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イシュ・・・1

 城に行く前に,俺の両親かもしれない,ライトの言葉で,その町に向かうことになった。計画変更は直ちに通信機を使って,じいちゃん達の所に伝えた。


「・・・と言うんだ。」

「ほう?中央に近い町にいたことがあると?ううむ。あそこには大学があるな。」

じいちゃんは通信機の向こうで考えている。


「もしかしたら,大学は魔法学校に変わっているのではないかという疑惑の所ですね。」

 紫電先生も興味深そうに言う。

「もしかしたら,そこで何らかのトラブルに巻き込まれたのかな?」

 美優もつぶやいているんだが。肝心のライトは黙りだ。みると,頭を抱えている。こういうときは男の口調に戻るんだよな。つまり親父という訳か?あんまりピンとこねえ。両親だって言う意識も希薄だぜ。あまりにも荒唐無稽な話だからかな。美優が龍だってのもな・・荒唐無稽な話なんだが信じられるってのもな・・・


「大学で我々は,何かの実験に使われた。」

 え?多分親父の声でそう紡ぐ・・・

 通信機の向こうで,じいちゃんとばあちゃんが息をのむのが分かった・・・


 それっきり親父(?)は黙っている。

 重苦しい沈黙が流れている・・・

「なぜ,ライトが,そこに行ったのかも不思議なところだよね。」

美優が続ける。そうだ。神殿に行ったはずなのに,何故そんなところに行ったのだろう?

「わからない。覚えていない・・・」


・・・・・


「やはり罠か?」

通信機の向こうでじいちゃんが言う。紫電先生も顔を曇らせている。乱麻が,ま抜けた声で,テントの中から,

「お母さん。そろそろ寝る時間だよ。」

って言わなきゃ,俺たちはもっと・・・・・


 テントの中は狭かった。端にライト。その隣に乱麻。それから紫電先生。俺。何故か美優は俺の隣だった。ライトと俺を離しておこうという気持ちはよく分かる。だが,美優が俺の隣とは。

 俺が紫電先生に,美優をライトの隣にしろと言ったら,

「白龍の加護がイシュ様に及ぶようにです」

と来たもんだ。白龍の加護ねえ・・・あいつ俺を守ってくれるんだろうか?未だに背にも乗せてはくれないのに・・・まあ・・・考えてみれば,女の子の背中に乗るってのもな。ちょっと・・・かな・・・


「あたしにかまわず寝てて。」

美優が言って,外にでる。紫電先生が気にしてたけど,

「大丈夫だ。白龍の加護持ちだからな。」

と言ってやったら,安心したみたいだ。


 夜番は立てない。テント自体に強力な守りの魔法がかけてあるから,安心してぐっすりねむる事が出来るんだ。ばあちゃんありがとう。

 そうはいっても,紫電先生は,乱麻と二人で夜番を交代でするつもりだったようだ。

俺が,

「ばあちゃんの魔法を信じられねえのか」

って言わなかったら,今頃どっちかが外にいたんだろうな。


乱麻はすぐに寝息を立て始めた。美優はなかなか戻ってこない。いくら白龍とは言え,女の子だ。俺は少し心配になってきた。そっと立ち上がったら,紫電先生が目を開けた。寝てなかったのか。


「イシュ様、どこに行くのですか?」

「ちょっと・・・」

「お一人で,出てはいけませんぞ。」

「美優が外にいるだろう。」

「外には誰の気配もしませんぞ。」

俺はため息をついた。

「美優は気配を感じさせないんだ。」

「まあ・・そうなんですが。」

「大丈夫だ。美優がいれば,危ないことなんかないさ。」

多分な・・・


・・・・・


まだ何か言いたそうだったけど,俺はテントをでた。

「美優,美優?」

呼びかけると

「はいよ。なあに?」

と言う声が近くから聞こえた。

「ちょっと話をして良いか?」

「いいよ。」

「聞かれたくないから・・・」

「了解・・・」


・・・・


「聞こえないように防音処置をしたよ。」

「ありがとう・・・」

「珍しいね。御礼を言うなんてさ・・・」


 俺はため息をついた。俺はこいつに返しきれないほどの借りがある・・・

「なあ。」

「なに?」

 言葉の合間にしゃりしゃりという音がするのはなんだろう?

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