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ふぉふぉふぉ・・・

午後の授業に,タリーと二人で実習室に行ったよ。お嬢様はやっぱり廊下で,何人かのおとり巻きらしい人達と立っていたけど,無視・・・歩いてるあたしの前に,何人か立って通せんぼしたから,丁寧にひょいひょいと脇にどかして通り過ぎたよ。シモとフリに比べたら軽い軽い。


・・・何か言ってる・・・

「何か言ってるわよ。ほっといて良いの?」

「あたしの知り合いって訳じゃないし。あんた呼ばわりされるほど親しくもないし。通せんぼは,意地悪でしょ。意地の悪い人とは,口をききたくないなあ。」

そう言ったらタリーは,笑ってたんだけど・・

「本当は,巻き込まれたくないかもって思ってるけど,面白そうだから,側で見ていたいとも思うのよねえ・・・」

 正直な感想ありがとう。


実習室はだだっ広い部屋で,あちこちに焦げがあったよ。炎の実習にも使ってるのかな?

ドアが開き,黒いマントを着た男の人が現れた・・・手に長い杖・・・いかにもって感じだね。


「はじめまして。みなさん。氷魔法一般概論の部屋にようこそ。」

「え?氷魔法実習じゃないの?」

「え?氷魔法入門じゃないの?」

あたし達の声が聞こえたんだろうね。にっこり笑って

「間違っていませんよ。」

って言ったよ。



「とりあえず,皆さんに合う杖選びからですね。」

何人かは

「先生。私持ってます。」

「僕もあります。」

って言ってたけど,

「それも含めて,合う杖かどうかを見させていただきますよ。」

って。


 何でも,氷や水に合わない炎系の杖を使っても,氷魔法は上達しないんだそうだよ。そりゃそうだね。バットを持ってサッカーに行っても仕方ないもんね。うん。


先生の合図で,何人かの上級生が杖の入った箱を運んできたよ。最上級生の何人かが助手を務めてるらしいね。

長いの。短いの。様々だよ。上級生も一緒に杖を選んでくれるんだって。そういやイシュって杖なんて持ってたっけ?あれえ??


タリーは,早速自分の腕くらいの長さの杖を選んでいたわ。早いね。皆も早いね。

「箱の前に行ったらね,杖が私よって教えてくれたのよ。その声を上級生が聞いていて,はいって渡してくれたわよ。」

「へえ・・・?」


 あたしも一緒に箱に近づいて行ったんだけど・・どの杖も黙ってるんだけどなあ・・・

 で,上級生も困って,何もあたしには渡してくれないんだ。

 どうしろって言うのさ。あたしと上級生達。無言で見つめ合ってるだけなんだけど・・


先生が近づいてきて,あたしをじっと見て,

「美優さんかね?」

って聞くからさ,

「はい。杖はどれを選べば良いんですか?」

って聞き返したんだけど。


「君には杖はいらないね。」

「はあ?」

「白龍が杖を拒んどるよ。」

「えええ~~~」


 あたしは腕の白龍を服の上からにらみつけた。なんか腕がむずむずってしたような・・・・・

「美優さん。魔力は控えてね。」

先生がそう言って別の方へ歩いて行ったけど・・・・


 杖を持ってますって言ってた子の半分は,自分の杖の代わりに別のを渡されてる。きらきら光る杖を手放さなければならないと知った,他のクラスのある女子は杖を握りしめてわんわん泣いてたんだけど・・・先生は優しく(?)取り上げてたよ。


「そういや。この先生の名前聞いてないや。」

「そうね。」

タリーも頷いたよ。


 杖選びも一段落付いて,壇上に戻った先生が,

「さて。最初の課題は私の名前を当てることです。」

って言ったのには,

「「「「「「「「「「はあ~~~~~~????!!!!」」」」」」」」」」

皆あっけにとられちゃった。知ってる人は知ってるでしょ。酷いなあ。

「私の名前は未だに誰にも当てられたことがないのです。嘘だと思ったらここにいる助手の上級生達に聞いてご覧なさい。」


 皆一斉に近くの上級生を見たけど,皆首を振ったよ。

「俺たちは仮に,氷大王と呼んでるがな・・・」

ぼそってつぶやく声が聞こえて,皆クスッと笑っちゃった。

「氷大王大いに結構。君たちはどうだろうか。考える期間は一週間。一週間後の今日,一人一人答えを聞いていこう。楽しみだのう。ふぉふぉふぉ・・・」


 ふぉふぉっていう笑い方がこの世界の特徴なのかなあ?いや。白龍は召還されたんだから・・・この世界のモノじゃないよね。どこの世界から来たんだろう。15年もあたし達の世界に住んでいたという白龍。また腕がむずむずしたよ。出てこないでね。

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