誘拐犯(?)と一緒
お食事の後,これからどうするかという話になったんだけど・・・。
龍は龍舎だと言われて,また一悶着あったよ。当たり前じゃん。あたしは人間だよ。動物と一緒するなって言いたいわ。イシュは相当困ってるね。ふん。譲らないよ!!!
「おまえ,人型になれないのか?」
「は?」
「力を持った龍は人型になれるっていうじゃないか。人型になれよ。」
・・・・・
「あんたはあたしが力を持ってるように見えるって言うの?」
・・・う・・・・
「お~~~いお~~~い」
誰か来る?
「じいちゃん。」
こいつのじいちゃんかい?
「おおお。白龍。成功したんだね。」
・・・
「あんたが誘拐犯の元締めなのね?」
あたしはドスのきいた声で怒鳴りつけてやった。
「え?」
お爺さんびっくりって顔してる。
「じいちゃん。こいつ,人なんだそうだ。」
お爺さんはびっくりしてあたしを見た。
「イヤ・・・どうみても白龍だろう?」
あたしはむかむかしてきた。
「ちょっと,そこの誘拐犯2人,座りなさい!!」
二人は慌てて座ったんだけど・・
「あたしはね,16才のぴちぴちの女子高校生なの!!!試合中に白龍とやらと衝突したみたいで・・・気が付いたらこの姿でここにいたの!!!」
「はあ・・・」
爺さん目をますます大きくしてる。
「あたしをさっさと元の姿に戻して元のところに返しなさいよ!!!」
・・・・
はあ・・・・
・・・
「それは無理ですな。」
お爺さんが一言で片付けた。
「何が無理なの?」
「まず元のところに返すと言うことです。」
「呼んだくせに返せないとはいったい何なの?」
「使命を果たしてもらえれば・・・おそらく帰ることが出来るはずです。」
不確かな保障・・・むっ
「次に元の姿と言われましても・・・」
「じゃあ人型になることは?」
「それはできます。できるはずですよ。」
それは朗報だわ。
「やってよ。」
「いや。あなたがするんですよ。」
「どうやってよ?」
「人になろうと思ってください。強くね。」
「で,元の姿になれるって言うの?」
「どんな姿にでも。」
その間イシュは手持ちぶさたみたいにきょろきょろしてる。こいつにもむかつくわ。絶世の美女ってヤツに・・・なれる?いやいや・・・あたしはあたし。
心の中で,自分の姿を思い浮かべる。もちろん・・ちょっと盛ってね。
・・・・・ぽん・・白い煙・・・浦島太郎かい??
「おおお。」
「それがおまえの姿か?」
ちゃんと試合着を着たあたしだ。グローブまで持ってる。ははは。ボールもあるね。
白龍はっていうと・・・あたしの腕に巻き付いたような模様になってるよ。
この白龍,乙女の柔肌に何してくれるんだ!!!
とりあえず,家に行きましょうって言うんで一緒に歩き出したんだけど・・・
遠いわ・・・・
だんだん暗くなるし・・・
「おまえ転移で俺たちを運べねえの?」
「無理。したことないもん。」
・・・・・
「おまえ飛べるんじゃねえ?」
「無理。今,人間だもん。」
ようやくイシュ達の家に着いた。
ドアを開けると優しげなおばあさんがいた。
「お帰り。うまくいったのかい?龍舎は掃除してあるよ。」
それからあたしを見付けて驚いていた。
「あらあら女の子が短いパンツはいて。どうしたのこの子?」
・・・・・お爺さんとイシュが顔を見合わせたね。
「こいつが龍だ。」
「違う。人間。誘拐犯の一味のおばあさん,今日は。今日から帰れる日までお世話になります。」
言ってやった。
おばあさん,目を白黒させてるね。お世話になります。どうぞよろしく・・・・・
・・・・・
夜のうちにいろんな話をして,これからのことを相談したよ。とにかく,あたしの中にある力をどうにかして使えるようにしなきゃいけないってことで,イシュと一緒に学校に通うことになったんだ。イシュは聞いたら同じ16才なんだそうだ。なんだ・・・もっと大人かと思った。
学校はこの山の麓の先にあって,今はお休みなんだそうだ。
「何の学校?」
「魔法学校だ。15才から入れるんだ。」
って言う。
「ふうん。じゃあ2年生?」
「そうだ。俺は紅の魔法の勉強をしている。」
「紅?」
イシュは食器を台所に運びながら,
「炎を得意とするんだ。おまえは白の魔法を勉強しろよ。」
「白?」
おじいさんが,
「氷だよ。」
って教えてくれた。
「明日は必要な服を買いに行きましょうね。」
おばあさんが言う。おや。ちょっといい人達なのかな?
家に帰りたい。ほんとは泣きたいけどなんかこいつに弱みを見せるのはイヤだ・・
こいつ・・・俺と同じ年かよ。龍のくせに女の子だって?信じらんねえ・・・




