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なんのため?だれのため?

 美味しい食事の後,いつものように庭に出て,ゆっくり体を伸ばす。寝転んでしゃくしゃく花を食べてると,乱麻がなにやら引っ張って,やってくるのが見えた。ちょいといたずらしてやろうか。いやここはやめとこう。

 見るとはなしに見ていると,乱麻は剣を引っ張ってたものからどっこいしょと持ち上げた。持ってるって言うより引きずってるって感じだね。ふふふ。なんていうのかな・・・剣道の剣とも,フェンシングの剣とも違う。何だろうね?本当に重たそうな剣だね。騎士達が付けてた背中の剣とも違う。ようやく・・・持ち上げて・・・膝くらいまでの高さに持ち上げて・・振り回すって言うか,振り下ろすって言うか・・・よろけてるって言うか

そこに一閃さんがやってきた。

「乱麻。またやっているのか?」

「父上。」

「その剣を持ってここまで出てこれるのは,たいしたものだが,重さで今にも剣に引っ張られそうだな。」

「・・・・」


我慢できなくなって,自分になって姿を現した。

「その剣って普通の剣とは違うんですか?」

わっ・・二人ともびっくりしてるね。


「まるで気配が分かりませんでした。さすが。白龍の加護もちの方は違いますね。」

あたしは,その剣を貸してもらおうと,手を伸ばした。

「重いですよ。これを持てる人はなかなかいませんから。」

「ちょっとだけ。」

ふん。って感じで乱麻があたしに手渡す。何だ。軽い。

あたしは,ちょっと素振りしてみた。おお。いい感じ。

二人とも唖然として見てるね。

「この剣って,どこが普通のと違うんですか?」

さっきの問いをもう一度してみる。

・・・

「この剣を軽々と振り回す・・・あなた様がこの剣の主。」

は?聞いてる事と違う事を言ってない?

あたしは剣を乱麻に帰そうとした。乱麻の奴受け取りを拒否した。なんだ?一閃さんに渡そうとしたら,

「その剣は,美優様がお持ちください。」

は・?

「いりません。」

「いや。 鎧袖(がいしゅう一族に伝わるその剣。振り回す事が出来る者がその代の持ち主となります。」

「そんなん何人もいるでしょ。」

・・・

「私にはもてません。乱麻がかろうじて持ち上げる事が出来るくらいです。」

「・・・ここまで持ってくるのに,台車を使った。」

ぼそっと白状してるね。


 剣をよく見たら,柄に龍の意匠が掘ってあるね。黒紅青・・そんな色の中に金色の龍。赤は花か?綺麗じゃないの。剣の本体にも龍の体の続きが描いてあるように見える。ふうん。刃は少し反っていて,太さはあたしの腕くらい。平たいけどね。

『貰っておけ。』


あたしは慌てて口を押さえた。

「今のは白龍様ですか?」

『そうじゃ。この剣には龍の力が込められておる。美優が持つにはふさわしかろう。』 何勝手に決めてんだあ!!!


 剣をぶら下げてあたしは部屋に戻ることになった。剣をどうやって運べばいいのさ?凄く困る。こんなの持ったことないもん。入れ物に入れて持って行きたいな。ちょうど長めのバットくらいの大きさだからさ。黒いのがいいかな。つまんないかな。黒で,真っ赤な薔薇の花とか・・白い花とか・・・いや。ただの真っ黒なのがいいな。

「美優様」

 呼び止められて振り向いた。想像してたとおりのバット入れを持った一閃さんと,乱麻がいる。

「あ。それ?ありがとう。ちょうどいいわ。」

「いえ。美優様が出したのではありませんか?」

あ・・・また無意識にやってたのかな・・・


 真っ黒なバット入れを受け取って剣を入れた。ちょうどいいな。これを背負っていけば。部屋の前まで二人は送ってくれたみたいだ。あたしが部屋に入るまで廊下で直立してたからね。

 部屋の中にイシュが待ってた。

「乙女の部屋で勝手に待つな。」

ってあたしが言ったら,鼻で笑われたんだけど。ちょっとむかついたから,バット入れをひょいと持たせてやった。

「わっ。なんだあ」

 落としてるし・・・あたしは慌てて床に落ちる前に拾った。

「この入れ物にはたった今, 鎧袖(がいしゅう一族の大事な剣だと言って預かった物が入ってるの。」

「見せて見ろ。」

「何か偉そうじゃないの。」

「・・・」

 バット入れから剣を出して見せる。賢明にも,剣を持とうとしないでテーブルにおけと言ってた。ふふん。重いよ~~~~

「すげえ・・・この模様・・」

・・・

「用事は?」

「ああ・・・明日からの事だ。」

「お父さんかお母さんかもしれない人の事?」

「それもあるし・・・紫電先生の事もある。」

イシュはため息をついてベッドに転がった。

「ちょっと!!!あたしのベッド!!」

「いいじゃねえか・・・」


イシュは深いため息をついた。

「紫電先生が俺たちと一緒に行く訳が分からねえ・・」


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