へえ・・・
最後に王様はあたしに腕を見せて欲しいって言ってきた・・・
「腕ですか?」
「白龍に会いたいのじゃ。」
あたしは左腕をめくってみせる・・・白龍があたしに巻き付いている。
「おおお・・・」
「昔会った白龍ですか?」
「・・いや・・・分からん。」
なんだ・・・
そんなこんなで,もう辞する時間なんだけど,結構遅い時間だから,城に泊まっていくことになったんだそうだ・・・ええ~~~~ あたし,白龍に変わる時間だよ。
あたしは,寝室に案内されても,気が気じゃない。さっさとメイドさん達(侍女さんかなあ?)を追い出して,部屋の窓から外に飛び出すのと一緒に,ううんっと伸びをした。庭は広いけど,白龍がいるのを見つかるわけにはいかないから,とりあえず,姿だけは見えなくしたよ。
イシュが,部屋の窓から顔をのぞかせてる・・・ふふん。いたずらしちゃえ・・・
ちょいとしっぽでイシュをつつく・・・ドシン。あら尻もちついてるわ。
「美優!!!ちょっかい出してくんな。」
「あら。よく分かったわねえ。」
「あたりめえだろ!!!」
・・・・それから気が付いたようにきょろきょろと辺りを見回してから,声を潜めて,
「ちょっと耳を貸せ。」
って言った。なんだ?あたしは顔を近づける・・・ぴたぴた・・・イシュが触って確認してる。くすぐったいね。
「さっきばあちゃんが言ってたけどな。おそらく,ダムの手先が,庭に忍び込んで来るに違いないってことだ。」
「なんで?」
「多分,我々が泊まることを見越して,下手したら暗殺者が来るかもしれんってことさ。」
「へえ・・・面白そうだね。」
「まあな・・・おまえはそのまま白龍でいろよ。」
「なんで?」
「あのなあ・・・。」
「あの?」
「考えて見ろよ。ダムは『絶対おまえを狙ってくるに違えねえと思わねえか?」
「あたし?」
あたしはちょっと首をかしげちゃったよ。
「あたしを襲ってどうするのさ?」
イシュはため息をついたね。
「ダムは,俺と娘を何とかしてくっつけてえのさ。」
・・・
「趣味悪い?」
むっとした顔してる。
「そんなんじゃねえ。俺とくっつけて,将来権力をふるい放題・・・って所だろ。」
・・・・王の甥・・・あれ・・・もしかしたら
「もしかして,あんたが次期国王?」
・・・
「分からんが,可能性がないわけじゃねえ。」
・・・・・
「どこからどうやって来るか分からねえから,おまえは龍でいた方が良いさ。」
あたしは少し考える・・・
「空になってた方が良い?」
「そうだな・・・どっちが良いかな・・・」
・・・・
「イシュ,イシュ,」
あれ?お爺さんの声だ。隣から身を乗り出すようにしてこっちを見てる・・・
イシュが,ひらって飛び上がって,隣の手すりに飛び乗った。へえ。こんなこと出来るんだね。何かぼそぼそ話してる。それから
「美優。」
って声を殺して呼ぶから,首をそっちの窓に乗せて
「なに?」
って言ったら,中からお婆さんも出てきたわ。
「多分,後1時もしたらくるらしい。おまえ庭にいろ。俺は,おまえの部屋で寝てるから。」
「・・・私は・・庭でぇ?寝てろってぇ?」
「美優さん,罠を張るためですよ。」
「分かりますけどぉ。あたしがベッドにいちゃ駄目なんですかぁ?」
言葉が間延びしちゃったね。
ううん・・・
おじいさんとおばあさんは考え込んでるね。イシュは,どうあっても,あたしの部屋にいるつもりみたいだけど・・・
「いっそのこと,あたしがイシュの部屋にいれば良いのかな?」
「それもありかもしれませんね。」
・・・・考えてる時間はあまりないから・・・
あたしは人に戻るとともに,姿を現した。
「じゃああたし,イシュの部屋に行きますね。」
「ああ。俺はおまえの部屋に行く。」
おじいさんとおばあさんは様子見だって。騎士の方々も何人かおじいさんとおばあさんのお部屋にも潜んでるらしい。ってことは,あたしの部屋にも?さっき2~3人やったって。大がかりな罠ってわけ?
やがて。闇に紛れてほんとに忍び込んできたヤツがいたわ・・・こう言っちゃ何だけど,王宮舐めてない?それともよっぽど見つからない自信があるのかな?
ところが・・・侵入者は一人じゃなかったんだ。




