表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/69

造られた存在?

 今回も遅くなりました。


 

 トワは驚愕の声をあげるクリュエルの方に顔を向けず双頭のアースドラゴンを睨んだまま問いかける。


「変異種?」


「あ、ああ、1、2年ほど前から数体の目撃情報と討伐の報告があるんだ!」


 驚いた顔で双頭のアースドラゴンを見たままクリュエルが答える。


「亜種とか上位種とは違うのか?」


 トワが首を捻りクリュエルに聞く。


「変異種には魔獣なら必ずある魔石が無いらしい。それと素材を剥ぎ取り少しすると砂になってしまうそうだ。肉には猛毒が含まれてる。しかも、強さは通常種の2倍以上って噂だ」


 クリュエルでなくチッキャが多少の早口で答える。


「へ~、何にも使えないのね」


 トワがチッキャの言葉を聞いて双頭のアースドラゴンを鑑定する。

 


双頭のアースドラゴン(※※)ランク※

HP:※※※00/10000

MP:※※※0/1600

STR:280※

DEF:※※※※

INT:17※※

DEX:※※※※

AGI:15※0

LUC:2


スキル:

牙Lv5 爪Lv5 土耐性Lv5


特殊スキル:

※※ 砂塵の息 ※※ ※※




(おいおい、殆んど文字化けしてるぞ!?何でだ?)


「どうやって異常種を見分けてるんだ?」


 トワはなぜ鑑定が出来ないのかは置いておいて、取り合えずどうやって異常種を一発で見分たのかを聞いてみた。


「異常種は体のどこかに必ず変な記号が付いているらしい。記号は全部少しずつ違うけど全部同じような形らしい。資料で見たくらいだからそこまで詳しくは無いんだけどね」


 チッキャはそう言いながら双頭のアースドラゴンの片方の頭にある色が少し白くなっている部分を指す。


「へー、なるほど・・・記号、ねぇ・・・」


 チッキャの言葉に返しながら双頭のアースドラゴンを見る。


(………記号ってか数字だよな)


 チッキャが記号と言った場所に書かれていたのⅩⅩⅩⅤ(35)とローマ数字が書かれていた。


「確かに変な記号ですねトワ様!」


「一杯×が書いてありますねご主人様!」


 トワの横でいつでも動けるように構えたままのアイリとリーネが言う。


(どうやらこの世界にローマ数字は無いみたいだな)


「あ・・・取り合えず倒してから考えよう」


 トワはアイリとリーネにはあれが読めることを言っても良いと思ったが、クリュエル達がいることを思い出して口に出すことをやめる。


「それにしても襲って来ないな…………進もうとすると攻撃をしようとするのに……?」


 双頭のアースドラゴンも襲いかからずトワ達が一歩踏み出そうとすると攻撃を体制に入り、後ろに戻ると攻撃の構えを解くを繰り返している。


「ん~、やっぱりそうか」


 トワが腕を組んで呟く。


「あんな奴に睨まれてる状態でよく平然としてるな」


 チッキャがいつもの調子を取り戻したかのようにいつも通りにトワに声をかける。


「チッキャこそ余裕ありそうだね」


 トワが冗談目かして言う。


「フフ、まあね。まるで城壁で護られてる気分だからね。それで、何か気付いたのか?」


 チッキャだけで無くクリュエル達全員がトワ達が前で壁になっていることで、双頭のアースドラゴンに出会った時の衝撃や恐怖が大分薄れた為に落ち着きが出ていた。


「ん?ああ、あれは何かを守ってるんじゃないかなと思ってさ」


「守る?」


 反射的にクリュエルが聞き返す。


「そっ、ここに偶然居着いたわけじゃなくて、誰か、いや、何者かが連れてきたんじゃないかと思ってね」


 トワは軽い口調で言うが周りの空気が一瞬ではりつめる。


「そ、それは、アースドラゴンの群れやその双頭のアースドラゴンまでも従えるほどの相手…………」


 トワの言葉にチッキャが息を飲みながら声を絞り出す。

 誰もがそれほどの存在は魔人、しかも複数のドラゴンを従えているだけに“魔王”の二文字を思い浮かべる。


「何者かはこいつを倒して奥に行ってみればわかるさ」


 トワの気配察知のスキルでは双頭のアースドラゴンの奥に何もいないことになっているが、トワは警戒のレベルを上げる。


(俺の最高レベルの気配察知に引っ掛からないなんて、本当にいないのか、それとも俺の気配察知を誤魔化せるだけの上位レベルの隠蔽か・・・・何にしろ行けばわかるか)


 トワは刃がボロボロになった剣を地面に突き刺して新たな剣を取り出す。


「少し下がっていてくれ。前に出なければ襲っては来ないが戦いが始まるればどうなるかわからないから」


「わかった」


 トワが言うとクリュエル達は頷く。

 現状で襲っては来ないが背中を見せると普通の動物たち同様に襲われないとも限らないために、慎重に目線を双頭のアースドラゴンに向けたままゆっくりと下がっていく。


「それにしても、ここまで来ないと襲われないなら何で街道に出たと言われているんだ?」


 トワが疑問をふとこぼす。


「それはこの辺の石は特殊な鉱石だから定期的に依頼が出てて、そこそこ良い金になるから冒険者が小遣い稼ぎに来たりするんだ。その時にドラゴンを目撃したって情報と最近街道で商隊が消える事件があったからその情報が合わさったんじゃない?」


 下がりながらチッキャが答える。


「商隊が消える?街道で?」


 トワが首を捻る。

 アースドラゴンの達の行動から今いる場所より下には行かないと考えたばかりのトワには信じられなかった。


「少し前に街道で馬車と荷物をそのままにして人と馬が消えたらしい。王都でも話題になったよ?知らなかった?」


 チッキャが知っていて当たり前と言う感じで聞いてくる。


「俺が来たときにはその話題は無かったな。馬車が無事ならドラゴンとか魔獣に襲われたわけじゃ無いんじゃない?荷物も無事なら盗賊でもないだろうし。・・・ただの怪奇事件じゃん!」


 トワがチッキャの言葉を聞いて少し考えて反射的に声が大きくなった。


「そっ、一時期王都で幽霊の仕業とか怨念だとか祟りだとか流行ってたんだけど、いつのまにかドラゴンのせいにされて皆が納得したんだ。ドラゴンの事なんてあんまり知らないし馬車を壊さず生き物だけを襲う能力があるのかもって皆納得したんだよね。実際見るとあり得ないってわかるけど」


 チッキャが苦笑いをしながら言うと他のメンバーはチッキャに同意するようにウンウンと頷く。


(なるほど住民を落ち着かせるために冒険者ギルドと公爵辺りが情報操作したんだろうな、まあ、その辺は俺に関係ないし良いか)


 トワは剣に魔力を籠めていく。


「アイリとリーネはクリュエル達の壁になるように下がってくれ」


 トワが左右にいる二人に順番に顔を向ける。


「でも!………わかりました」


「は~い!」


 アイリが一瞬何か言おうとしたがトワと少し目を会わせると頷く。

 トワは二人に微笑んで頷く。

 トワは全員が十分に離れたことを確認して一歩踏み出す。


「「ババラァァー!」」


 威嚇するように二つの首が吠えて、何時でも攻撃を出来るように右の前足を持ち上げる。


「どこぞの双子か!」


 トワは大音量で聞こえる声に左手で方耳を抑えながら地面を蹴って、双頭のアースドラゴンに詰め寄るが、間合いに入った瞬間に爪が振り下ろされトワは咄嗟に後ろに飛び退いた。


「ほぉ、やっぱり通常のとはわけが違うか」


 トワとて全力で突っ込んだ訳ではないが、普通のアースドラゴンと戦っていた時よりも明らかに速度を上げたにもかかわらず攻撃を合わされたことに少し驚いていた。


(見えているステータスを信じるのは駄目みたいだな)


 トワは見えてステータスから大体2倍位だと考えて攻撃を仕掛けていたが、その考えを改めて相手をダークドラゴンクラスだと思って戦うことに決める。


 一度近付いたことでトワを侵入者と認識した双頭のアースドラゴンが、飛び退いたトワを追いかけて来ていて前足を振り上げ叩き潰すように振り下ろす。

 いくら強くなり遠くから来るときに多少速いとは思ったが、一瞬で間合いを詰めるほど速いとは思っておらず油断していた。


「ッ!   危ないなー!」


 トワは横に移動してギリギリのところで躱わす。

  双頭のアースドラゴンは躱わされると前足を横に振りトワを薙ぎ倒しにかかる。


「うわぁっと!こいつ、頭もそこそこ良いんだな」


 トワは双頭のアースドラゴンの攻撃をジャンプして避ける。

 双頭のアースドラゴンは空にいるトワに左右の牙で襲いかかる。

 トワは左右の牙の攻撃を体を捻りながら躱わして双頭のアースドラゴンの背中に飛び乗る。


「ババラァラァァー」


 双頭のアースドラゴンはトワを振り落とそうと体を振り暴れる。


(こいつ丸くなって落とそうとはしないのか?そう言えば普通のアースドラゴンも丸くなったのは2体だけだったな。個体差かな?)


 トワが暴れる背中の上で呑気に考える。


「何にしろそれならば好都合だ!」


 そう言うとトワは双頭のアースドラゴンの背中に剣を突き刺す。


「ババラァァ!」


 剣を突き刺すと空に吠えて動きが一瞬だけ止まる。


「ステータス貰うぞ!」


 トワは片膝を付いて双頭のアースドラゴンの背中にてをつける。


「イッ!ッ!テー!!」


 トワがステータスを奪おうとスキルを発動すると拒否されるように手が弾かれる。


(・・・・なに?静電気?こいつのスキル?)


 トワは弾かれた手を見て呆けていた。


「トワ様!!」

「ご主人様!!」


 アイリとリーネの声で我に返ると背中を払うように振るわれた双頭のアースドラゴンの尻尾が迫っていた。


「くっ!」


 双頭のアースドラゴンの攻撃は既に躱わすことが出来る位置で無く自ら跳ぶように尻尾に弾かれる。

 トワの力ならば受け止めることは出来たが、一度失敗したので奪うことが出来無いので、背中にいるよりも攻撃の選択肢が多くなるので離れることを選択した。

 双頭のアースドラゴンは二本ある尻尾の片方が受け止めたトワの背後から挟み込もうとしていたためトワの判断は間違いではなかった。


「はぁ、ステータス奪えないし、魔石も無い!肉も素材も使えないなら一瞬で片付ける」


 トワがため息混じりで声を低くして呟くと辺りの空気が震え出す。


「…………これは…………」


 心配そうにトワを見つめていたクリュエルが呟く。


「トワ様が本気で何かをするみたいです」


 アイリが額に汗をかきながら言う。


「ワクワク!」


 リーネは震えながら笑顔で言う。


 トワは自然体で立ち剣を両手で持ち正面に構える。

 正眼の構えと言う物だ。


「俺の知っている異常種ってのは環境汚染とか特殊な原因があるものだ。でも、この世界でそれで生まれるのはたぶん亜種と言われる者だろう。だから!その数字からわかるがお前は造られた存在だな。そのせいで世界の理から外れてしまった。だから、鑑定もドレインも効かなかった。……………今、俺がこの世界の理に戻してやる」


 トワはそう言う目を閉じ深く数回深呼吸をする。

 その間、双頭のアースドラゴンは襲いかかることもなく、まるでトワの言葉を理解し全てを委ねるかのように目を閉じ頭を下げる。


 トワが目を開けると剣が白よりも更に白く輝く。

 その剣をゆっくりと上段から振り下ろすと剣が灰になるように消える。

 双頭のアースドラゴンから離れた位置で振るわれたトワの剣は、刃が飛んぶかのように一筋の光が双頭のアースドラゴンに向かっていく。


 光が双頭のアースドラゴンを左右真っ二つに切り裂き消えていく。

 双頭のアースドラゴンは血を流すこと無く、まるで世界に戻っていくかのように砂になり風によって流されていく。


「静かに眠れ」


 トワが目を閉じていると後ろからアイリに声をかけられる。


「トワ様」


「ん?」


 トワが振り返ると嬉しそうなアイリとリーネの後ろで放心状態のクリュエル達がいる。


「ど、どうした?」


 トワがアイリに聞く。


「トワ様が最後に使ったあれって、お伽噺とか絵本とかで勇者が魔王を倒す時に使ったやつですよ。絵本の挿し絵になってます」


 アイリが耳打ちをしてくれる。


(な、なるほど・・・どうごまかそう)


 トワが最後に使ったのは目を閉じた時にスキルポイントを使って取った光魔法を剣に纏わせた技だ。


(確かに上級魔法だけどレベル1だぞ!魔力を無理やり注ぎ込んで威力を増しただけどぞ!昔の勇者と魔王って弱すぎだろー!)


 そんなことを心の中で叫んでいた。

 光魔法は取得にレベル1でポイントを60も消費したためにレベル1しか取れなかった。


 トワはおもむろにクリュエル達に近付き自分の口に人差し指を添えて


「この事は内緒ね」


 と言うとクリュエルが口を開ける。


「ゆ、勇者、様?」


「違いまーす。勇者ではあーりません!」


「いや、ゆう「違いまーす!」」


「え、でも、ゆ「違うって言ってまーす!」」


「・・・・・・・」


 トワの勢いにクリュエル達は黙ってしまう。


「それと、内緒だからね!」


 トワが笑顔で迫るとクリュエル達は首を縦に何度も振る。

 トワは取り合えずまあいいかと振り返り山を登り始める。


「ちょ、どこに?」


 チッキャが声をかける。


「あそこ、正面の断崖絶壁から少し右に行った所に洞窟の入口がある」


 そう言ってトワが歩いていく。



 見た目には何もないがトワの鑑定眼には《擬態の布》と出ている場所がある。

 トワは手を伸ばしその場所を掴むと布をはがす。


(この布は貰っていくか)


「クリュエル達も行くよ」


 布をアイテムボックスに仕舞い急に現れたアースドラゴンが2体並んで通れる位大きな洞窟の入口に驚くクリュエル達に声をかける。

 魔人が街道に出るなら自分の側が一番安全だろうと考えて連れていくことにした。




 洞窟に入り暫く進むと開けた空間が表れる。

 そこには幾つもの人が入れそうな透明な筒と大きな水槽、それに化学室のような器材が多々あった。


「まるで実験場だな」


 歩いていくと急に後ろに気配が現れる。


「人の研究所に無断で立ち入るとは不粋だね」


 その気配の正体は生き物では無かった。

 振り向いた全員が見たのはローブを纏った骸骨だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ