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本当の罰?

 遅くなりました。


 えーと、今回は多少過激な表現があります。

 苦手な方は真ん中辺りをとばしてください。

「私が何をした!」


 後退りしながら恐怖を浮かべて言う。


「何もしなかった事が罪だ」


 少年が剣を貴族の胸の薄皮に突き立て少し血を流す。


「国に属さない人間などいくら死んでも知るか!」


 貴族は震えながら叫ぶ。


「クズが!死ね!」


 少年は貴族の頭を空いている手で掴み剣をゆっくりと刺していく。


「イギャャャャャャ!」


 貴族は暴れるが少年に頭を掴まれているために逃げ出すことはできない。

 貴族はだんだんと動きが無くなり痙攣しだして最後には口から大量の血を吐き出して死んだ。


 少年は剣を引き抜き頭を掴んでいる手を放すと貴族がその場に崩れ落ちる。

 糸の切れた人形のように床に倒れている貴族を無視して少年がベッドの方を振り向く。


 そんな少年を見ているのはクリュエルとチッキャの二人だけだった。

 そんな二人も助かった嬉しさと安堵があったが少年が振り向く瞬間に先程見た夜の闇よりも暗い瞳を思い出して麻痺して動かないはずの体が震える。

 しかし、振り向いた少年の眼には優しい光が宿っており二人が安堵していると少年の後ろから猫耳の可愛らしい少女がためらいなく少年の目を両手で抑える。


「目、目に、アイリ、目に指が入ってる!痛い!」


 少年は絶叫しながら目を抑えている少女の手を掴む。


「トワ様の目がイヤらしいです」


 少女は掴まれた手を動かして目を揉んでいる。


「リーネちゃん、着替えてもらって」


 猫耳の少女が言うといつの間にかベッドの傍にいた犬耳で少し垂れ目のこれまた可愛らしい少女が立っていた。


「はいは~い!じゃあ、服は集めておいたから着替えて~・・・・・・ん~、遅いよ~、いいや、私がやってあげる~」


 虚ろな目でなかなか動かないクリュエル達を見て我慢できずにテキパキと着替えさせ始めた。


「私~弟と妹一杯いるからなれてるの~」


 そう言いながら全員の体を拭いて着替えを終わらせて全員をベッドに座らせる。

 クリュエルはお礼を言おうとするが麻痺していて声が出なかった。

 解放された少年は虚ろな目をして人形のように反応の無い女性達に回復魔法をかけていく。


「っ!!」


 クリュエルは驚いた。

 剣神とまで言われるほど剣才を持っていると思われる少年が回復魔法を使った事でさえ驚いたクリュエルだが、それ以上に自分の体の麻痺さえ消えていることに喋れる様になったが言葉を忘れて絶句する。

 

 クリュエルが驚くのは仕方がない事だ。

 この世界において普通は魔法職なら武術系のスキルに乏しくて、武術職なら多少魔力を操る事は出来ても魔法を使うことは難しい。

 極稀に武術の才があり魔法も有効な攻撃として使える者もいるがそんな者は世界に数える程度しかいない。

 しかも少年が見せた回復魔法は毒で麻痺した体を治すような世界に10人もいない程の威力だった。


 クリュエルとチッキャは自分の手を見て驚きから放心していた。

 他の女性達はキズが癒えても虚ろな目をしてベッドに座ったままだった。

 少年はそんな女性達を見て悲しみのこもったような笑みを向けてテントから出ていく。



 しばらく放心状態だったクリュエルは不意に外から聞こえる歓声に意識を取り戻して、同じく気がついたチッキャと共にテントの外に出る。

 クリュエルとチッキャは外に出た瞬間に無惨な姿の貴族の護衛の冒険者の姿を一瞥して、外にいる男達が見ているロンペイの街の方を見てその光景に驚きの表情のまま固まる。

 いつの間にかついてきて一緒にテントから出ていた他の女性達もその光景を見て固まっていた。


 全員の目に映っていた物はまるで波紋が広がるかの様に少年を中心に魔獣が倒れていき、襲い掛かるゴーレムを猫耳と犬耳の少女達が軽々と倒す。


 全員の心にこれなら勝てるという想いが浮かんだときに低くそれでいて戦場を通る声が響き渡る。


「何をしておるかー!」


 魔獣達の上にいつの間にか人よりも一回りも二回りも大きな人陰が空に浮いていた。

 それは翼で飛んでいるわけではなく、空にただ立っていた。


「お、おい!なんだあれは!」


 丘の上で息を飲んで見ていた人々がザワザワと騒ぎだす。

 

「・・・・っ!」


 目を凝らして見ていた冒険者の一人の男が驚きの声を上げて震えだす。


「・・・・・お、おい!あれが何者かわかったのか!?」


 その男に視線が集まり誰かが口に出して聞く。

 

「あ、あれ・・は…………」


 男は震えながら再び口を閉ざしてしまう。


「何だっていうんだ!」


 その男のパーティーリーダーらしい男が肩を掴み揺さぶりながら聞く。


「・・・・魔人だ!」


「なっ!」


 リーダーの男は手を離して驚きの表情で魔人と言われた者を見る。


「まさか、何でテメーにそんなことがわかるんだ!」


 周りにいた他の冒険者が叫ぶ。


「俺は遠視と鑑定のスキルがある。それで確認したんだ!間違いはない!」


 それを聞いた周りの者は絶望の顔をする。


「・・・・・無理だ…………」


 誰が呟いたかわからないが皆同じ気持ちだった。


 クリュエル達も例外ではなかった。

 感情がまた悲しみに変わる瞬間に先程の少年が魔人に挑んだ。

 視ている者全員がその光景を夢ではないかと考える。

 なにせ人間が魔人と互角に渡り合っていたからだ。


 そして誰もが声も失い唖然としているなか激しい戦いの末 少年が傷だらけになりながら魔人を討ち取った。


「・・・・・・うおぉぉぉーーー!」


 一瞬の沈黙のあと叫びを上げて殆どの者は丘を駆け降りていく。

 

 そんな中、数人の男達がクリュエル達の元へ近付いてくる。

 彼等は女性達のパーティーメンバーだ。

 彼等は何て声をかければいいかわからずに口を開いては閉じるを繰り返して、手をとろうかどうか迷っていた。

 女性達はパーティーメンバーでも恐怖の色を浮かべて震えて後退る。

 そんな中クリュエルは震えそうになる自分を抑えつけて声を振り絞る。


「少しまってやってくれ、彼女達にも落ち着く時間が必要だから……」


 クリュエルの言葉を聞いた男達が目を伏せて頷く。


「手が空いているなら街に行き怪我人の介抱を手伝え!」


 ロナードが声をかける。

 少年のお陰で門が破られなかったとしても、少年が来るまでのあいだ魔法や弓の応酬で怪我をした者は少なくなかった。

 冒険者が国軍の中隊長とは言え軍人の命令を聞く必要は無かったが、全員ロナードのことは認めているためにおとなしく従って丘を降りていく。


「お前等はここで待機!もし、来れそうならば休んでから来い!」


 そう言ってロナードもクリュエル達の場所から離れていく。



 しばらくすると死んだ貴族のテントから物音が聞こえた気がしてクリュエルとチッキャが振り返ると他の人達も振り返り耳を済ませている。

 すると、やはりコドッと音が聞こえる。


「えっ!?」

「なに!?」


 誰が声を上げる。


 クリュエルとチッキャは前に出てテントと他の者達のあいだに入る。


「うあぁぁぁぁああ!」


 テントの中から呻き声が聞こえてくる。


 クリュエルとチッキャはテントに近付き武器を構えて入口を開ける。


「っ!」


 目の前の光景にクリュエルとチッキャだけでなく他の者も驚愕の表情を浮かべて、段々と怒りで表情が歪む。


「イテテテ、クッソ!魔道具が粉々だ!あの餓鬼許さねー!ボロボロになるまで追い詰めて後悔させてやる!・・・ん!?」


 貴族は誰かが作った魔道具ではなく世界に幾つか点在する遺跡から見つかった魔道具の一つを国に報告せずに裏ルートで獲ていた。

 遺跡から見つかる魔道具の力は人知を越えていて!今回貴族が持っていた魔道具は所有者が死んだ場合、肉体を元に修復して再び命を戻すものだった。


 貴族は少年への怒りを口にしながら落ちている布で体についた血や埃を拭いながらテントの中に光が入ったことで振り向きクリュエル達を見つける。


「・・・な・・んで・・」


 クリュエルは小さく消え入りそうな声で呟く。


「おい!私の着替えを手伝わせてやる。光栄に思え!・・早くしろ!」


 貴族は汚い笑顔を浮かべて言う。


「・・・・・・!」


 クリュエル達はなぜ生きているかどうでもよくなり怒りの表情を浮かべながら貴族を睨み付ける。


「なんだその顔は!貴様ら全員、私に楯突いてただですむと思うなよ!王都に帰ったら全員 奴隷に落としてやるぞ!」


 貴族が立ち上がり指差しながら喚く。


「・・・王都に・・王都に帰れると思っているのか!?」


 クリュエルがそう言うと全員が歯ぎしりするほど噛み締めながら武器を構える。


「・・・・なんだ!それは・・・貴族である私にぶっ、武器を向けるか!・・・・・そういえば、貴様等なぜ動ける!!?」


 怒り高圧的な態度だった貴族は毒で動けない筈のクリュエル達が普通に立ち上がり武器を構えていることに気付き驚く。


「・・・・・・・」


 クリュエルは無言のままジリジリと近付き武器をカチャリと鳴らす。


「ヒィッ!」


 すると貴族は腰を抜かして尻餅をついた。

 クリュエル達は少年に助けられた時は安堵しか考えられなかったが、冷静になり目の前に憎む相手がいるとただ殺すだけでは納得できそうもなかった。

 そんなとき外の声が聞こえた。


「ゴブリン達が逃げたぞ!」

「ほっとけ!そんな雑魚いつでも倒せる!」

「そうだ!それよりもオークを倒せ!」


 それを聞いたクリュエルは貴族の髪を掴み無理やり立たせて、そのままテントの外に連れ出す。


「痛い!痛い!き、きさま!止めろ!」


 貴族は喚くがクリュエルは無視をして街とは違う方に歩いていく。

 他の者はクリュエルの行動の意味がわからなかったが黙ってついていった。


 其ほど遠い距離ではないが、いつもは馬車で移動しているうえに靴も履いていないため貴族の足の裏は皮が剥け石で肉を切られても止まれば髪を掴んだままのクリュエルに引きずられるために歩いていた。

 

 しばらく歩き止まったクリュエルは2メートル程の高さの崖から貴族を蹴落とす。


「へぶっ、ゴホッゴホッ」


 その程度の高さから落ちても死なずにうつ伏せに落ちて咳き込む程度だった。


「・・・・・・・」


 クリュエルは何も言わずに見下ろしていた。


「ゴホッゴホッ、なにしやが・・・る……………」


 貴族は起き上がろうとして周りの状況が目に入り言葉を失い震えだす。

 そこには小学生位の背をした緑色の姿に醜い顔をした生物、10体程のゴブリンがいた。

 クリュエルはゴブリンが逃げたことを聞いて通るであろう場所に先回りしてゴブリンの群れに貴族を落とした。


「ギシャ?」

「ギャギャ?」

「ギギギャ!」


 ゴブリンは何かを確認するように話をはじめて1体のゴブリンが貴族に近付いていく。


「ヒィッ!く、くるな!助けて」


 貴族は手をバタハタと振るが何の訓練もしていない貴族は一般人と同じで弱くゴブリンにとってはただのいきがいい餌にしか見えていなかった。


 ゴブリンは振るっている貴族の手を簡単に掴むと口を開いて鋭い歯で指を食い千切る。


「ギヤャャャャ」


 泣き喚いている貴族を無視してゴブリンはクチャクチャと汚く音をたて味わうようにしばらく噛みゴクリと飲み込んでニヤリと笑う。


「クギギキギャ!!」


 最初に噛みついたゴブリンが叫ぶと他のゴブリン達がよってくる。


「勝手なことをして悪いが、ここから先は見ない方がいい」

 

 クリュエルはこれから何が起こるかわかっているために他の者にトラウマにならないように言うが、全員わかったうえで目をそらす者はいなかった。


「彼奴にたいする気持ちはみんな一緒さ。だから誰も止めないし何も言わない。あたしらも覚悟しているさ。・・・・共犯だね」


 チッキャはそう言って最後に笑いかける。

 他の者も力強く頷く。

 それを見てクリュエルはなんとも言えない顔をして頷き下を見る。


「イヤダイヤダ!死にたくない!ぎゃー!」


 貴族は抵抗をするがゴブリン達からすれば、そんなもの簡単に抑え込めて指や肉を食い千切っていく。


「ぎゃー!イタイイタイ!」


 1体のゴブリンが指を左目に突き刺してぐりぐりとかき混ぜるように目玉を掻き出して、アメでも舐めるように口の中でも転がしている。


「ぐご!ぎょょょ!うごおぇ!」


 貴族は目を突かれて痙攣し失禁をして気を失う。


 違うゴブリンは持っていた錆びだらけのナイフで腹を裂いて胃や腸を食い始める。


「ゴブッ」


 貴族は口から血を吐き出して苦しさから目を開ける。

 そこで貴族が最後に見たものは大きな口を開けて自分の右の頭を喰おうとしているゴブリンの姿だった。


 ゴブリンは バリッグチャ という音をたて右目の辺りを頭蓋骨ごと噛み砕いた。

 貴族は数回ビクッと痙攣をして動かなくなった。


 ゴブリン達は骨も残さずに食べ終わるとクリュエル達の方を向き飛び上がり襲い掛かる。


 クリュエルが武器を振ると数体のゴブリンの首が飛び体がドシャリと地面に倒れる。


「血肉が糧になることなく死ぬがいい!」


 クリュエルは倒れるゴブリンの膨れた腹を見ながら言う。

 ゴブリン達はクリュエルとチッキャによってあっと言う間に片付いた。


 その後クリュエル達のギルドガードに貴族を殺した事が記録されていて驚かれたが国軍中隊長のロナードとロンペイの街のギルドマスターのアグリバッハそれに、駆け付けていたクライン達により内密に処理され記録を消去し何の処罰されなかった。








「んっ、ん~ん!・・・なんかイヤなことを思い出したような気がする」


 クリュエルは目を覚まして寝ぼけ眼で頭を掻きながら言う。


「かー、女らしくねーな!ヨダレ垂れてんぞ」


 隣でお茶を飲んでいたドワーフのログファイルドが口元を指しながら言う。

 クリュエルは口元を拭う。


「い、いいだろ!?それよりできたのかい?」


「ああ、そこにあるだろ」


 ログファイルドは壁に立て掛けられているクリュエルの武器を指す。


「ありがとう。じゃあ、私はそろそろ帰るよ。ロニーニャはまだ帰ってないのかい?」


 クリュエルは武器を背負い外が暗くなりはじめているためにロニーニャに挨拶をしてから帰ろうと思った。


「ロニーニャならニーシャイルの迎えに行ってるよ。」


 ニーシャイルとは冒険者ギルドで働いているロニーニャの母親だ。


「そっか、じゃあ仕方ないな。それじゃまたくるよ」


 そう言ってクリュエルは宿に戻りパーティーメンバーと夕食をとりながら明日の話をして眠った。


 早朝クリュエル達は門を出ると人だかりを見つけて、そこにトワ達の姿を見つけ手を振りながら近付く。


「おーい!おはようー!待たせた!」


 その声にトワが振り返り、


「おはよ・・う!?・・・・クリュエルの装備って・・・それ!!」


 クリュエルの姿を見て驚いて声を上げた。

 


 



 今回も読んでくれてありがとうございます。


 




 次回からトワ達の話に戻して少し進めます。



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