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宣言?

「まあ、そうだな。とりあえず座ってくれ。」


 トワは叫んだ勢いで立ち上がってしまった。

 そんな俺の反応に対して、レイシャは冷静に対応した。


「すいません、取り乱しました。てかなんで、わざわざ王がギルドを通すんですか?使者でも寄越して召喚状でも持ってくれば良いのに?」


「お前は顔も知らない者に、私は王でお前に会いたいから王都まで挨拶に来いと、上から言われて喜ぶか?」


 トワは少し考えて、


「嬉しくは無いですね。いくら相手が王様でもイラッとしますね」


 レイシャはトワの答えに苦笑いをする。


「それにだ、冒険者ギルドはどこの国にも属さない独立の組織なんだ。ギルドに登録している者は全員どこの王であろうと命令が出来ない事になっている」


「へー、国を相手に凄い力ですね」


 レイシャは軽く首を振る。


「力ではなくて、これは国と冒険者ギルドの契約なんだ。

冒険者ギルドは国から独立組織として認めてもらう代わりに、魔獣の侵攻があった場合は最前線で戦うんだ」


 勿論、冒険者ギルドだけではどうにもならない時は国軍が動くが、国軍は数はいるが安全な城内で訓練だけで、まともに魔獣と戦った事がない奴等ばかりだ。


「そんな話は最初の説明でされてませんよ?」


 レイシャは一瞬キョトンとして、笑いだした。

 するとトワの横にいたアイリがトワに耳打ちした。


「この国に住んでいる人は皆が知っている常識なんです」


 アイリの話だと国の成り立ちや、冒険者ギルドの結成などは子供に読み聞かせる絵本になっているらしい。

 それを聞いて、慌ててギルドマスターに、


「いや、その、新人も強制で前線に出されるのかとかを聞いてなかったな~って、」


「あ、ああ、その辺は強制召集を掛ける時にランクいくら以上として、それ以下は自由参加だ」


 レイシャが一瞬、不思議そうな顔をしたが俺の咄嗟の質問で納得したらしい。


(アイリに俺は常識が疎いから色々と教えてくれる様に頼んでおいて良かった。本当に納得したかは判断しづらいがまあ、いいか)


 

 出身が異世界とかバレると面倒事に巻き込まれそうなので隠す事にしている。

 アイリにも言わないで、それとなく異世界って言葉を知ってるか聞くと、勇者の物語に出てくる勇者が別の世界から来る事が多いらしい。

 しかも、千年前に異世界から勇者が来て魔王を倒したとか、その子孫が何処かにいるとか言われているらしい。

 これ以上ボロがでないうちに話を戻す。


「それで、だからって、なんで冒険者ギルドを通す必要があるんですか?」


「簡単に言えば、知らない奴からの誘いも金を出すから来てくれって事だ、しかも、冒険者ギルドを通す事であいだを取り持ってもらいたいんだろう。ランクAの冒険者は国にとって大切な戦力だからな、他のランクAの冒険者もそれぞれの国が色々と優遇措置をして、他国に行かないように努力してるぞ」


「そうなんですか、」


「しかも、トワは単独でダークドラゴンを倒すほどだ、国一つ簡単に滅ぼせるだけの力があるから怒らせたくないんだろ」


 危険物でも扱うようにされて、何か複雑な気持ちになった。


「それって、人間扱いされてないから逆に苛つきますね」


「その辺は王都に伝えとく。トワが化物扱いされて怒っているとな」


 レイシャは冗談混じりでそう言った。


「そうしてください」


 トワも冗談ぽく笑顔で言った。


「それで、依頼は受けてくれるって事でいいか?」


 トワは頷いて、


「はい。断ると冒険者ギルドに迷惑がかかる気がしますから、仕方無いですが行ってきます」


 レイシャは安堵の表情で、


「そうしてくれると助かる。国との関係は悪くしたくないからな。ありがとう」


「いえ、まあ、三人で王都の観光でもしてきますよ。何かオススメの見所とかありますか?」


 レイシャは腕を組み考える素振りをしてニヤリと笑った。


「トワが会うこの国のトップは女王だ。しかも、絶世の美女で胸がデカイと聞いた事がある」


「なんですって!絶世の美女できょに...」


 机に身を乗り出しているトワの足をアイリとリーネが踏む、しかも、踏んだ後グリグリしてる。

 アイリとリーネを見ると涙を浮かべて怒っていた。


「はははは、なに言ってんですか、俺はそんなもの興味ないですよ?」


 痛いのを我慢して平静を装ってみた。


「そうか、そんな可愛い二人がいるからな」


「そうですよ。俺は二人を愛してるんですから」


 愛してると言うと痛みが消えた。

 二人を見ると両手で顔を隠して悶えてた。

 そんな二人を立たせてレイシャに挨拶をする。


「依頼はサリーの所で受けて行ってくれ。あと、今回の報酬は家に届けさせればいいか?」


「そうしてください。それと、黒金貨は使いづらいので白金貨と金貨にしてください」


「割合は適当でいいか?」


「はい。任せます。それじゃあ、また」


「ああ、今回は本当にありがとう」


 最後にレイシャが深々と頭を下げた。

 

 トワは部屋を出てサリーさんの所で依頼の処理をしてもらいギルドを出ようとしたら、冒険者ギルドの職員全員が深々と頭を下げ口々に『ありがとう』と言った。

 


 トワはギルドを出て三人で飯屋に入り昼食にする。

 フラウ達には昼は外で食ってくると言っておいた。


 飯屋は昼間だと言うのに酒を飲んでいる奴が多かった。

 トワは空いていたテーブルにアイリとリーネを席に座らせてトイレに行った。




 トイレを出ると店の中が騒がしかった。

 先程とは違い怒号が聞こえる。


「この店は奴隷なんぞを椅子に座らせて飯食わせんのか?奴隷は奴隷らしく外で残飯でも食ってろ」


 鎧を着た冒険者の男達がアイリとリーネに絡んでいた。

 アイリとリーネはここで騒ぎを大きくするとトワに迷惑が、かかると考えて無視をしていた。

 どうやら少し見える胸元から奴隷の刻印が見えていたらしい。

 

 何時までたっても動きもしない二人に苛立ちを隠せない男が、


「さっさと、どきやがれ」


 どうやら後から入ってきたあの男達が二人から席を奪おうとしていたらしい。

 アイリ達が無視を続けているともう一人の細身の男が最初の男に、


「力ずくでどかしちまいましょうや。んで、上等そうな服を着ているから迷惑料にいただきましょう」


「そうだな」


 そう言うと、最初の男がアイリの襟を掴もうと手を伸ばすとアイリがその手をはじいた。


「触らないでください。これは、ご主人様にいただいた大事な物です」


「てめえ!奴隷ごときが舐めてんじゃねえぞ!俺様は王都から来たBランクの冒険者だぞ!」


 どうやら、トワが寝込んでいるあいだに来た奴等らしい。

 トワは近づこうとするが、人だかりでなかなか近づけないでいた。

 そんな時におろおろしている店員を見つけて色々と話を聞いた。


「この店は、奴隷の入店ダメでしたか?」


「いえ、そんな決まりはありません。あいつ等は数日前に来てやりたい放題なんです。腕が立つので誰も逆らえないんです」


「冒険者のギルドマスターに話せばいいんじゃないか?」


「皆、報復を怖がって出来ないんです」


「そうなんですか、わかりました」


 その店員は俺トワの顔をまじまじと見て驚いた顔になった。


「あれ!もしかして、〈剣神〉のトワさんですか?」


「トワは俺ですけど、〈剣神〉ってなんですか?」


「皆が噂してますよ。ドラゴンを剣一本で倒した男だから剣聖を越えた〈剣神〉だって」


 トワの知らないところで話が大きくなっていた。



 話を切り上げて、流石にアイリ達が我慢の限界に近いので、少し強引に人だかりをかき分けて男達の少し後ろに来て声をかける。


「おい!うちの者に何か用か?」


 声を落として不機嫌そうに言った。

 

 「こんなガキが持ち主か、笑わせてくれる。おい!ガキ、怪我したくなければ大人しく帰れ!この二人は迷惑料がわりに俺達が楽しませてもらうがな」


 アイリ達に手を出すと言われたら、自分でも信じられない位、怒りが沸いてきた。

 そんなトワの事に気がついた人々が口々に


「あいつ等死んだな」


 と言っていた。


 トワは威圧の波動を男達に向けて放つ。

 男達はガタガタと震えてしゃがみこんだ。


 これから、殴ってやろうとしていると飯屋の扉が開き街の衛兵が入ってきて男達を捕らえる。

 何がどうなったのかわからず扉の方を見ると、先程の店員が入口で親指を立てて、いい笑顔でこちらに合図をしていた。

 男達は威圧から開放されたらしくトワの方を睨みながら、


「覚えてろよ!」


 と叫んでいた。

 トワはここで、


「全員にこれから言うことを街中に、いや、国中に広めて欲しい」


 トワが喋り出すと静まり返り、男達を連れていこうとしていた衛兵達も足を止めていた。


「俺、Aランク〈剣神〉こと、トワは俺の奴隷達に手を出したり、暴言などで辱しめた者には、俺が全力で後悔をさせてやると!」


 せっかくの二つ名をつけられたので、そのまま使って宣言をした。


 トワに絡んできた奴らはトワの名を聞いたら、威圧をかけてないのに震えだした。

 そして、そのまま衛兵に引きずられていった。



 トワ達は飯を食って騒がした迷惑料に全員分の料金を払って店を出て屋敷に向かう。


 帰るときにアイリ達が落ち込んでいたので、よく我慢したなと褒めて頭を撫でながら帰った。






  


 


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