ズレ?
年末は忙しくてどんどん遅れがちになってごめんなさい。
「楽しめましたでしょうか?」
人魚の姿をした魔人ピトリテが誰もが見惚れるような笑顔を上座に座る少年ラボラスに聞く。
「今のどうなるのでしょう?ピトリテ殿の集めた魔獣の軍勢は全滅しましたが、結局は全滅した後に下級魔人が1人で終わらせましたが?」
三目の魔人アンドロがラボラスに聞く。
「そうだ!ラボラス様!勝ちは魔獣か人か、どちらと言うことになりますか?」
竜人の魔人ニーズヘッグが前にある大きな丸いテーブルを叩きながら立ち上がり声を上げる。
「黙れトカゲが!我も貴様も同じようなことをしたのだ口をはさめる立場では無いだろ」
巨人の魔人ヨトゥン椅子に深く腰を掛けながら腕を組み立ち上がるニーズヘッグに対して小さく言葉を吐く。
「なっ!貴様!今の言葉は我等竜族を全て敵にまわしたぞ!今すぐ撤回すれば許してやるぞ!」
ニーズヘッグが額に青筋をたてながら言う。
「フンッ、トカゲをトカゲと言って何が悪い?」
ヨトゥンは前に乗り出すような格好で前のテーブルに肘をついて挑発するように笑いながら言う。
「いいだろう!木偶の坊に竜族の恐ろしさを教えてやる!表に出ろ!」
「よかろう!貴様の皮を剥いで腰巻きにでもしてやろう!」
二人が睨みあっているとドーンと言う大きな音が響く。
「いい加減にしろ貴様等!」
ラボラスが右の拳をハンマーのようにテーブルに叩きつけると、ニーズヘッグが叩いてもキズ一つ付かなかったテーブルがラボラスの拳を中心に蜘蛛の巣状にヒビが入る。
一声で二人は静まりラボラスの顔を見て青くなり額から汗を滲ませる。
「申し訳ありません。少し熱くなりすぎました。ニーズヘッグもすまなかった。しかし、同じことを先にし負けた我等が言えることは無いであろう?」
「うっ、・・・・私もすみませんでした」
二人は握手をするが常人ならば握り潰される程の力をお互いに入れて笑顔で歯を食い縛っている。
「制限はかけておらんのだ魔獣軍の勝ちでかまわぬだろう」
「うっ」
ラボラスがそう言うとアンドロ以外がガッカリする。
ダークドラゴンと下級とはいえ魔人が倒されていることでラボラスとアンドロ以外が人間側にかけていた。
賭ける物には興味が無いが、負けることで見る目が無いと言われているようで全員プライドが傷ついていた。
「まあよい、ピトリテ今回は暇潰しにはなったぞ」
「そうですが・・・次はラボラス様を楽しませてご覧にいれて見せますわ」
ピトリテは少し残念そうに頭を垂れるがすぐに顔を上げて笑顔を向ける。
「今回の侵攻の話しはここまでだ」
「そう言えばラボラス様?コリとヨリはいかがしました?」
いつもラボラスと一緒にいる双子の姿が無いことに気が付きアンドロがたずねる。
「あ~、二人は昼間に騒ぎすぎてじっ様のところで寝ている」
「アガレス殿のところですか」
アガレスとは古参の魔人で魔王ラボラスに次いで強く周りからは魔神などとも呼ばれる爺いの魔人だ。
「では、今回は終わりにする。次は誰がやる?」
「私めがやりましょう」
ラボラスか問いかけると騎士の姿をして首から上が切れ落ちてその頭を左脇に抱えている者が手を上げた。
「デュラハンかわかった」
「私は先に主力の予定を説明しましょう。指揮は下級魔人のレッドキャップに任せて、人間の世界の基準で言うAランクのリッチを数匹サポートとしてつけます。それと、Bランクのレイス、ワイトとマサンとDランクのスケルトンとゾンビを大量に用意したいと思います」
レッドキャップとは大きさが140㎝くらいの人形で、人間の血で染めた赤い帽子を被り身の丈と同じくらいの大斧を持ったSSランクの魔人だ。
リッチは頭が良く高ランクの魔法を使うボロボロのローブを纏ったAランクの人の姿をした骨の魔獣だ。
レイスは人の形をした霧状の魔獣で、ワイトは意思を持ったゾンビで、マサンは燃やされた生物の灰が固まって出来た120㎝くらいの大きさの人の姿をして額に小さな角を2本生やした魔獣だ。
スケルトンはボロボロの剣と木の盾を持った骨で、ゾンビは意志が無い腐って腐臭を放つ死体だ。
「ふっ、期待しているぞ」
「かしこまりました」
「では、また」
ラボラスが言うといつものようにすぐに部屋からラボラス以外の姿が消える。
「場所についてはそう言うわけで、それで今回の件だが物見の報告によれば到着した時には都市は崩壊していて、そして、飛び去る魔人らしきものを見たらしい」
クラインが腕を組み背もたれにもたれながら真面目な顔で言う。
「援軍とかは送らなかったんですか?」
トワは魔人と言う言葉に一瞬眉をピクリとさせるが表面上は極めて冷静に聞く。
「一番近くのギルドマスターによると間に合わなかったそうだ。まさか半日で落とされるとは予想していなかったようで、準備に手間取り物見を数名先に行かせるのがやっとだったらしい。それに、スムーズに出発しても間に合うかギリギリのうえ、魔人が相手では被害を増やすだけだと言うのが向こうの回答だ」
クラインは数枚の紙を束ねた資料らしきものをトワの前に置く。
「はー、随分とまた保守的な回答ですね。冒険者を纏められなかった言い訳ですよね。ヘドが出る。それより、いつ起こったことですか?」
トワは書類を手に取り要点だけを読んで言う。
「ハハハ、耳が痛いな。一昨日の昼少し前に侵攻が始まり日が沈む少し前に落ちたらしい」
「えっ!?一昨日ですか?でも、昨日の昼に報告が・・・」
「転送用の魔玉石があるからな」
トワが驚いて聞くとクラインは手元にあるお茶を一口飲み当たり前のように言う。
「「「「「「「「「はあぁぁぁ!?」」」」」」」」」
クライン以外の9人が一斉に声を上げる。
「それと、お前に頼まれてた伝言もペイルトの家に送っておいたぞ。これが、内容の控えだ」
クラインは全員の驚きを無視して淡々と話しを進めてトワに2枚の紙を渡す。
「それはどうも。・・・じゃなくて、転送出来るのか!?」
トワは渡された控えの内容を適当に斜め読みしてアイリに渡す。
渡されたアイリが目を通していると気になったリーネが席を立ちアイリの後ろから覗き込むように一緒に読んでいくと2枚目に入ったところで二人は固まる。
「「!!!」」
そんな二人の変化が気になり横目で見ると王都にとどまることになった経緯がアイリとリーネの名前を交えて事細かに書いてあった。
(ああ、強くなっても二人は母親のような存在のフラウには頭が上がらないからな帰ったら大変だな。・・・俺も主としてなってないと怒られそうだ)
そんなことを考えてすぐにクラインに視線を戻す。
「ん?《ワルキューレ》のメンバーが知らないのは仕方無いが、この事は冒険者ギルドの職員とBランク以上の冒険者なら知っている事だろ?Bランクに上がった時に説明さ・・・お前はBになって無かったな例外的に・・・たがらあの時手紙を送れるか聞いたのか!?」
クラインが呆れたように言うとクリュエルが驚愕の声を上げる。
「あの噂は本当だったのか!」
「・・・・・・噂?」
トワがわからずアイリとリーネを見ると二人はそれどころではなく、帰った後に待っているだろうフラウのお仕置きを回避する方法を模索していた。
そんな二人を見てトワは苦笑いをしてクリュエルに視線を戻し聞いてみる。
「ああ、Aランクに最年少最速記録で史上最強の冒険者だって言う噂だ。私はてっきり噂に尾ヒレが付いたんだと思ってたけど、こないだの戦いで最強ってのは納得したけど最速の方は疑ってたんだけど・・・・」
クリュエルはクラインを見るとクラインは苦笑いを浮かべて首を振る。
「最速記録なんてもんじゃないぞ!2週間たらずで上り詰めやがったんだ!最初に会った時いつかはくると思ったが、今じゃあ軽く飛び越えられちまったよ」
「ああ、あははは、」
クリュエル達乾いた笑いを返すことしか出来なかった。
「そ、そんなことより、転送出来るなら援軍を送ればよかったんじゃないの?」
トワは自分の話題を切って脱線した話しを戻す。
「いや、転送石で送れるのは書簡が限度なんだ。人や動物は無理なんだ」
クラインも真剣な顔になり話しを戻した。
「ああ、そうなんですか。でも以前知り合った商会の人が書類が届くのに時間がかかるって言ってましたが知らないんですかね?」
家を買ったときに知り合い少し世間話をした狐の獣人バローズが言っていたことを思い出した。
「デカイ商会なら知っているだろうが冒険者ギルドは基本的に緊急性が無ければ外部からは受けないから無いものと考えているだろうな。それに、転送の魔玉石は冒険者ギルドしか持っているところは無いうえ使えるのはギルドマスターだけだからな」
「へー、冒険者ギルドだけなんですか」
「転送の魔法は時の賢者のみが使えた魔法で冒険者ギルドの立ち上げの時にいくつか作り特殊な魔法でギルドマスターにしか使えないようにしてあるのさ」
「どうやってギルドマスターって見分けるんですか?」
「ギルドマスターは就任するときに特別な魔法を体に宿すんだ!魔玉石がそれを感知して発動が出来るようになるのさ」
「その魔法って?」
「それは言えん!もしトワがギルドマスターになるときが来たらわかるさ。この転送の魔法は冒険者ギルドを認め続かせるための国との駆け引きでもあるのだ」
「・・・情報は武器と言うことですか?」
クラインはニヤリと笑う。
「その通りだ!緊急な情報は国も欲しいからな!今回も情報を持っていったのさ。それと、お前に伝言だ。今回の件で前線以外の都市の防衛の件で予算などで会議が長引きしばらくは女王は動けんし、勇者も護衛のため彼女の側を離れられないから訓練は少し休みと言うことだ」
「わかりました」
「そこで、暇になったお前に指名依頼がある」
「指名って誰のですか?」
トワは嫌な気がして聞く。
「俺だ!」
クラインが親指で自分を指してどや顔をしていた。
(なにあの顔!殴りたい!あの親指を折りたい!)
「暇じゃないんで、英気を養いたいんですが」
トワがあからさまに嫌そうな顔で言うがクラインは気にせずに話しを進める。
「実は隣国との国境線上にある山脈の人が通れる2つしかない街道の王都近くの街道にお前の倒したフレイムドラゴンと同じAランクの属性竜、土のアースドラゴンが現れたんだ!これの討伐を任せた。勿論報酬は弾む」
「なに勝手に話しを進めてるんですか?てか、フレイムドラゴンてなんです?俺が倒したのはレットドラゴンですよ?」
トワが首を捻りながら言う。
「はぁ?レット?」
「ええ、レット、」
「は?」
「え?」
「「・・・・・」」
二人の間に沈黙が落ちた。
誤字脱字や変な点は気付いて時間がある時に直せるだけ直したいと思います。
誤字脱字が多くてすいません。