美優はこれで・・・』
美優が慌てて自分の口を押さえるのが見えた。ドラヘも自分でしゃべれるようになれば良いのにな。
『そうはいかぬのじゃよ。わしと美優は一心同体。不埒なことを考えるでないぞ。』
「「・・・・・」」
俺も美優も呆れて黙ってしまった。
・・・
「・・あんたまさか,不埒なことをあたしにしようっての?」
「ばっ・・まさか・・頼まれてもしねえから安心しろ。」
そう言ったら,美優の奴,ものすっごく不機嫌になって,布団に潜り込んじまった。安心しろって言ったのにな。なんでだ?




