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(脱線)消えゆく都市?

 だいぶ遅くなりました。

 待っていただいているかた本当にありがとうございます。


 今回は長いので誤字脱字が多いかもしれません。

 先に謝っておきます。

 ごめんなさい!


 チャクムムルアインとは、全身を鋭く硬い濃い翠の鱗に包まれた全長100メートルを越える鰐型のAランクの魔獣だ。

 動きは鈍く知能も低く魔力も無いが、

全身を覆われた硬い鱗の防御力と大きな顎と爪の攻撃力は高くAランクの中でも強さはドラゴンに近いとされている。




 ドルマクが海から出た巨大な頭に声をあげ気を取られた瞬間にチャクムムルアインの尾が海の中から迫ってくる。

 グリフォンがいち速く気付きドルマクが振り返るが回避するには遅すぎ覚悟を決めたその時に、朱玉がいつものように間に入り風で壁を作るが、同じAランクの魔獣と言っても中程の力しか無いグリフォンが最上級と言っても過言ではないチャクムムルアインの攻撃を防ぐことは出来るわけもなく、風の壁は簡単に破られ朱玉の片翼が千切れる。


 それでも、チャクムムルアインの攻撃を一瞬止め少し攻撃の向きを反らすことが出来たために蒼玉はドルマクを安全な位置まで逃げることが出来て、朱玉も直撃は避けられた。

 

 グリフォンは翼で飛んでいる訳でもなく、ドラゴンのようにバランスをとるのに使っているが、それでも補助的な役割でしかなく通常は大気をその四肢で掴んで空を駆けているために無くても困るものではない。

 

 朱玉は空にいることに問題は無かったがチャクムムルアインの攻撃の余波で大気が荒れ狂い尾に引っ張られるかのように海へと落ちていく。


 朱玉は何とか堪えるがチャクムムルアインが動いたことで荒れている海からサハギン達が平然とした様子で槍を構えて攻撃が届く範囲まで落ちてきた朱玉に投げる。

 

 ドルマクと蒼玉は空高くに逃げていたために朱玉は体勢をたてなおすことがやっとで回避も防御も出来ずに海から見ると無防備な腹に数本の槍が突き刺さる。

 運が良かったのはサハギン達が正確な狙いをつけられなかったこと、それに急所に当たらなかったことだ。

 しかし、それでも即死しないだけで瀕死であることにはかわりなかった。



 チャクムムルアインは朱玉に攻撃を仕掛けながらも同時に目の前の結界に体当たりや太い腕で攻撃している。

 ナイゼル達も懸命に応戦しているが硬い鱗に阻まれて雷さえ中まで通らず有効打をうてないでいる。


「クソッ!鱗が硬すぎんだよ!」


 ロランドが歯を食い縛りながら攻撃を続ける。


「中に雷を通せればいいんだが!口さえ、」


 ナイゼルが口を開けた瞬間に中に雷を撃ち込むために数発撃った後攻撃をせずに魔力を溜めていた。


「私も攻撃をが出来れば!」


 サクリスは悔しそうに顔をしかめる。

 サクリスは回復魔法に特化しており他の魔法が使えない。

 接近戦ならば棍棒やナイフで戦えるが、弓も攻撃魔法も使えないため遠距離では見てもしものために魔力を温存することしか出来なかった。


「仕方無いさ。サクリスには怪我をしたら頑張ってもらうさ」


 ナイゼルがサクリスに笑顔を向ける。


「そうだぜ!今回は何が起こるかわからないからな!待つのもオメーの仕事だろ」


 ロランドは振り返りもせずに言う。


「そうね、そうだけどロランドに言われるとムカつくわね」


「へっ!そうかい」


 そんなロランドの袖をオリンが羨ましそうに見上げてサミンが顔を赤くしながらそっぽを向いている。

 ロランドは二人に『二人は俺の最高のパートナーだよ』と言うと二人は嬉しそうにする。

 サミンとオリンは言葉を通り大振りのロランドの攻撃が当たりやすいように水と風魔法の上位である氷魔法で敵の足を凍らせ動けなくしていた。

 チャクムムルアインにもやっているが凍った足を軽く動かすと氷が砕けて拘束出来なかったため直接氷を当てているがそれも効果が薄かった。

 

 さらに、結界の強度が限界に近付いているらしく空間が少しずつ歪みだした。


「まずい!」



 




 結界が歪みだす少し前


「キュピー!」


 朱玉は周りのサハギンを蹴散らしながら近づいて来る蒼玉とドルマクを一鳴きして止め瀕死で意識が今にも消えそうな体を気力で動かして竜巻を作り出す。


「朱玉!まつでござる!お主の体ではもう無理でござる!街に戻りサクリスに傷を癒し」


 ドルマクの言葉を蒼玉が体を上に向け空に上がることで止める。


「蒼玉!何をするでござる!このままでは朱玉が」


 蒼玉は背に乗るドルマクに振り返り静かに目を閉じ首を横に振る。

 竜巻はサハギンを巻き上げて荒れ狂う風の刃で切り裂いていく。


「キュピー」


 朱玉はドルマクと蒼玉が十分離れたことを確認して何かを告げるように鳴いて竜巻の中心に入っていく。


 竜巻の中心は風の刃が届きにくいため朱玉が死ぬことは無いがそれでも少しは刃が届く。

 そのために少しずつ体を切り裂かれていくが、そんなことは無視して竜巻の勢いをさらに上げて竜巻を纏ったままチャクムムルアインに向かっていく。


 勢いをつけチャクムムルアインの左目に当たる。

 しかし、チャクムムルアインは寸前に硬い鱗のついた瞼を閉じて目への直撃を避けている。


「・・・朱玉・・」


 朱玉の攻撃が続いているが瞼を貫くことが出来ずに少しずつ弱くなっていく。


「ピキュー!」


 蒼玉がするとドルマクは何かを悟ったかのように頷く。

 ドルマクが頷くと蒼玉は朱玉に向け走り出す。


「蒼玉!チャクムムルアインの上空に上げてくれ!」


「ピキュー!」


 1度高い位置まで上がりそれから風魔法でドルマクをさらに飛ばす。

 蒼玉はドルマクを飛ばした後、朱玉と同じように竜巻を纏い朱玉のいる左目にぶつかる。

 劣っていると言えAランクの魔獣2匹の攻撃に鱗にヒビが入り始める。


 その頃、空にいるドルマクは魔力を有りったけ使い長さ20メートル、太さ電柱3本重ねたくらいのかえしのついたモリを叫びながら作っていく。


「たしかにドラゴン程でなくともチャクムムルアインはAランクのパーティーが数組一緒に狩る魔獣でござるが、某達ならばAランクの朱玉と蒼玉がおるゆえ少しの犠牲で勝てるでござる!犠牲はドリングス公爵家に仕えし某の役目でござる!」


 朱玉と蒼玉はチャクムムルアインの瞼を砕き自身の体も砕いた。



 ナイゼル達は目の前で朱玉と蒼玉の体が消え辺りに舞う翼が目にはいる。


「そんな」

「あいつら」

「う・そ」

「朱玉」

「蒼玉~」


 5人はその光景を見ていることしか出来なかったことに唇を噛み締める。


 そんな中、空からナイゼルに声が聞こえる。


「ナイゼル様ー!構えて下され!」


 声とともにドルマクの持つモリが朱玉と蒼玉が鱗と言う装甲を破った左目に突き刺さる。


「ナイゼル様!今でござる!このモリを狙ってくだされ!」


 目に突き刺さるドルマクの作った鉄のモリに雷を落とせば内部、特に脳にダメージを与えられ倒すことが出来るが、ナイゼルは攻撃を撃てずにいる。


「ドルマク速く離れろ!」


 ドルマクがモリから手を離さずにいる。


「それは出来ませぬ!某の魔力が足りず中心以外は砂鉄を土魔法でどうにか纏めているだけでございます!ゆえに、某が手を離せばチャクムムルアインにダメージを与えられるだけの雷に耐えられなくなるでござる!ナイゼル様!某ごとこやつを!」


「でも、」


「ナイゼル様!某、初めはなぜ公爵家とは言え三男なんぞに仕えなければならないのかと思っておりました。しかし、ナイゼル様のそばにいてあるじ貴殿きでんで良かったと思っております」

 

 ドルマクは口と鼻を覆っている布を空いている左手で口が出るまで下げてナイゼルを見据えながら言う。


あるじよ、最初で最後のお願いでござる!忍としては影でいることが誇りでござるが、一男として最後に一花咲かさせて頂きたくございまする!」


 産まれた時から公爵家の忍になるために育てられ自分を捨てて生きてきたドルマクは自由な冒険者になり自分と言うと存在を考えて最後は忍としではなくドルマクとして生きたいと心から思いを初めて言葉にした。


「・・・そ・んな・・・・」


 サクリスは涙を流しながら口元を抑えて膝から崩れる。


「うっぐ、落ちよ神の裁き!【ネメシスサンダー】」


 ナイゼルは泣きながら手を上げ振り下ろすと一軒家がまるごと入るくらいの太さの雷が落ちる。


「最後に損な役回り申し訳ござらん」


 ドルマクは雷が落ちる瞬間に笑顔で言ったその言葉が最後の言葉になった。

 


「グガガァァー」


 チャクムムルアインは内部を焼かれた苦しみに悶え吠えながら体を持ち上げる。


「テメーが生きてちゃいけねーだろが!【スラッシュ】」


 ロランドが鬼の形相で睨み付けながら鱗が無く攻撃が通る大きく開けた口の中に向け剣を振り魔力の刃を放つ。


「そうだ!このまま倒れろー!【スパーク】」


 スパークは威力はあるが遠距離にはむかない放電し続ける電撃の玉だ。


 ナイゼルは2メートルにもなる電撃の玉をロランドがつけたチャクムムルアインの口の切れ目へ放つ。

 そのまま吸い込まれるように当たりチャクムムルアインの中から全身を焼いていく。

 辺りに肉の焦げる匂いが立ち込めると吠えながら暴れていた動きが止まりゆっくりと後ろへ倒れていく。

 暴れられたことで結界の強度がさらに落ちたが耐え抜きチャクムムルアインが動きを止めたことで安堵が広がる。


 しかし、門とは逆に倒れていくチャクムムルアインの遥か後方からバランスボール大の水の玉が高速で飛んできて頭に当たり弾けて鱗を砕きその身を門の方へと押し倒す。


「なに!まだそんな力が残っていたのか!!」


 ナイゼルは魔力が切れて疲れが見えて肩で息をしている。


「クソッ!俺も打ち止めだ!」


 ロランドが悔しそうに睨み付けながら吐き捨てる。


 ナイゼル達からはチャクムムルアインの巨体の陰になり魔法が飛んできたことがわからず、ただ最後の力を振り絞り倒れる向きを変えたようにしか見えなかった。


「「「「「「「耐えてくれー!!」」」」」」」


 全員が想いを込めて叫ぶ。 


 チャクムムルアインの巨体が結界に倒れ掛かりバチバチと言うと音をたてゆっくりと弾きチャクムムルアインの体が横倒しになっていく。


「「「「「「や、やったぞー!」」」」」」」


 歓声が沸き起こる。



       カカーンカカーン!



 しかしその時、最初とは違う鐘の音に歓声を止む。


「お、おい!マジかよ!」

「なんで!?」

「もう、ムリだ・・・」


 歓声から一転、絶望の色を浮かべる。

 

「ロランド!頼む!」


 周りの様子を見て歯を噛み締めてナイゼルが叫ぶ。


「俺でいいのか?」


「俺の雷は海の方が効果的だからな。それに、後はサハギンだけで注意は色違いのキングぐらいだろ?何とかなるさ」


「それもそうだな」


 ロランドは剣を背負い直す。


「サミンとオリンもついていってくれ」


「もちろんよ!」


「行ってきま~す」


 3人は走り出す。


 カカーンという鳴らしかたは海とは間反対の陸側の門への強襲を知らせる音だった。


 3人を送り出してナイゼルが正面を見ると何かに引っ掛かったように倒れる途中で止まったチャクムムルアインに驚く。


「なっ!まだ死んでないのか!?」


 下を見るとサハギンやサハギンキングが倒れないようにチャクムムルアインを支えていた。


「邪魔だよ!」


 ナイゼルが雷撃を放ちサハギン達を一掃したと同時にチャクムムルアインの体が何かに貫かれ貫いたそれは結界を破り門を破壊した。


「なっ!」







 戦場になっている位置から遥か後方、人の目では認識出来ないほど遠くの海上に浮いている人形の者がいる。

 その姿は2メートルほどの大きさをしており、紺色の鱗を全身に纏って魚のような尾をしている所謂魚人だ。

 その魚人が腕を組み空に浮いて戦場を見ている。


「うむ、まさかチャクムムルアインが負けるとはあのお方の言う通り人間もなかなかやるな。しかし我が友バラーが人間に敗れたらしいがこの程度ならば油断しても負けんだろうな。相手は本当に人間だったのか?・・・・それよりも、あの結界は硬いなまさかチャクムムルアインの巨体を受け止めるとは、仕方無い我がやるか」


 魚人は家が2件ぐらい楽に入りそうなほど大きい水の玉を作り出すと、それを圧縮し始めてソフトボール大の玉を作りそれをチャクムムルアインの体で隠れている門へ目掛けて投げる。

 玉はチャクムムルアインの硬い鱗を易々と貫き結界と門を破壊した。




 破壊された門を見てボーゼンとしているとチャクムムルアインが倒れて水飛沫が壁の上まであがってくる。

 門を破壊された衝撃で倒れていたサクリスがナイゼルから離れた位置で立ち上がりナイゼルに向かって声をかける。


「イタタタタ、何がおこっ〔ズブリ〕・・・・・・あれ・・・・」


 サクリスが自分の体を見ると鳩尾の辺りから剣が生えていた。


「サクリス?・・・・・えっ!」


 玉の飛んできた魚人がいる方を見ていたナイゼルがサクリスの様子が変わったことが気になり振り返ると、サクリスの後ろに人の形をした白蒸気が光る目をナイゼルに向けながらサクリスの背中から両刃の剣を突き刺していた。


 人形の蒸気は結界が壊れチャクムムルアインが倒れて上がった時の水飛沫に紛れていた。

 普通ならば気配ですぐにわかるがこの敵は隠密を持っているうえ、こんな大規模な戦争中に魔獣が気配を消して何て考えないだろうと言う油断と、いつもは今は亡きドルマクが気配を調べていたためにナイゼル達は常に気配を探ることをしなくても大丈夫だろうと言う慢心から


「・・・ゴブッ・・ナイ・ゼル・・・」


 サクリスは口から血を吐き泣きながらながら手を伸ばす。


「サ、サクリス!サクリスサクリスサクリス!」


 サクリスが刺された光景に思考が止まり動けなかったナイゼルも

手を伸ばしながらよろよろと近付く。

 それを見た人形の蒸気がニヤリと笑う。


「やっ、ヤメローーー!!」


 ナイゼルが叫びながら急ぐがそれをあざけ笑うかのように不気味な笑顔を浮かべたまま剣を肩から抜けるようにサクリスの体を切り裂いた。


「・・・あ・・・・・・」


 サクリスは最後に一言だけ発して目から光が消える。


「・・・ウォォォ~~~・・」


 ナイゼルは魔力回復薬で回復した魔力を全て剣に込めて人形の蒸気を切り払っい左右に分かれそうなサクリスの体を抱き締めて抑える。


「・・・・サ・ク・リ・ス・・・サクリス!冗談はやめてくれよ、君の腕ならこんなケガすぐに治せるだろ!なーサクリス!・・・・サクリスーー!ドルマクはもういないそれに、君までいなくなってしまうなんて、ボクはボクは・・・・」


 もうなにも喋ることのないサクリスを抱き締めて泣きながらナイゼルはへたりこむ。






 門が壊される少し前、陸側の門の魔獣の侵攻を知らせる鐘の音が聞こえてナイゼルからそちらを頼まれたロランドは双子のエルフ、サミンとオリンと共に壁の上を走っていた。


「オラ!どけ!どけよ!どけ!」


「ほんっと邪魔よ!」


「どけどけ~」


 3人は人垣を掻き分けながら苛立ち混じりで叫びながら走っている。


「クソッが!人が多すぎるな、下の方が速そうだ!」


 ロランドが人が多いことに苛立ちをあらわにしながら、住人が避難したため閑散とする街を見ながら言い砂浜へ飛び降りる。


「あっ!ちょっとロランド!」


「待って~」


 慌ててサミンとオリンが飛び降り二人は風魔法を使いふわりと降り、ドーンと大きな音をたてながらロランドが着地する。


 ロランド達が着地すると パリーン ドガガーン と激しい音をたてて門が壊される。


「なっ!」


「うそっ!」


「あ~!」


 門が壊されると待っていたかのようにサハギンやサハギンキングが壁の中にある内海に雪崩れ込んでくる。


「おいおい!何があったんだよ!?」


「どうするのロランド!?」


「このままにしとくわけにもいかねーだろ!やるぞ!!」


「おお~!」


 ロランドは背負っているミスリルの両手剣のクレイモアを抜き右手に持ち、左手で赤黒く輝くアダマンタイトと、ラーヴァウォーカーと言う熔岩石でできた3メートル以上の大きさの人形ひとがたのBランク魔獣の素材から作られた両手持ちの大剣を抜く。


「いくぜゴラー!皆殺しにしてやるぜ!」


 二本の大剣を肩に担ぎ砂浜へ上陸するサハギン達に叫びながら突っ込んでいく。


「オォォォー!フン!」


 ロランドが右のミスリルの剣を振るうと直接斬られたサハギン以外にも後ろにいたサハギン達が数匹纏めて斬られている。

 剣に十分な魔力を溜めている訳ではないために壁の上で戦っていた時のような威力は無いがそれでもサハギン程度ならば数匹纏めて斬るぐらい問題なかった。


「ハアァ!」


 左のアダマンタイトの剣は魔力を込めても斬撃を飛ばすことは出来ないが、代わりに超高温の熱を帯びているために、その剣ででサハギンを斬ると切り口が黒くゴゲている。


「私だって!【クリミナルフリーズ】」


 サミンが右手を突きだし叫ぶと前にいる数匹のサハギンが凍りずけになる。


「パチン!クラッシュ!」


 サミンが指をならすと凍ったサハギン達が砕け散る。


「私もいくよ~【ツァールロスアイスベルク~】」


 オリンがしまらない口調で言うと細く尖った氷の山が無数地面から飛び出して、地面から飛び出した氷の側面からさらに横向きにつきだしてサハギンを次々と突き刺していく。


 そんな中サハギン達の後ろから2メートル程の大きさのサハギンキングが数匹現れる。

 サミンの攻撃はサハギンキングの腰まで凍らせるが表面をうっすらと凍らせるだけが精一杯でサハギンキングが軽く足を動かすとガカャンと音をたてて砕けてしまった。

 オリンの攻撃も下から来るものは勢いがつく前に踏み潰し目の前に現れる氷は横向きに飛び出す前に手に持つ太いモリを振るい砕いていく。


「サミン!オリン!ソイツ等は俺が殺る!二人は雑魚を頼む!」


 ロランドは二人の前に出て剣を構えて言う。

 二人は頷くと周りに残っている奴と次々と上がってくるサハギンに標的をしぼり倒していく。

 ロランドは二人が頷くのを見て走り出す。


「ウォォォー!」


「グギャーー!」


 サハギンキングがロランドに呼応して吠える。

 サハギンキングはゴブリンギング同様にBランクでロランドでも一対一ならばどうにか勝てると言うものだが今回は複数いるために分が悪かった。

 しかし、それはサハギンキングが水中にいることが前提であって、今回のように陸に上がってしまえば機動力が落ちて複数いてもロランドには問題なかった。

 サミンとオリンは二人で協力しながらならば倒せたが今回は複数いるうえに、サハギンがドンドンと上がってくるために動揺してそこまでの思考がつかなかった。

 

 ロランドが先に攻撃のモーションに入るとサハギンキングが持っているモリを盾に受け止めようと構える。

 ロランドが左のアダマンタイトに魔力を込めながら右から横一文字に振るうとサハギンキングのモリに触れた瞬間何の抵抗もなくモリを焼き切りサハギンキングの体を通り腹の辺りから上下に別ける。


「・・・ロランド・・・」


「えっ・・・えそ~・」


 サミンとオリンはサハギンを倒しながらもロランドの様子を伺っていてサハギンキングが斬られるところを目撃して驚きが隠せないでいる。

 いくらロランドが強くて剣が素晴らしくサハギンキングが陸上にいても一撃で殺すことなど、ましてや二つに切り分けることなど不可能な筈であった。



「ん~おかしい?ドルマクが死んだ頃から調子がおかしい?悪いわけではなくて、むしろ良すぎる?」


 ロランドは死んだサハギンキングを見下ろしながら呟く。

 ロランドは考えることをやめた。

 というよりもサハギンキングがそんな時間を与えるわけもなく、簡単に殺されるところを見ても気にもとめずに襲い掛かってくる。


 襲い掛かってくる奴を次々と切り捨てていく。

 サハギンキング達も多少学習して囮になる者や味方を盾にする者が出てくる。

 しかし、上陸した雑魚のサハギンを倒しきり後続がいないことを確認したサミンとオリンがサハギンキングの足を凍らせたり、氷の塊を飛ばして牽制したことでロランドは囲まれても危なげなく倒していく。


「ハアハア、こんなものだな、よし!行くぞ!」


 ロランドが走り出し囲まれないために壁際にいたサミンとオリンが追いかけようとしたときにサミンが後ろから突き飛ばされて前のめりに倒れる。


「イッター、ちょっとオリン!こんなときに何ふざけてるのよ!」


 サミンが砂を払いながら振り返るとそこにはオリンではなく大きな石の塊が砂浜を抉って壁に突き刺さっていた。


「えっ?オ、オリン?」


 石の塊がゆっくりと動き出すと叩きつけらた壁には潰れた肉があった。

 抉られた砂浜には赤い液体が溜まりすぐに砂に染み込んでいく。

 洋服であった筈の布や装備品からその肉がオリンであることがわかる。

 




 その時オリンは何気に横を見たときに振りかぶられ二人に向かって投げられたハンマーに気が付いた。


(うそ~!ムリ躱わせない!・・せめてお姉ちゃんだけでも!)


 ここでオリンは力いっはいサミンを押してハンマーの範囲から押し出した。


(良かった・・・)


 サミンが無事範囲から出たところを見たところでオリンの意識が消える。

 






「うそ、いや、いやいや、イヤーー!!」


 現実を見て頭を抱えて座りこみ泣き叫んでいるサミンの前で、石の塊に長い鉄の棒がついた両手持ちのハンマーを持ったサハギンキング(亜種)が凶悪の笑みを浮かべてハンマーを持ち上げて降り下ろそうとしている。


「あぁぁ・・」


 サミンは目に力なく見上げることしか出来なかった。


「くそったれがー!」


 降り下ろされる瞬間に走り戻ってきていたロランドが間に入り2本の剣を交差して受け止める。


 サハギンキング(亜種)はAランクの魔獣で平均ステータスが700程で、ロランドはAランクの冒険者の中でも強く平均400程あるがその差は歴然で力勝負ならば勝てるは筈がない。


「ハァァァー!!」


 しかし、気合いと共に腕が赤黒く変色してサハギンキング(亜種)を吹き飛ばす。


「・・・オリン・」


 潰されたオリンの方を見て歯を食い縛る。


「サミン、おい!サミン!」


 亜種の警戒を怠らずに一歩下がり右手の剣を地面に突き刺して腰を落として空いた右手でサミンの肩を掴み揺らす。

 

「あぁぁ」


 サミンは自分の体を抱き締めるようにうずくまり震えるだけでロランドの声が届いていなかった。

 仲間が死ぬことは理解していたが実際に目の前でそれが起こり、しかもそれが大事な人だと、覚悟をしていても耐えられなかった。


「・・・・チッ!・・・テメーだけは許さねー!」


 その言葉と同時にロランドの体が腕と同じく赤黒く変色して、目は白目の部分が黒くなり、黒目が赤く光出す。


 ロランドはドルマクの死を見た時から新な特殊スキルが発現し始めていて、ロランドの中でとても大事なオリンが死にサミンが壊れると言うことを見た時に感情が限界を超えて《鬼化》と言う特殊スキルを取得して発動した。


《鬼化=取得条件不明。感情がある一定を越えると発動する。発動すると体が変色して基本レベルとLUC、MP以外の元のステータス内にある数値が2倍になる。発動中はHPが徐々に減っていく。感情が落ち着くと自然と解除される》


 ロランドは立ち上がり肩越しにサミンを一瞥すると剣を掴み走り出す。


 亜種も自分が飛ばされたことに驚いていたがすぐに冷静さを取り戻しハンマーを肩に担いで構えて迎え撃つ。

 

 降り下ろされるハンマーを左で受け止め上へと弾き空いた腹に右を横凪ぎに斬りかかるが亜種は柄を引き戻して受け止めた。

 ロランドは魔力が底をついており険に魔力を込められずただの力勝負をするしかなかった。

 しかし、ただの力勝負でもステータスが高くなったことを知らなくても今ロランドには不安がなかった。


 攻防はロランドの優勢に傾き亜種は守ることが精一杯で、鬼のように連撃を放つロランドの攻撃を防ぎきれずに小さな傷を作り徐々に亜種のHPが削られていく。


 ロランドには亜種が雑魚に感じていた。

 それは《鬼化》の力でステータス内の数値、つまりレベルのあるスキルのレベルが限界を超えて倍になっている。

 そのため元々剣スキル4だったロランドの剣スキルがレベル5の限界を超えてレベル8になり、亜種がどれだけスキルのレベルが高かろうと今のロランドには問題にならなかった。


「テメーは死んでろー!」


 2本の剣を左右に交差するかたちで気合いと共に振るわれたロランドの攻撃によって防ごうとしたハンマーは柄が亜種に斬りながら吹き飛ばした。


「グググギガガガ」


 亜種は後ろに飛ばされて数回転がり一緒転がされた柄の折れた石の塊に手をつきながら立ち上がりロランドを睨み付ける。


「ハアハアハア、」


 ロランドも《鬼化》の影響で体力が減っていくうえ、あれだけ激しく動いたために剣を支えに肩で息をしていた。


「グギ!クギャギャギャー!」


 亜種は共に上陸したが戦いの激しさで動けずにいたサハギン達に叫ぶ。

 するとサハギン達は持っていた三ツ又の槍を投げようとする。


「ハアハア、サハギンごときの攻撃なんぞ簡単に防げるわ!」


 防御のために剣を構えようとするが亜種の口角がニヤリと笑うのが見え、異様な不安にかられ急ぎサハギン達を見るとその穂先が向いているのが自分でなく今だに方針状態で動けずにいるサミンに向けられていることに気付く。


「なっ!ヤメローー!!!」


 ロランドは戦いの中で回復した魔力を右手の剣に込めて投げつける。

 剣は高速で2匹のサハギンを串刺しにして地面に突き刺さり魔力の刃が周りのサハギン達をすべて切り裂いた。


「ハアハア、ふざけんなよー!っ!」


 ロランドが怒りを露にして振り返ると亜種は近くに落ちていたサハギンキングのモリを投げようとしていた。

 狙いは勿論サミンだ。

 亜種はロランドを倒せないと感じてせめて1人だけでもと動かずにいるサミンを狙っていた。


「くそったれがー!」


 ロランドは左の剣を投げるが当たる前に亜種もモリを投げた。

 ロランドは剣を投げたときにすでに走り出してギリギリのタイミングでモリとの間に入りサミンを庇うように抱き締める。


「グフッ!クッ!大丈夫かサミン!」


 モリの威力は強かったが強化されたロランドを突き抜けることはなくロランドに突き刺さり止まった。


「あ、あ、ああ、〔ズブッ〕・・・」


 サミンが何かを言おうと顔をあげるとモリがロランドの体を突き抜けサミンの頭に刺さり突き抜ける。


「ゴブッ!な、なんだ!」


 背中に受けた衝撃にロランドが首を亜種に向け振り返ると、何かを投げたかたちで胸に剣を刺した状態でこと切れていた。


 亜種はモリを投げた後ロランドの剣が胸に刺さりながら柄が折れた石の塊を最後の力でロランドに刺さっているモリの柄頭に向けて投げていた。

 投げられた石の塊は見事に命中してロランド体で止まっていたモリがロランドを突き抜けるながらサミンの眉間を貫いていた。


 何が起こったか理解したロランドの腕のなかで力無く垂れる腕や体の重さを感じてサミンを見る。


「サ、サミン、サミン!くそーがー!」


 ロランドは動かなくなったサミンを強く抱き締めて壁にもたれ掛からせる。

 サハギンのところでミスリルの剣を回収して、既に死んでいる亜種のところまで行くと剣を抜き歯を食い縛りながら亜種を細切れに切り裂いてサミンのところまでもどる。


「サミン、オリン、護れなくてゴメン」


 二人に頭を下げて荷物から回復薬を探す。


「魔力回復薬しかないか、・・・まあ良いか」


 薬を飲みながら壊れた門の方を見る。


「それにしても、サハギン達が来なくなったな!?」


 その時、空が暗くなり無数の黒い雷が海に落ちる。


「っ!黒い雷!?・・・・・・ナイゼルなのか!?」


 黒い雷と言う見たことのない攻撃に魔獣側の攻撃かと思ったが、壁ではなく海に落ちたので味方の攻撃であると思い、味方の中で雷魔法を使えるのはナイゼルだけだと言うことでロランドはなんと無くそう思った。


「・・・上でも何かあったか・・・すまんナイゼル行ってやることはできねー・・・ゴブゥ!」


 ロランドは胸に空いた孔を筋肉を絞めることで多少塞ぎ、まだ少し漏れる血を剣を背負い直して空いた左手で抑えながらナイゼルがいるであろう場所を見上げながら言う。


「・・・そっちは任せた。・・・俺もやるべきことをやる!」


 そう言いながら今だに鳴り響く雷の中で荷物から赤い少年野球のボール大の魔玉石を持ち決意した顔でサミンを見る。


「サミン、オリン、俺はまだやることがあるから向こうで少し待っててくれ」


 そう言うとキズを抑えながら陸の門へ歩き出す。







 その頃、陸側の門ではサハギン達の第一陣をどうにか退きナックラヴィーを含む迫る第二陣を見ながらギルドマスターが声をあげている。


「矢はもう無いのか!」


「殆んどは海側に廻してしまい今あるだけです!」


「くそっ!今まで陸と海の両方からなんて無かったのになぜ今回は同時に仕掛けて来るんだ!魔獣にそんな知能があるのか!?」


 ギルドマスターがだんだんと近付く魔獣の2陣を睨み付けながら言葉を吐く。


「魔獣ではなく魔人が指揮をとっているのかも知れません」


「魔人だと!?」


 後ろからかけられた言葉に驚きながら振り向く。


「ええ、報告があったでしょ中央大陸のロンペイと言う都市の侵攻は魔人が関与していたと」


「あ、ああ、と言うよりフローリア、何だその格好は!?」


 フローリアは十数本のダガーを足や腰それに背中にも収納できる革の鎧を身にまとい立っていた。


「何って、私の装備じゃない。忘れたの?」


「いや、覚えているが・・・ 」


「十年ぶりに着てみたけどピッタリね。あの頃からスタイルが変わってなかったのね。手入れを怠らなくて良かったわ」


 冒険者を引退した時の格好をしたフローリアは満足げに自分を見ていた。


「まさか、お前も戦うのか!?」



「ええ、もちろんよ」


 顔をひきつらせてギルドマスターが聞くとフローリアは平然と頷く。


「今回は危険なんだ!いつもと違うんだぞ!わかってるのか!」


「わかってるわ!今回は危険だから、いつもと違うからこそ戦いに来たのよ!1人でも多く戦える人が必要でしょう!そんなときに戦えるのに安全なところで隠れているなんて出来ないわ!」


「そ、それでも、」


「それに私だって貴方と共に戦った元Bランクの冒険者よ?その辺の小僧や小娘にはまだまだ負けないわ!」


 そう言うと向きを変える。

 そこには鐘の音を聞いて海側では出来ることがなくなりナイゼル達に任せて集まっていた冒険者や兵士がいた。



「このままでは門を破られ私達の街を蹂躙されるのは目に見えてあきらかよ!門の外に出て迎え撃たなければもう私達に勝ち目はないわ!勿論、危険も多い、それに、あの数を相手にすれば無事ではすまないでしょう!私は元Bランクの冒険者として、冒険者ギルドの職員として、この待ちに住みこの街を愛する者として、この街を守るために迎え撃ちます!私は所詮1ギルド職員です。何も見返りを用意することは出来ません!それでも皆さんの力と命を私のためではなく皆さんが愛する者のためにかけて私と共に戦ってください!お願いします!」


 暫くの沈黙が起こりあちこちから


「俺だってやってやる!」

「私だって!」

「フローリアの姉貴!サイコー!」

「御姉様カッコいい!」


 ポツポツ聞こえた声がいつの間にか歓声になっていた。


「皆の勇気確かに聞いた!では、共に行くぞー!」


 「「「「「オオー!」」」」」

 

 フローリアを先頭に遠距離で支援できる魔術師や弓兵を残して階段を下りて門を出てテキパキと陣を組んでいく。


「ハァー、アイツは昔から人を乗せるのが上手かったな、どれ、俺も行くか」


 そう言ってギルドマスターは最後尾についていく。


「ドルゲイン貴方まで来てしまったのですか?はぁ、指揮官が前線に来てどうするのですか!?少しはその足りない頭で考えてはいかがですか?」


 フローリアは溜め息をついて悪態をつくが顔がすごく嬉しそうだった。


「そう言うな、昔みたいにお前の横に居たかったんだよ。それにな、死ぬときは同じ場所が良いだろ!?」


「ハァー、これだから変態は困ります。・・・でも、最後にドルゲインと共に戦って死ぬのは悪く無いですね」


 二人は赤くなりながら笑顔で向かい合う。



 陣が完成と同時に地上からでも敵の姿が見えるようになる。


「全員生きて門をくぐるぞ!」


「「「「「オオー!」」」」」


 その掛け声と共に戦闘が始まり乱戦となる。

 サハギンが先頭で来たために始めはおしていたがここでナックラヴィーが現れる。


 ナックラヴィーは走り回り砂埃を上げていく。

 そこで人間側は砂埃に紛れて門を破られると思い門の周りに集まろうと無理に移動し始めると、それを待っていたかのように後方にいる回復役を殺して回る。

 回復魔法は攻撃魔法と違い遠距離では意味がないため下に降りていた。

 最悪なことに上は攻撃が届かないから大丈夫だろうと全ての回復役が下にいた。

 

 回復役は後方にいて前衛が守っているが砂埃の混乱の中で前衛がいち速く察して動き出したために、後衛が反応が遅れついていけず距離が出来てしまいそこを狙われた。

 中には前衛が対処したパーティーもあったが数体のナックラヴィーに囲まれてなすすべなく殺されていく。


 壁の上の魔術師達が懸命に風魔法で砂埃を飛ばしているが門の側が限界で戦場全てをどうにかするのは無理だった。


 そんな中フローリアは元は斥候だったので視覚だけに頼らず全ての感覚をフルオープンにして戦場を走り回りサハギンを一撃でしとめて、ナックラヴィーに後ろから飛び掛かり攻撃をあたえて反撃が来る前に位置を移動して、また飛び掛かりを何度も繰り返して倒していく。


 対してギルドマスターのドルゲインは義足のために動かず、手甲の拳の先に三日月を横にした形の刃を付けた武器をつけてファイティングポーズをとっている。

 そして、砂埃の中から急に現れるサハギンを軽く殺して、ナックラヴィーの攻撃を上半身だけで躱わして隙をついて一歩踏み出し刃の付いた拳で首を切り裂いていく。


 そんな攻防を続けていき砂埃をあげるナックラヴィー達が減り視界が戻っていくと、冒険者や兵士はほぼ全滅していた。

 辺りを見回しているドルゲインは門の付近で目撃した。


「あらあら、私が誘い込まれるなんてブランクは怖いわね」


 フローシアはいつの間にか4体のナックラヴィーに囲まれていた。


「フローリア!」


 ドルゲインは足にただならぬ魔力を溜めてそれを爆発させるように、その場に残像を残して超高速でフローリアの元に行く。


 かつて速さで敵を撹乱して戦いその速さの中でいつも寂しそうに1人でいる彼女に追い付きたくて、彼女のいる場所に立ちたくて、彼女と肩を並べたくて、努力を重ねていつの間にか彼女を追い越して、彼女のために努力したその速さから〈影置き〉と呼ばれていた。

 しかし、片足を失いその二つ名は失われていたが、今、飛び出した彼はまさに二つ名に恥じない速度だった。


「ウォォォー!」


 ドルゲインは勢いのまま車線上にいた一体を斬り弾き、義足ではない足の方で着地して同時に裏拳でもう一体の首を飛ばすと勢いで義足が砕けたため片足でバランスを崩して倒れる。


「クッ!フローリア!道は出来た君だけでも逃げろ!」


 しかしフローリアは首を横に振るう。


「この足ではムリよ。昔のようにはいかないわね。それに、最後は貴方と共に」


 フローリアの足はブランクで無理をしたために疲労骨折していた。

 突然現れたドルゲインに驚き動きを止めていた2体のナックラヴィーが戦斧を持ち上げる。


「フローリア、愛してる」


「ふふ、知ってる。始めて言うけど私も愛しているわ」


 二人はお互いに抱き合って覚悟を決め戦斧の一撃を待ったが一向にその衝撃が来なかった。

 

「お二人さん、大丈夫かい?」


 その声の主を見ると見た顔だが体と目が変色している男がに2体のナックラヴィーの上半身を斬り裂いていた。


「ロランドなのか?その姿は、」


「話しをしている時間が無い。生きている奴全員門の内側に行ってくれ!まきこんじまう!」


 ロランドはドルゲインの言葉を遮る。

 

「回ふ、」


 ドルゲインはロランドのケガを見て回復した方がと言おうとしたが、すでに回復役をは全て死に回復薬も底をついているため言葉を飲んだ。

 そして、感じるロランドの強さに自分達が足手まといになることがいたいほどわかる。


「・・・わかった。後を頼む!終わったらおごらせてくれ!」


 その言葉にロランドは頷かなかった。

 それを見て何も言わずに二人は落ちている戦斧を杖代わりにして門へ歩き出す。

 二人のいた場所は門から程近く他の冒険者達が迎えに来て手を取り合い門へと入ると門が閉められる。


「おい!まだロランドがいるんだぞ!」


「ロランド殿の指示です!全員が避難したら門を閉じろと!そして、壁の上の者も下に降りていろと!」


 次の瞬間ズドーンと門を揺らす程の大きな音がした。

 門の前に集まっていた者達は急いで階段を駆け上がる。




 ロランドは近付く魔獣を切り捨てながら敵陣の中心まで歩いていく。

 強化されたロランドにはナックラヴィーとて一撃で終わる雑魚でしかなく悠々と歩く。

 中心まで来るとズボンから赤い魔玉石を取り出す。



 昔に魔玉石を手にいれたロランドは派手な魔法が使いたいとドルマクに火魔法をいれてもらったが使おうとした時にサミンに止められた。


『ちょっと待って!何の魔法をいれたの?』


『〔エクスプロージョン〕』


 エクスプロージョンとは火魔法の中でも爆発系と言われる強力で派手な魔法だ。


『あのねー、火魔法は魔玉石にいれると暴走しやすいの!特に爆発系なんて暴走するに決まってるじゃない!』


 ロランドが驚いた顔でドルマクを見るがドルマクも驚いた顔で首を横に振るう。

 サミンは頭を抱える。


『いい!絶対に使っちゃダメだからね!てか!捨ててきなさい!』


『暴走ってどうなるんだ?』


『そうねー、自分と周らを巻き込んで大爆発ね!』


『マジか!?』


『ほんとだよー』


 サミンが頷きオリンが肯定する。

 そのままロランドの荷物の奥に仕舞われていた。



 ロランドは昔を思い出して涙をこぼすと自然回復と魔力回復薬でほぼ満タンになった魔力を全て魔玉石に注ぐ。


「サミン!オリン!今行く!」


 そう言うと魔玉石が臨界点を超えて暴走して全ての魔獣を巻き込んで大爆発して大きなクレーターを作った。




 ドルゲイン達は爆発の跡を見た。


「終わったのか、」


「そうなのかしら?」


 全員が喜びの声が上がり二人が抱き合った時に激しい衝撃が襲いその場にいた全員が死んだ。








 ロランドがサハギンキング(亜種)を倒した頃海側の壁の上でひとしきり泣いたナイゼルが立ち上がり雷を落とす。

 しかし、今までとは威力から何から違う力を使った。

 その雷は魔力で産み出した雷にHPを上乗せすることで威力が倍以上になり色が黒くなる。


「ウァァァァーー!!」


 そんな命を削る技をナイゼルは壊れたように使い続けている。

 周りの冒険者も危険なんじゃないかと考えるがナイゼルの狂喜に近付けずにいた。


 そんな攻撃を何十発も放ち海にいる魔獣を全て倒したがすでに限界のナイゼルは肩で息をしている。


 そんなナイゼルの目の前に紺色の鱗をした魚人が拍手をしながらナイゼルの目の高さに浮いていた。


「素晴らしい!まさか全滅するとは!」


「ハアハア、だ、誰だ!」


 ナイゼルはどうにか声を絞り出す。


「申し遅れた!我はオアンネス!ソナタ等が魔人と呼ぶ者の末席に居るものだ!」


 魚人は丁寧に頭を下げて挨拶をする。


「魔人!」


 ナイゼルだけでなく他の者も驚愕の顔をしていた。

 すると後方の陸側の門の方から大きな爆発音が響いた。

 ナイゼルは何故だかそれがロランドだと感じていた。


「ホホウ、向こうも全滅か!素晴らしい!しかし、我はあるじよりこの街を滅ぼせと仰せつかっているために退くわけにはいかない。ゆえに、これだけ健闘した主等を称えて我の最強の技で痛み無く一瞬で逝かせてやろう!」


 オアンネスが片手をあげると巨大な黒い塊が出来上がる。


「食らうがいい!〔インフィニティインパクト〕」


 オアンネスが手を下に振るうと黒い塊が街に落ちて衝撃が広がりナイゼル達外にいた者達はその衝撃波によって消し飛ばされた。

 シュナードの街は一瞬で瓦礫に変わった。


「最初から我がやれば速いのだが最後まで手を出すなと言われているから仕方がないか」


 オアンネスはそれを見て呟くとその場から飛び去っていく。

 シュナード編は終わりで次回からは通常のトワの方に戻りたいと思います。

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