からかってやれ・・・
『そりゃあ,おまえを守るために決まっておるだろう。』
「え?俺を?』
「確かに。あんた皇太子だって言うじゃないの。」
「そりゃ・・おじさんが王だから,仕方ないだろう。おじさんは結婚しなかったし,恋人もいないくらいだったからな。」
「王にしちゃ珍しいんじゃないの?」
「かなり珍しいだろうな。」
「お父さんやお母さんかもしれない・・あの人の事は?」
・・・・・
「あの人を守るのはイシュ。あなたなの?」
・・・・・
『どうも,乱麻がついて来るみたいだぞ。』
『え。あの子大丈夫な子なの?』
イシュが顔を上げた。
「あいつ,去年この国の若者の中で行われた競技会で優勝しているぞ。」
へえー人は見かけによらないもんだねえ。
「乱麻があの人を守る訳か・・・」
そうだよね。親子設定でもおかしくないかもしれない。常に二人で行動していれば・・・『ローティがなにやらお守りと称して魔法の何かを渡していたぞ。カナリ強力な守りも与えていたしな。』
・・・・話をしているうちに返事をしないなって思ったら,イシュの奴,寝てるじゃないのさ。邪魔者め。
転移・・・させるのはちょっと怖いから,脇にどかして,あたしも寝る事にした。イシュが,上掛けを下敷きにして寝てるから,迷惑だなあ・・・ちょっと脇に転がして・・よいしょ。
あたしはちゃんと布団に入る。イシュ?し~らない。・・・でも・・・明日,出発するのに,風邪引くとめんどくさいか。布団布団・・・掛け布団を思い浮かべるとちゃんと出てきた。それをイシュに掛けてやる。あたしって親切だなあ・・・おやすみなさい・・・
翌朝,ノックの音で目が覚めた。
「入れ」
え?あたしはがばっと起きた。
「あ?」
イシュがびっくりした顔してる。
「何でおまえがいるんだよ。」
「ここはあたしの部屋です。
「あ?」
「あ,しかいわないけどさ,あんたが夕べ自分の部屋に帰らなかったんでしょうが。」
「あ・・・」
・・・そこに,毎朝起こしてくれる手伝いのおばちゃんがワゴンを押して入って来た。
・・・・・
・・・・・
一瞬おばちゃんは固まった・・・・
・・きまずい・・・
・・・・・
「・・・美優様,お時間です。お着替えもお持ちしました。」
カーテンを開け,テーブルにお茶の道具をおいてくれた。ソファーの上に,着替えも一揃いおいてくれる。それから浴室に行って,お湯を入れてくれた。一杯になると自然に止まるように設計されてるから,あふれないんだ。
この手伝いのおばちゃん。毎朝,砦のお客さんにお茶も出してくれているんだ。いつも思うんだけど,いったい何時から働いているんだろう?夜もいるしね。
「あ・・ありがとう。」
・・・・
おばちゃんは布団の上で簿~っとしているイシュに,
「イシュ様。お部屋に行ってもいらっしゃらなかったので,みんなが心配しておりました。ここにいる事を知らせて参ります。」
って言って,今にも行こうとしてるから,
「あ?いや。いい。今戻る。」
・・・イシュは慌てて立ち上がって,おばちゃんを追い越して部屋から出て行った。
「美優様。おめでとうございます。」
「は?」
何が何だか分からないうちに,おばちゃんが出て行った・・・何か削られちゃったよ・・・・・
お茶をゆっくり飲む。このお茶は,毎朝違うフレーバーだよね。うん。今日のも美味しい。お茶が終わったら,お風呂にゆっくり入った。今日はいつ龍になろうか・・
着替え終わってから,部屋を出て食堂に向かう。もちろん隣の部屋のドアをたたいてイシュも呼ぶけど・・・イシュも心得たもの。あたしが部屋から出ると,大体一緒くらいにドアを開けて出てくるんだ。今日はいなかったから,ノック。あれ?出てこないね。
「入りますよ。」
声をかけてからドアを開ける。
あら。中にお爺さんとおばあさんがいた。
「美優さん。申し訳なかった。」
「は?」
「だから,寝てしまっただけだって。」
なにもめてんの?
「朝ご飯に行こうよ。」
「ああ。おまえ,じいちゃんとばあちゃんに言ってくれよ。寝ちまっただけだって。」
・・・・からかってやれ・・・
「重かったわよねえ・・・」
え?って顔でおばあさんがこっちに来た。
「だるくないか?」
「睡眠不足なだけです。」
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
「おまえ~~~~そう言う言い方は~~~~」




