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しゃりしゃり・・・・

 黒い山・・・そこに本当は神殿があるはずなんだそうだ。

 本当はって言うのは,イシュのお母さんが連れて行かれたはずなのに,到着していなかったと言う返事を寄越して,その後,使いの者がもう一度確認に行った時には,その神殿は,跡形もなくなっていたんだそうだ。


「その頃から,隣国との関係がぎくしゃくし始めたんだっけ?」

「俺も詳しいことはよく分からないんだが。」

二人の声に,紫電先生は黙って考えてたね。それから,居住まいを正して,

「私も本当のことだと断言は出来ないんですが。」

そう前置きをしてから話してくれた。


 あの黒い山には,何かが眠っている。それが何かは分からないけれど,それを手に入れた者は,この世界を全て手に入れることが出来るんだそうだ。それを掘り起こすには,莫大な魔力と力がいる。だから,国境にちょうどまたがっている,この黒い山を両方の国も手を付けてはいけない,不可侵の山としてあがめていたんだそうだけど・・


「その均衡を壊そうとしているのが隣国です・・」

「具体的には?」

「神殿を破壊したことです。」

「え?イシュのお母さんが行ったという神殿を?」

あたしが問い返したら,イシュも聞く。

「隣国の仕業なのか?・・・」

「15年前に。我々が驚いたのですから。当然,隣国の仕業としか思えません。」

「って一概に言えるの?」

あたしは疑問をぶっつける。

「「え」」

紫電先生と一閃さんの声が重なる。

「しかし,我が国の仕業ではないのですから。」

「って,向こうの国でも無いのかもしれない。」

「「・・・・・他の国の仕業と?」」

「かもしれないし,そうでないのかもしれない。」


・・・・・


 何でも疑問を持って物事に当たれって言ったのは,誰だったっけ?小学校の頃の理科の先生だったかも・・・綺麗なつるつる頭のあの先生。今頃どうしているかなあ?

 1面からしか見ないのはいけないって言ったのは?中学校のお髭の先生かな?たまには先生方も良いこと言ってたよ。うん。


「もしかしたら,隣国も,我が国が破壊したと思い込んで・・・」

「いらぬ争いになっているのかもしれない。」

あたしは後を引き取る。

 

 お馬鹿なあたしでも考えることができるのに,2つの国は,頭からお互いが悪いと決めているのかもしれない。・・・でも,そうではなく,実際に悪いのかもしれない・・・その当たりは,隣国の位が上の人に聞くべきだよね。

二人は慌てて出て行った。ふう。もう寝たいんだけど・・・からだものばしたいんだけど・・・ 

あたしはイシュに言って中庭(?)を思い浮かべた。

 ちゃんと転移できた。あれながら凄い。後でもっとあの花食べとこ・・・

 いつものように龍体になり,空になってううんって伸びる・・あれ?花を食べなくなったら,転移は出来なくなっちゃうの?

『ドラヘ,ドラヘ?』

・・・・・・

 こういうとき知らん顔してるなんて・・・ま・・・とりあえず,沢山食べて・・・後であのお約束のリュックにも沢山入れとくか。


しゃりしゃり・・・・

誰もいない庭で白い花が次々と消え・・しゃりしゃり・・・・と言う謎の音がする・・・って言うのが,この砦の7不思議に付け加えられることになったのを・・あたしは知らない・・・

 しゃりしゃり・・・・しゃりしゃり・・・・


・・・・・・


気が付いたら,もう朝で,龍体のまま庭で寝こけていた。初めてだね。この姿のまま寝ちゃうのは。あたしはううんと伸びをして羽を広げた。そのまま上空へ・・・砦の周りをゆっくり旋回する。向こうのテントの当たりで人が動いている。あれ?昨日全部捕まったんじゃなかったっけ?

ゆっくり近づいて観察する・・・一人の男?女?出たり入ったり,時々声を上げている・・・誰かを呼んでるみたいだね。


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