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魔人?

 

「止まれ!何者だ!」


 そこは冒険者や兵士がテントなどを張っている野営地だった。

 トワ達がそこに近付くと見張りをしている兵士に止められた。


「俺は冒険者のトワと言います。王都に用があってペルイトから来たのですが、何があったのですか?」


 そう言いながらギルドカードを見せると、


「突然に街の近くの草原に大量の魔獣が現れたんだ!・・・・・!!Aランクのトワ!まさか、貴方があのドラゴンを倒した《剣神》のトワ殿ですか」


 急拵えの野営地でもギルドカードを調べる簡易的な設備を用意していたらしく驚いていた。

 その声に気付き近くにいた他の兵士や冒険者がトワ達の方に注目が集まり騒ぎ出してしまった。

 そんな周りを無視して話しを続ける。


「なぜ後ろから奇襲をかけないんですか?」


「ここにいるのは全部で100人程しかいなのです。それに対して魔獣の数はざっと見ただけでも一万はいると思います。100対10000ではいくら奇襲をかけても意味がありません。それに、我々は補給物資の運搬と現状の確認のために来たため、ここにいる冒険者の殆どがランクCかDなのです。魔獣の中にはオーガやグールそれにゴーレムまでいるので今の戦力では直ぐに全滅してしまいます」


 オーガはBランクで、3メートル位ある全身黒い色をした頭に角がある鬼だ。

 グールもBランクで、2メートル位ある二足歩行のブタで、オークに似ているが顔が醜く腐っている。

 ゴーレムはAランクで、大きさは2メートルから5メートル位の石で出来た人型の化物だ。



 それでも、死ぬ覚悟をして冒険者や兵士になったのではないのかと不快感をあらわにし声を荒げて聞き返す。


「ここは大規模な侵攻を想定していない都市だろ、早く補給物資を渡さなければ矢や回復薬が尽きて落ちるぞ!」


「我々にもそれはわかっています。しかし、」


 兵士達や冒険者が苦虫を潰した様な顔になる。


「まさか、兵士や冒険者ともあろうものが恐怖に負けて一般人まで見捨てるつもりですか!?」


「違う!」


 その場にいるトワ達を抜いた全員が歯を食い縛りながら強く否定する。

 トワはそんな奴等に何か理由があるのだろうと思ったが、行動に移していない事は事実なので、強気で否定した事に少し呆れながら話を続ける。


「何が違うだ!今現在、なんの行動もしていないのは事実だろ!」


「違う、違うんだ、俺達だって.....」


 全員が悔しそうにしているのを見ていて気が付いたが、よくよく見れば戦闘に参加をしていないはずの冒険者の何人かが怪我をしていた。

 トワは不思議そうに確認していると野営地の奥から一人の男が出てきた。


「その位にしてはもらえんか?」


「「「「「「隊長!」」」」」」


 その男が出てくると兵士達が敬礼をする。


「ここの隊長ですか?」


 この現状を作っている元凶かと思い苛立ちが声にのる。


「私は隊長のロナードと言う」


 トワの苛立ちがこもった声に動じない。


「では、貴方が待機の命令をしているのですか?と言うか何故、冒険者までそれに従ってるんだ!」


 トワは自由な筈の冒険者が自分の判断で動いて無いと言う事が苛立から声を荒げだ。

 

「すまない。冒険者の方々も決して自分の命惜しさに動かないのではない」


「それは、どう言う事ですか?」


「・・・実は、自分の功を欲した貴族が指揮をすると出てきまして補給物資を全て持っていかれました」


「貴族がこんな危険地帯に来たのか?」


「最初の報告では、ゴブリンとオークが攻めてきたと言う事でして、それならば今の戦力でも物資を届けるだけならば楽だと思ったらしく出てきたのです。しかし、実際はゴーレム等もいて無理だと早々と見切りをつけて、物資を抱え込んだまま明日の朝に来る予定の王都からの援軍を待つために陣を組んでテントに引っ込んでしまったのです」


 ロナードは野営地の真ん中にある大きなテントを指差した。


「だったら取り返せば良いだろ?」


「我々兵士は国につえているので国の重鎮である貴族には逆らえません」


 トワはこの状況でそんなことが関係あるのかと少し呆れた。


「なら、冒険者が取り返せば?」


「貴族はBランクの冒険者6人を護衛として雇ってるのです。冒険者達が取り返えしに行きましたが奴等は強くて我々ではどうする事も出来なかったのです」


 そう言うロナードも打ち首覚悟で取り返えしに行ったらしく腹部から出血していて着ている服がだんだんと赤く染まっていく。


「隊長!まだ寝ていてください」


 兵士達が支えようとするのを振り払いロナードは地に膝をつきトワに対して土下座をする。


「恥を忍んでお願いいたします。どうか、物資を取り返していたたけないでしょうか?取り返していたたければ後は私共が命に変えても届けて見せます!」


 ロナードや兵士だけではなく冒険者達までも土下座をして頭を下げている。

 何故彼等が動かないのか、いや動けないのかそして、自分達が出来うる事をしていた事を理解したトワは先程までの自分の行動を詫びる。


「何も事情を知らない俺が勝手な事を言い皆さんを侮辱してしまったことを詫びます。すみませんでした」


「貴方が謝ることは何もないです。我々が不甲斐ないばかりに街を危険にしているのですから」


 話を聞いて貴族もだが護衛をしている冒険者にも苛立つ。

 トワは物資は取り返すにしても貴族や護衛をしている冒険者をどこまで手を出して良いかをロナードに聞く事にした。


「その冒険者と貴族は殺しても問題はありませんか?」


 少し過激な発言だがのんびりしている暇は無い事がトワの苛立ちを加速させる。

 トワはドラゴンと戦った時も思ったが自分にこんなにも人助けをしたいと言う心があることに驚いてもいた。


「冒険者の方は都市の中では無いので全く問題ありません。貴族の方は今回の行動は明らかに常軌を逸脱した行為です。貴方の正当性をここにいる全員が証言します」


 何か凄い期待や希望のこもった目をして全員に頷かれた。

 いつの間にか貴族達を除いた全員がトワに対して頭を下げていた。







 殺しても良いなら楽だと考えて貴族達のいるテントに向かう。



 テントの前に来ると男達がトワの前に立ち塞がる。


「貴様、何のようだ!ここはロッテン様のテントだ用がなければさっさと帰れ!それとも、そこの女二人を献上に来たのか?」


 と、いやらしくニヤつきながら喋りだす。


「黙れ!さっさと補給物資を返せ!」


 アイリとリーネ対していやらしい目が気に食わず言葉に少し怒気を混ぜると少し怯みながら男達の先頭にいる奴がまた喋りだす。


「ガキが!俺達をチーム《月光》だと知っていてケンカを売ってるんだろうな!」


「ぶっ、はははは!」


 トワは吹き出して笑ってしまった。

 何故なら相手が全員がハゲいるからだ。


「何がおかしい!」


「全員の頭からとったのか?名前」


 トワ達は気にしていたらしくキレて武器を取り出した。


「ガキが!お前は殺してやる!女二人は俺達で楽しく使ってや・・・・ひっ!」


 この手の奴はどうして同じ事を言うのか考えながら気絶しない程度に威圧の波動をかけた。

 何故気絶させないかと言うと、物資の場所を聞き出すためだ。

 貴族に聞けば言いかとも思ったが貴族が場所を知らない可能性があるうえ、もし威圧で殺してしまった奴がアイテムボックスに入れていたら最悪なので手加減をした。


「まだ名乗って無かったな。俺は《剣神》のトワだ!補給物資は何処にある」


 トワの名前を聞いて更に怯え逃げようとするが腰が抜けているため動く事が出来ない。

 怯えるだけで何も答えない先頭の男の肩に手を置いてステータスを奪いながらもう一度聞く。


「補給物資は誰が持っている!」


 既に鑑定で後ろにいるローブを着た魔導師の様な男がアイテムボックスを持っている事を知っていたが本当にそいつが持っているかの確認のために聞いた。

 すると、ローブの男以外がその男に滞対して震える指でさした。

 その男が持っていることが確定したので全員のステータスを奪い殺した。

 

 そのあとテントを潜るとヒョロイいかにも貴族と言う感じの男が女を連れ込んでいた。

 どうやらさっきのハゲに返り討ちにあった冒険者の女や逆らえない女兵士だ。

 

 貴族の男ロッテンがこちらを向き叫び出した。


「は、な、な、なんだ貴様は!《月光》の連中はどうした!」


「俺が殺した。俺はAランクの冒険者《剣神》のトワ、お前を殺しに来た!」


 ロッテンは怯えてテントの端までみっともなく逃げた。

 トワはゆっくりと追い詰める。


「な、何故だ!私が何をした!」


「何もしなかった事が罪だ!貴様のせいであの街の住人が何人死ぬと思ってんだ!」


「あんな国にも属さない街の住人などいくら死んでもしるか!居なくなったのならば今度は国が仕切る街を作り直せば良いのだ!何故女王陛下は街の全権を冒険者ギルドに譲渡してしまったのか!」


 何か今、以外と重要な事を喋っていたようだが今のトワには聞こえてなかった。


「クズが!貴様の様な人の痛みがわからん奴はさっさと死ね!」


 そう言うと、ロッテンの頭を掴み少ないステータスを奪いながら剣を刺し殺す。


 ロッテンを殺してから全裸の女性達が倒れているベットを見ると全員生きているようで安心していると後ろからアイリに目を強めに抑えられ。


「目、目に、アイリ、目に指が入ってる!痛い!」


「トワ様の目がイヤらしいです。」


 女性達が着替え終わるまで指でグリグリされた。

 そのあと全員に回復魔法をかけてから皆の元に行く。

 着替え終わった女性達を見るが虚ろな表情の彼女達に何で声をかけていいかわからないトワは彼女達をテントに残してアイリとリーネに声をかけて外に出る。




 外に出るとテントの前に兵士や冒険者達が集まっていてロナードが前に出てきて頭を下げる。


「ありがとう、本当にありがとう。後は私共が」


 そう言うロナードの言葉を止めて、


「このまま俺達が行きますよ。ついでに魔獣を倒しながら」


「しかし、」


 ロナードの肩を叩いて全員を避けて街に向かう。


 途中にアイリには補給物資が入っているアイテムボックスを渡してリーネには何もないアイテムボックス渡して作戦を話す。


「俺が魔獣を威圧しながら道を作って行くからアイリとリーネは後に着いてきて、それでもし強い奴が来たら俺が戦っているあいだにアイリは街に行って物資を置いてきて。リーネはアイリと一緒に行ってアイリの補助をして」


 アイリが首を振る。


「嫌です!私もトワ様と一緒に戦います」


「私もです」


 アイリもリーネもそうだが、アイリは特にずっと一緒に戦う為に力を貰ったのにまた手伝えないのが嫌だった。

 その事に気付いたトワは二人の頭を撫でる。


「勿論一緒に戦ってもらう。だが、物資はさきに届けなければならないから、物資を置いたら周りの奴等を倒してくれるか?」


「「はい!」」


 嬉しそうな二人を撫でながら少し歩くと戦場に到達した。


 




 トワは早速威圧の波動アイリやリーネに影響が無いくらいでかけた。


 いくら範囲を決められてもその周囲にも多少は影響がある。


 すると、気絶や震えてうずくまる魔獣で道が出来る。

 それを歩いていくと2体のゴーレムが道を塞ぐ。


 ゴーレムは魂が無い物なので威圧が聞かなかったらしい。


 トワが攻撃をする前に後ろからアイリとリーネが走りだしていた。

 アイリは素早くゴーレムの後ろに行くとゴーレムは隠密があるアイリを見失った。

 アイリはゴーレムを駆け上がり首に短剣を突き刺した。

 短剣には魔力を込めているため攻撃力も強度も上がっているので折れずに刺さった。

 更には魔剣のため刺した場所からゴーレムが凍りだして倒れると粉々に砕けた。



 リーネの方は倒れている魔獣を足場にして足に魔力の溜めてゴーレムに向かって飛び蹴りする。

 ゴーレムはそれを防ごうと腕を上げるがリーネの蹴りに砕かれた。

 蹴りの勢いは殺されずに、そのままゴーレムの頭を蹴り砕いた。














「ハハハハハハ!見たか?また俺の勝ちだな」


 魔王城にラボラスの笑い声が響いていた。


「主様かち~」

「主様かち~」


 しかし、ヨトゥンは落ち着いていた。


「ラボラス様が、あの人間が近くにいることを隠していたのは知っていました。なので、保険をかけています」


「ほ~、保険とな、それはなんだ?」


「ほけん?」

「なんだ?」


 ヨトゥンはニヤリと笑う。


「下級の魔人を一人、統率役で送ってあります。勿論戦いには必要ならば参戦しろと行ってあります」


 ニーズヘッグが椅子の肘掛けを叩いた。


「ヨトゥン!それは卑怯ではないか!」


「貴様とて前回ダークドラゴンを使っただろ」


 ニーズヘッグは賭けの勝ち負けよりも自分が前回負けた原因のトワが魔人にとは言え簡単に殺されるのはプライドが許せなかった。


「それで、その魔人はどの程度の実力だ?」


 ラボラスがヨトゥンに聞いた。


「じつりょく?」

「じつりょく?」


「魔人とは言え下級なのでダークドラゴンより少し強いくらいです。」


 ラボラスは腕を組み少し考えて、


「確かに俺も意図的に情報を隠していたからな・・・良いだろう」


「いいだろ~」

「いいだろ~」



「ふっふっふ、ラボラス様はやはり話がわかる」


「さて、続きを見るか」


「みる~」

「みる~」








 トワ達が戦場を半分くらい過ぎた頃に大声が響きわたる。


「貴様ら~!何をしとるか~!さっさと戦え!」


 すると、トワは威圧を消していないのに魔獣達が動き出した。









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