ダム?それはだれ?それはあの縦ロールの・・・
姿を自分に変えながら,階段を上がる。部屋は・・・どこだったっけ?メイドさん達が右往左往してるね。きっとここだわ。あたしは黙って部屋に入り,お風呂場へ行った。
やっぱりね。お風呂の用意がされてる。磨き込もうとしてたんだ。普通にさっさと入って上がっちゃう。バスタオルを巻きながら姿を現して・・・ついでにさっき聞いた呪文も唱える。
「minnnaatasinotorikodaze」
はあ・・・こんなんでいいのかい?なんか・・・
あたしの姿を見付けたメイドさん達ったら泣いてるし・・・ゴメンナサイ。
「お風呂は入ったからね。」
「え?今まで?」
「そうよ。お風呂にいたの。」
うそだけどね・・・
メイドさん達は,半分泣きながらあたしを飾り立ててたけど,誰一人文句はいわなかったわ。当たり前か。
メイドさんに案内されて階段の下に向かう。下では何人かが待ってた。
おじいさんとおばあさん,イシュだね。
「おお。可愛いじゃないか。」
「ええ。とっても可愛いお嬢様ですよ。」
いや・・それほどでも・・・さっきのがちゃんと効いてるのかな?ここでもう一度唱えとこ・・・
「minnnaatasinotorikodaze」
「おまえ何言ってんだ?」
「いや。別に。」
「また白龍から変な呪文習ったんじゃねえだろうな?」
まさしくその通り・・・
「まさか。」
そういや,解く呪文を聞いてなかったな・・・
白いふんわりしたドレスに,綺麗なピンクの花が付いているこのドレスは膝の下くらいで,動きやすい。でも・・靴が・・・ かかとはそんなに高くないんだけど,結構細いんだ。
イシュは黒に近いような臙脂の襟なしスーツだった。丸い首の所からのぞいてる襟の白いレースが何とも言えないね。すらっとしてて正直かっこいい。テレビの中のアイドルだったらファンになってたかもね。お爺さんは黒の,イシュのと同じような仕立ての服。なにやらじゃらじゃら付いてるね。お婆さんは深い青のドレスだったわ。
車に乗せられ,
「お城に行きますよ。」
って聞かされる。今度は運転席と後ろの席は,仕切りで仕切られてるね。話が聞かれないようにかな?
行くってこと自体は,さっき聞いてたから驚かないけど,
「何故あたしまで行かなくちゃいけないんですか?」
って聞くのは忘れないよ。
「王がね,あなたの経歴に興味を持っちゃってね。」
「「えええ???」」
あたしもイシュも驚いたよ。
・・・
「王にだけは,ほんとのことを言ったんですよ。人払いしてね。」
王は,なかなかいい奴なんだそうだ。なぜか,未だに独身で50になろうとする王は,昔白龍と会ったことがあるんだとか・・・
「宰相や,取り巻きのものには,あなたの経歴のことは内緒ですけどね。」
・・・・・
何かいろいろなわけがありそうだね。ま・・・いっか・・・
お城の前には跳ね橋がつきもの・・・と思ってたけど,無かった。普通に掘りというか川みたいなものは渡ったけどね。お城の周りは色とりどりの花で一杯だった。
「花の城?」
「よく分かったわね。私が時々来て手入れしているのよ。綺麗でしょ?」
おばあさんが言う。ふうん。
城の中に入ると広間だった。騎士?なのかなあ?中世騎士とはちょっと違う。侍ともちょっと違う不思議な格好だね。紺のズボンに長いブーツ。少し短めの同色の上着。斜めに背中にかけられた剣。
「なんで後ろに剣?」
「後ろから来た敵にすぐ反応出来るだろ?」
ええ・・・・そうかなあ???
・・背中から来る・・・背中のを抜きながら後ろの敵から振り下ろされる剣をそれで防ぐ・・・かな?それならありかあ・・・ん?背中から来る敵って卑怯者じゃなかったっけ?
聞いたら,
「勝つためにはどっからでもかかっていくのが,この世界のやり方さ。受ける方も分かってるしな。」
イシュが答える。騎士はひょいとあたし達の方を見てにやりと笑ったよ。なに?
そのとき,大きな扉の前に着いたよ。
・・きい・・・ほんとは音なんてしないけどさ・・・何となくそんな感じ。
扉が開くと,絨毯の奥に王座・・・と思ってたけど違った。
丸テーブルがあって,入り口から一番遠いところに,一人の男性が座ってた。
お髭?なんかかっこいいっていうか,すっごくすてきなおじさまだ!!!
後ろになんか・・・四角い感じのするいかつい感じの男が立ってるね。だれ?美観を損なうわね。
「よくきた。」
おお。重低音。すてき。
「その娘か?」
「「はい。」」
「ほう。イシュ、なかなかの美人を捕まえたな。」
「はは・・・」
あたしはぽかんとしてみてるだけ。後ろの四角い男が,
「そこの娘,王の御前でその態度は何だ?」
って言い始めたんだけど・・・はあ?お芝居見てるみたいだよ。
「ダム,やめなさい。異国の姫君だ。」
お爺さんが言う。
「いや。しかし・・・」
ダム?・・・誰だ?
小さい声でイシュが,あの女のって・・・う~~~ん?・・・・ああ。宰相?
「ダム,今日はこの二人の婚約を祝うために,ここに呼んだのだ。」
「え・・え・・え・・え・・え???」
その驚き方は何?
ダム・・この話はきっと初めて聞いたんだね。
「し・・し・・しかし・・・私の娘が・・」
「娘が?」
「ああ・・・あのイシュ様とデートの約束をして・・・」
「してねえ。」
「いや。実際に出かけておりますぞ。」
「そりゃ俺じゃねえ。」
きっぱり切ってるけど・・・そうなのぉ?
・・・・・
ダム・・・真っ青だよ。
「娘はイシュ様と結婚を・・」
「わけねえ。俺は,学校の誰とも一緒に出かけたことはねえ。こいつ以外とはな。」
・・・は?・・・・
「と言うわけでな。この二人に婚約の証をやろうと思ってな。その証人として来て貰ったのだよ,ダム。」
・・・・・あの・・いや・・しかし・・・
まだなんか言ってるよ。




