侵入・・・
王妃の故郷は,2つの国に隣接してたよ。少し可哀相だよねえ。帰されたなんて・・王宮に近づきながら,たった一回だけ合った王妃のことを考えてたら,
「ぼやぼやするなよ。何がいるかわからねえんだぞ。」
って。確かにそうだよね。カケラを抱いた者がいるかもしれないんだもんね。
王宮の中は喧噪で・・・
『何でこんなに騒がしいのかな?』
原因は王妃のヒステリーだった。悲鳴と一緒にいろんなものが壊れる音がする。ひときわ大きな音と一緒に
「出てって 」
って怒鳴り声がしたよ。ドアがバタンと開き,中から転がるように2人の侍女が出てきたね。
「全く。わがままなんだから。」
「だから帰されたんでしょう?」
「結構長くもったと思いますよ。2~3日で帰されるんじゃないかって最初の頃の噂でしたからね。」
この人達も酷いこと言ってるような気が・・
・・・なんか悲しいよねえ・・・王妃・・・元王妃にも夢があったんだろうにさ・・・
『ふん。夢じゃなくて野望だろうぜ・・・』
おっと・・・イシュ。
あたし達は王妃の部屋にするりと入り込んだよ。部屋の中めちゃくちゃ・・・ベッドの真ん中で髪を振り乱して泣いてる塊・・・ちょっと・・・
あたし達はそっと元王妃に近づいた。なんかぶつぶつ言ってる。
「呪ってやる!!!クソ面白くもない。ここで幸せになるはずだったのにくやしい・・・」
なんだ?
「私をここに連れてきた奴・・・あいつさえいなければ」
おやおや・・・
『このヒトも召還されてやってきたのかな?』
『そんな感じの言葉だな。』
・・・・・
「誰かいないの?神官長を呼んできなさい!!!」
神官長?
『ここの神殿って?』
『城に隣接しているはずだが・・・』
誰も返事をしないからますます怒ってるね。
とりあえず,神殿か。どこに行っても神殿。家の方じゃ考えられないよねえ。
こっちの神様の扱いってどうなってんだろう?
・・・
『髪?』
『神。』
『なんだそれ?』
『え?神殿って神様を奉るためなんじゃないの?』
『違うぞ。力を具現するために祈る場所だぞ。』
こちらの神殿は神様を奉るためでなく,力を具現するために必要な場を作り出すところらしい。所変われば・・だねえ。
『ここで神官と言ったら?』
『誰よりも場を作ることに精通していて,他者を導く者とされている。』
ふうん・・・
城の外に出て,神殿を探して歩いてる。周りには誰もいないから少しのびをする。二人とも流に姿を変えて空になっている。ドラヘとフラメが自分の中にいなくても,彼らは指輪にとどまっていることは分かっているし,力も貸してくれることも分かってるから心強いよね。
『神殿だ。』
何だか黒いよ。
『神殿とは白い者と思っていたが。この国のは真っ黒なんだな。』
なんか・・どんよりした空気で気分が重くなってきたね。
『入るぞ。気をつけろよ。』
あたし達は黒い神殿の階段を上り,一歩足を踏み入れた・・・・
読んでくださってありがとうございます。少し落ち着いたので,頑張っていきたいと思います。
次回も2ー3日後です。




