花・・・やっぱり花
考えてみたらずっとあたしのままでいたから,白龍になると,なかなかのびのび出来て良い。ちょっと上空へ行ってみるか・・・ふわっと飛び上がり,ゆっくり砦の上を旋回する。門のところで押し問答してるのは,間違いなく,入れない連中だね。イシュに通信機を使って連絡して,人を寄越すようにして貰おう。
・・・・・
遠くの方に,テントかな?沢山張ってあるのが見える。このことだね。不穏な動きとやらは・・・沢山の灰色っぽい服着た連中が動いてるね。おや。剣は背中でなく,腰に差してるね。国が変わると剣の刺し方も違うんだね。イシュに,砦の様子を映そうかと伝えると,ちょうど司令室に戻ってるから壁に映せって。はいはい・・・
・・・・・
もう少し大きく映せないかって?ズームですか・・・できるかな・・・
『どう?』
『うん。凄い。手に取るようによく分かる。』
そりゃ良かった。
『待て・・・』
は?
『そこの赤い樽の所をもう少しよく見せてくれ』
樽?そんなんあったっけ?きょろきょろ・・・
『そこだ・・・』
よく分からないけどそこでストップ・・・
『・・・これは・・・』
『何よ?』
『爆発物だな・・・』
『どうする?』
『どうするって?』
『無害な物に変えちゃう?』
『できるのか?』
『多分ね。』
あたしはその樽とやらに魔法をかける。
「kougekiya hitonigaisuru mokutekide tukawaretatoki hananikawareya」
これで良いでしょ。他にも攻撃に使う物・・・主に飛び道具かな・・・があったら同じようにしちゃえ。
・・・まてよ・・・こっちの国のも同じだよね。うん。ここら当たり一帯は,双方の物理的な攻撃が,全て花になるようにしちゃおうっと。せっかくだから,薬草とか・・・役に立つ物に変わるといいよねえ・・・魔法攻撃はどうしよう・・・ちょっとどんなのがあるか分かんないからなあ・・・そうだ。仕掛けた奴に返るようにしちゃおうか?でも・・こっちの攻撃が返っちゃうのもなあ・・・魔法は保留っと・・・
『ねえ。ドラヘ。この魔法も,あたしがこの世界にいる限り続くのかな?』
『ああ・・・』
ずいぶん長く空中にいるね。そろそろお腹が減ってきたよ。
『イシュ、あたしお腹が減ったんだけど』
『またか?』
『考えてごらんよ。かなり魔力を使ってるよ。』
・・・・・何か話し合ってるみたいだね。
『降りて来いよ今、。昼飯にするってさ。』
へえへえ・・・やれやれだね。あたしは映像も送るのをやめ,ゆっくり下に降りていった。降りるのと同時に,あたしに返り,姿も現す・・・
・・・はてな。ここはどこ?きょろきょろするけど・・・
『イシュ。あたし自分のいるとこが・・分かりませ~~~ん。』
『・・・・・』
通信機の向こうで呆れてるみたい。
『その辺の騎士に言って,食堂に連れてきて貰え。』
『不審者扱いされないかしらね?』
『おまえなら何とかして食堂に来れるだろう?』
へえへえ・・・全く・・・誰もいないんだけどね。
あたしはきょろきょろしながら庭を行く。広いねえ・・・おや。あたしと同じくらいの身長の男の子だね。2~3才年下ってとこかな?
「すみませ~~ん。」
その子、ぎょっとしたみたい。
「だれだ?」
「あたし?人に名前を聞くときは,自分から名乗りなさいな。」
「怪しい奴め。お~~~い。変な奴がいるぞ~~~~」
「ちょっと。失礼だわ。こんな,か弱い女の子に向かって変な奴って。」
って言ってるうちに,何人かの騎士がやってきた。
「どうしましたか?乱麻様」
・・ぷっ快刀乱麻ここにあり・・・ぐふっ。笑っちゃった。きっと,一閃さんの子どもだね。
「こいつを捕まえろ。」
「あんた。一閃さんの息子だね?」
あたしの言葉がかぶったわ。
「なに?」
「騎士さん。あたしを食堂に連れてって。一閃さんと紫電先生がイシュと一緒に待ってるはずだから。」
騎士さん達は, あたしが何者か気が付いたみたい。
「ただちに。」
「まて。こいつは不審者。」
「めんどくさい。あんたも一緒に行けば良いでしょ。」
あたしはひょいと乱麻を担ぎ上げた。騎士さん達どん引きしてるけど,知ったこっちゃないわ。
「よせ!!!見てないで,早く助けろ!!!」
ってわめくから,
「お姫様抱っこの方が良いの?」
って聞いてやった。
「お姫様抱っこ?」
あら。こちらではそう言わないのかな。あたしはさっとお姫様抱っこに切り替えた。暴れて持ちづらいよね。ちょっとだけ力を入れてやる・・・ふふん・・・おとなしくなったね。
早く行きましょ。お腹空いてるのにこんな余計なことしてるんだからさ。




