砦にGO!!
ちょっと!!!スピード違反じゃないの?
ってくらいイシュは飛ばす。怖っ。あたしは
「zettai zikoranai anzenni mokutekitini tukeruze~~~~~!!!!」
って悲鳴に近い声で唱えたよ。もう・・・
夕方になっても,停める気配がなくて,・・・おしりがいたいいたいいたい・・・・がたがたがたがた・・・・タイヤじゃないから振動が半端ない。舌も噛みそうだね。いくら魔玉がクッションしてるったって・・・わっ
「kussyonkike~sirinoitamikiero~」
・・・・ふう。
スムーズになったね。
「おお・・・今のは,美優さんの魔法ですかな?」
「はあ・・・」
「これなら快適・・いやいや。舌を噛みそうなので,話も出来なかったからな。」
イシュは何も言わずにハンドルにしがみついてるね。少しさっきより緊張が解けてるみたい。
夕食はどうするんですかぁ?聞きたいけど,
「今度白龍殿に会わせて欲しいんだが・・・」
「それは・・・白龍は,恥ずかしがり屋さんなので・・・」
『いや。そんなことはないぞ。』
あたしは口を押さえた。
「いまのは?」
『白龍じゃ。ただし,簡単には人前で姿は現せぬ。話すのも,美優の口を借りてだな。』
よかった。空気読んでくれてる・・・
「美優さんの魔法と言いますか?白龍殿の魔法と言いますか?凄いですね。」
『あれは美優の魔法じゃな。わしはああいうことは思いつかんからな。』
「はあ。」
イシュったらさっきから一言も口を挟まないね。
「先生。イシュってどうしてます?」
あ・・・ん・・・?
「眠っている」
はあ~~~~~~???
「危ないじゃないですか。起こしてください。」
『さっき美優が魔法をかけただろう?大丈夫じゃよ。このままでも無事に砦に着くじゃろうて。』
・・・・・
車は相変わらず凄いスピードだけど,どこにもぶつからず,たまに他の車がいても,ひょいひょいくぐり抜けてひたすら走ってる。自分の魔法だと言われてもぴんとこないよね。すごいや。自動運転。
あんまり車も走ってないね。夜中だからかな?
「この辺りは車って多くないんですか?」
「車に乗るのは贅沢だな。だが,国境見回りに必要だから,鎧袖一族は数十台持っておるし,貴族とか,商人は使っているな。国軍も数十台保持しているはずだ。」
ほう・・・
「隣の国も同じようなものなんですか?」
「そうだな。似たようなものじゃろうて・・・」
この先生,突然高飛車になったり,丁寧になったり一貫しないよねえ。ま。あたしは一般の生徒だしねえ。どう対応して良いか分かんないんだろうなあ。
そういえば・・・隣の国の名前を聞いてなかった・・・あ・・・そう言えば,この国の名前も知らないや・・・後でイシュに聞こう。
ぼんやり思ってたら・・・なんだ?何か飛んできた。車は難なくよけちゃうね。って・・・また襲撃ですか?
「いや。我々の一族が敵だと思って仕掛けてきているな。ここはわしが・・・」
なにやら目を瞑って唱えだしたね。
・・・・・思うんだけどさ。目を瞑って唱えてるうちに,ぽかってやったら終わっちゃうんじゃないのかなあ?
しばらくしたら襲撃がやんだね。
「王族を連れてきていると連絡した。今頃攻撃した連中は慌てているじゃろうて。ふぉふぉふぉ・・・」
久しぶりに聞いたよ,ふぉふぉ・・・。
車は,真夜中過ぎ・・・って言うか,夜明け頃,砦に着いたよ。砦の門もひとっ飛びして越える車に,騎士の皆さん,目を剝いてた。ははははは。
車が止まる頃、ようやくイシュが目を覚まし,
「うん。俺の運転は完璧だ。」
と,ぬかしてくれたので,後ろから,かるくどついておいた。ぐわっしゃん・・ってハンドルに伏してたけど・・・大丈夫だよね。うん。
とりあえず,あたしの白龍も限界に近いから,イシュにそう言って,さっと庭木の影に・・そのまま姿を消して白龍になる・・・全くめんどくさいったら。
「おや。美優さんは?」
先生が聞くけど,ちょいと30分ほどお待ちください。
「いや。あいつは便所が長いんだ。」
むかっ乙女に何を言うか!!!砦のかっこいい騎士さん達まで笑ってる。あたしは後ろからイシュをちょいっと・・・
「うわっ美優やめろっ!!」
声とともにドシンと転がるイシュ。
皆さん目を丸くしてる・・・
そこに砦の隊長がやってきた。紫電先生によく似ているね。
「おお。一閃。」
「兄上が出てくるとは,かなり・・・なんだな。」
「まあ・・・ここではなんだから,中に。」
「おや。こちらの方が?」
「そうだ。皇太子だ。」
え?初耳なんですけど・・・イシュが皇太子?・・・ああ。あの王様,独身だったっけ・・・ってことはイヤでも皇太子か・・・なおさらお嬢様方が張り切ってたわけだねえ・・・あれ?ってことは?あたしは?
「皇太子というのはやめてくれ。今はただのイシュだ。イシュと呼んでくれ。周りに騎士の皆さんも。俺はただのイシュ。それ以上でもそれ以下でもない。」
ほうほう。結構かっこいいこと言うじゃないのさ。ちょいと見直してやっても良いかも・・・
「もうお一方,お連れがあると聞いておりましたが?」
「ああ。美優。白龍の加護持ちだ。」
おおおお・・・周りの騎士がどよめいた。なんだ?
「どちらにいらっしゃるんですか?」
「・・・いや。ちょっと・・・」
「便所だそうだ。」
ええええ・・・この先生はぁ!!!あたしは先生を後ろからどついちゃった・・・先生よろけてる。でも転ばない当たり,イシュより出来るな。
「美優!!いたずらしてねえで,出てこれるならさっさと出てこい!!!」
ふん・・・もう少しだよ~~~
「「ほう。美優さんの仕業なんですか?」」
紫電一閃兄弟が目をきらつかせた。
「なかなかの魔力。」
「なかなかの武力。」
「さすがイシュ殿の許嫁。素晴らしいですな。」
「はあ・・・」
イシュったら虚脱してるね。そろそろ大丈夫かな?あたしは元に戻って姿を現した。
「失礼しました。ちょっと・・・」
「おお・・・お美しい方ですねえ。」
え?
「一閃さん。目ぇ悪ぃ。」
・・・・・イシュめ・・・・




