姿を・・・
「いいか。一言も口を挟むなよ。」
「ええ?]
「しっ」
「イシュ様あ」
寄ってきたのは・・・おおお・・・まさかの縦ロール。お嬢様???
きらきらしい服・・・ドレスかい?いやいや・・・まさか・・・ふわふわのスカート・・・短めの上着・・・ショッキングピンクだよ・・・飾りは金・・おおおおお・・・お決まりのでかいリボンが左右の頭に乗ってるし・・・こんな人が本当にいるとは。驚きだよ。
「明後日のお休みの時,あたくしの家にいらっしゃいませんこと?」
・・・・・
「父も待っておりますのよ。」
・・・・・・
イシュは黙ってじろりと見た後,あたしの手を優しく(?)取って歩き出した。
「お待ちになって。」
「待って,イシュ,あたしのお家にいらして。」
「あたしとお出かけするって約束はどうなったんですの?」
「あら。わたくしのほうが先約ですわ。」
おいおいおいおい・・・・
「何人と約束してるのさ・・・」
「しっ」
おいおいおいおい・・・・
町外れまで来て,辺りにあたし達以外いなくなったところで,女の子達の方を振り向いて
「悪いな。こいつは俺の婚約者だ。今まで何を期待していたのかしらねえが,もう,俺に近よらねえでくれ。」
「「「「「きゃ~~~」」」」」
イシュはあたしの手を引っ張って走り出した。あたしは女の子の方を向いてたから引きずられている上に,後ろ向きだよ!!! 慌てて体制を整えながら女の子達に手を振った。「じゃあね~~~」
しばらく行って,誰もついてこないことが分かって,ようやくイシュは立ち止まった。
「おまえ,必要以上に挑発してどうする!!!」
「ええ?挑発なんてしてないよ。」
「またね~~~と言って手を振ったじゃねえか。」
「え?だってさよならって,この世界でもするよね。」
イシュはため息をついてまた歩き出した。
「待ってよ。」
あたしは後を追いかける。
「婚約者って何で?」
ため息をつきながらイシュは言った。
「あいつら何とかして爺さんや俺の親に渡りを付けたいのさ。」
「???」
「まあいろいろ複雑なんだ。そのうちに分かってくるだろうよ。
で,爺さんと婆さんにもさっきの話はしておく。間違いなく,賛成してくれるはずだ。」
はあ???
「仮だぞ仮!!!」
「何回も言わなくたって分かるわ!!!さっきも言ったけど,あたしにも選ぶ権利ってもんがあるんだからね。」
・・・
「龍のくせに。」
「何か言った?」
「いいや・・・」
帰って道具を置いた後,外で思い切り伸びる。ううん。気持ちいい。ぽん・・・白い煙・・・
龍の姿はなかなかかっこいいような気がしてきた。
『わしはかっこいいのだ。』
『は?あんたまたしゃしゃり出てきたの?』
『しゃしゃり出るとは何だ。龍体になるとわしも気分が良くなるのだ。』
『あ・・・そ・・・ねえ。魔法の使い方が知りたいんだけどさ。』
『ほう・・・魔法ね。』
『最強の白龍なんでしょ?』
・・・・・
『その沈黙は何よ?』
『今日は一つだけ教えとこう』
『さっきの質問には答えないのね?』
『姿を消す魔法だ。』
『それはうれしいかも』
端から見てたら独り言で自問自答してるみたいに見えるらしい・・・
「何一人で言ってるんだよ。」
イシュがやってきたので分かったんだけどね。
「白龍と話してるんだよ。」
「一人で受け答えしてるだけじゃねえか。」
・・・・・え・・・・・
「この会話はあたしの妄想だって言うの?」
・・
「そうは言ってねえ。」
・・・
「じゃあ今聞いたのを試してみるわ。」
あたしは白龍に聞いたとおり,自分が見えなくなるように言われた言葉を唱えてみた。
「sugatamieneeze」
「おい。どこにいったんだ?」
イシュの慌てる声がするね。あたしのいるところに突っ込んできた
「わっ痛てっ」
あたしは元に戻るよう言われたとおり唱える・・・
「mieruyouninaruze」
・・・しかしコレでいいんかい?簡単すぎない??
「なんだ?」
「姿を見えなくしてみたんだけど・・・」
「ぶつかりゃばれるじゃねえか!!!」
・・・・・
「「つ・・・使えねえ!!!」」
あたし達はため息をついた。
「ちょっと!!!使えないじゃないのさっ!!!」
私がわめくと,ものすご~~~くめんどくさそうな返事が返ってきたわ。
『見えなくなるところじゃなくて,空になるように想像しながら唱えなさい。』
『 空?なにそれ?』
イシュにも当然,聞こえてるんだね。
「空っぽの所を想像しろってんじゃねえ?」
おお。イシュ。たまにはあんた使えるわ・・・
「やり直しだわ。」
空になることを想像・・・・・・して同じ言葉を唱える・・・
・・・・
「また見えなくなったな。どうせこの辺なんだろ?」
すかっ
「あれ?」
すかすか・・・あたしを突き抜けてるわ・・・こわっ
「ここか?」
すかすか・・・・うへえ・・・気持ち悪い・・・
「おまえどこに動いてるんだ?」
・・・
「あたし動いてないよ。」
そこであたしは元に戻った。
「コレなら大丈夫だよね。」
くしゃみしてもうまく隠せそう。その前に,
「ちょいと,白龍!!!」
・・・し~~~ん
「ちょいと!!!」
・・・・・・
聞きたいことがあったのにさ。どうもまた沈黙してしまったみたい・・・そう言えば・・また名前を聞きそびれてるなあ・・・
なんかこの白龍・・・使えない・・・




