さよなら
にやり・・・笑ったようにみえる。
「腐れを止めるには,・・・まずわしを倒してからだな。」
って言ったとたん,沢山の岩が飛んでいた。え。いきなりですか?どっから来てるの~~~~!!!
慌てたけど,誰かが結界を張ってくれてたみたいだ。このヒト達凄いな。岩が次々にあたし達の頭上で砕けてくんだけど。おまけに,次々と地面から鋭い剣のようなモノがどんどん生えてきた・・でもこれもあたし達を避けるように生える。
「凄い結界じゃ。」
ドラヘが感心したようにつぶやいてるのが聞こえる。
「おっと・・・あぶねえ!!!」
岩の後は凄い風と氷。全て結界がはね返してる。
「どうした。出てきて戦え。」
いや。でれませんから~~~
「ちくしょう。ミャアコ。俺はでるぞ。」
「俺もだ。」
イシュとズィルバーの声にミャアコちゃんが
「うん。結界張る。」
って答えた。って事はこの子が結界張ってるんだ。あたし達を分離させられるくらいの魔力の持ち主なら当然かな。でもすごい。
4人で結界から飛び出す。
青い奴は,にやにや笑いながら次々にあたし達にいろんな物を飛ばしてくる。
「おまえ達では相手にならんな。」
そんなことを言う。むかつく~~~ぜ~~~~ったい倒す!!!
4人で交互に攻撃を掛ける。次々に飛んでくる蛸?烏賊?なんなんだ!!!軟体動物好きなのか?爆発すると破片が練っちゃって感じで四方に飛ぶのが凄く嫌。鎧が剣の形で青い奴ののど元に飛び込んだ。難なく抜いて投げ返されて・・・あれ?
急に・・・とけた?なぜ?
それと一緒に悲鳴が聞こえた。ズィルバーが機敏に反応して飛び上がった・・と思ったらミャアコちゃんがその腕の中に落ちてきた。この子なんて凄いの!!!
ズィルバーがミャアコちゃんをしっぽで包んでいる。ヴァイスが下から,
「ダイジョウブ」
って声をかけてる・・・落ちてくるってこの子?
「おまえ何をしたんだ?」
ズィルバーが聞いてるけど,ほんとになにがおこったの?
「にゃにも。」
は?
「まさか。だって,急にどろりと溶けて消えてったのよ。」
シミ一つ残さず消えちゃったんだ。
こんなに簡単に消えていって良い物なの?ほんとに終わったって言えるの?
あたし達が呆然と立ち尽くしているとこに,赤い大きなヒトと,青いりゅうが降りてきたよ。
二人(?)はあたし達の前に立つと,大きな伸びをした。のんきな奴らめ。思っちゃうのは仕方ないよね。
「まさか君たちがあいつを浄化してくれるとはねえ。」
「これでしばらくは自分でいられるよ。良かった。」
って。どういうこと?
簡単に言えば,あの黒いのは,いろいろな世界の負の感情の塊が具現化したモノなんだってさ。
大きく膨れあがりすぎると,人型になって,いろいろ悪さをするようになるらしい。特に,あたしのいた世界の負の感情は大きすぎて,前回,みやこおばあさんが来たときより何倍も大きなものになっていたんだって。
「このまま行くと,どこの世界も飲み込まれていたかもしれないから。」
「負の力が集まって,何でも良いからはき出してしまいたくなるんだ。それが各世界にはき出されて行くってすんぽうさ。」
「じゃあもう?」
「多分だが,おそらく変なモノは皆消えてしまったと思われるぞ。」
そんな話の後でミャアコちゃんの出した物を少しだけつまんで,元の姿でしばらくはいられるって喜んで去ってっちゃった。
「ロート。魔物やなんかはどうなんだよ?」
ズィルバーが聞いてる。しっぽでしっかりミャアコちゃんを捕まえたままなのがほほえましいよね。
「彼らとは別物だと思った方が良いですね。」
要するに,魔物は,その世界には必要な物。余計なモノではない。いろんなものの負の感情が大きくなると・・・
「いまはぁ?」
「こうしている間にも,また成長をはじめているってことじゃよ。」
あたし達は黙って顔を見合わせた。
「ミャアコと対峙しなけりゃ何ねえ理由にはなってねえぞ。」
「それについては,彼女は元々こちらに呼ばれる予定だったそうです。それをみやこばあさんが知って曲げて自分の手元に呼び寄せたとか。」
・・・
「あたしは何のためにここに呼ばれたの?」
「・・・・」
「教えてやったらどうじゃ?」
「しかし・・・」
「妾が教えようぞ。」
・・・
ミャアコちゃんは生け贄だったんだって。特別な日に生まれた三毛猫を投じれば,黒い力は収まるらしい・・・
「えええ?生け贄って?あのひとは,帰りたいかってきいてたよ。贄ににゃれにゃんて言ってにゃかった。」
ってミャアコちゃんが叫んだから皆びっくり。
「何でそんなことを聞いたんでしょうね。」
「多分。多分ですよ。」
ロートがつぶやくように返事をしたよ。
「どうしようもなく膨れあがった力は,他を飲み込んでますます大きくなるか,それとも消えるかを自ら選ぼうとしたのじゃないでしょうかね。消えるにはミャアコちゃんを飲み込む。膨張するならミャアコちゃんは不要です。」
「つまり?」
「膨張し続ける道を選んだって事ですね。」
「つまり,ミャアコを殺すか,追い返すかってことか?」
ズィルバー。顔が怖いよ。
「とりあえず,元凶がどうなったのかを見に行きましょう。」
「あるべき姿に還ったはずだよ。」
あるべき姿?
地下には泉があったよ。
泉の真ん中に何かあるね?
「花だね。こんな地面の底に陽の光も当たらないだろうに。」
「きれいだねぇ」
そう。ぼうっと淡く光ってるみたい。
「これが元凶ですか?」
・・・・
「おそらく。この花が実を結ぶためには負の力が必要なのじゃ。」
「本来はまだ実じゃろうに。花になっていると言うことは,負の力が流れ込んでおるという事じゃ。つまり負の力はどこの世界でも大きくなっていると言うことじゃの。」
「どうしたらいいの?」
「言うのは簡単なことじゃ。」
ドラヘがゆっくりあたし達を見た。
「それぞれの世界の負の感情を減らす努力をすれば良い。」
・・・・
「かなり難しそうよ。」
あたしはこぼす。あたしの世界ではさらに難しそうだ。
「特にあたしとミャアコちゃんのいた世界ではね。」
「トリアエズ カエッテ ワルイヤツラヲ ヤッツケヨウヨ」
「俺もそうおもう。」
・・
「そうですね。」
「どうやって帰るんだ?」
「こっちに穴がいくつか開いておる。」
フラメが言う。
「ほんとだぁ」
「ボクタチノ セカイニ ツウジルノハ コノアナダネ。」
「すごい。ヴァイス。分かるのか?」
「ウン。」
「わしらはこっちの穴じゃな。」
ドラヘが反対側を指さした。
「どらへもわかるのぉ?」
シュバルツが目をまるくして聞いてる。かわいいなあ。連れて帰りたい。
「分かるともさ。わしらは次元には敏感なのじゃよ。」
「ええ~ぼくぅ わからないぃ~~」
「じゃあ。ここでお別れなのね。ミャアコちゃん。ヴァイス。シュバルツ・・・」
最期に3人を思い切りぎゅっって抱っこする。可愛い。なんか離れたくないな。
「おお。またな。」
「いつか簡単に訪問できるようになるといいな。」
イシュが笑って言う。
「そうだな。」
ズィルバーも笑う。
ほんとにまた会えると良いね。
「またな。」
「おお。」
「またね。」
「うん」
「アリガトウ」
「さらばじゃ。」
名残は惜しいけど,あたしたちは,手を繋いでそれぞれの道に足を踏み入れた。世界がゆがむ・・・
「手をはなさないで。」
読んでくださってありがとうございます。次回は6日の予定です。




