闇夜の御伽噺(FairyTale at Dark)
「黄金の王」
太陽は 太古の城で
蒼い王座に 腰を掛けた
白服の兵士 何も語る事も
無くただただ 王の元へ
集い、群れ すぎて
兵にまみれて、平民には
彼の者の威光は 届かなく
なってしまった
現状に憂う 王の右腕
透明な暗殺者 が走る
兵の中を 駆け抜けた
過ぎた後に、兵の首が
一つ一つと 飛んでいく
散った兵の 無念、情景の
欠片を孕んだ 血飛沫は
城の外へと 流れだし
平民の世界に 降りかかった
王が為の 命令外の
無差別かつ 非情なる
処刑の後に
平民達は 宴を開く
体に浴びた
その血飛沫を 讃える宴だ
満月は黄金の 寝台で
世界の王と 体を共にする
王が女王を 組み伏せて
その光で情事を誤魔化す
闇に隠れるべき彼女を
彼の者が その精を
以て、照らし上げた
その愛を
以て、表してしまった
愛の語らいを傍で聞く
愛を持たぬ 暗殺者
指を咥えた平民街に
降り立った
闇夜に紛れて
腰をくねらす 情婦達の
その桃色の秘部を
冷ややかな刃を もって脅かす
高貴なる嬌声に 群がり始めた
白服の愚者も
彼の刃で 切り裂かれる
微塵も残さぬ程に
彼の者の愛を 脅かさぬよう
やがて語り合いは
終わりを迎える
啄む様な口付けの後
女王はその身に
魔法のヴェールを 被る
王は光の衣を 纏い
再び王座に戻った
夜を掛けた 暗殺者
何時もの位置に
密かに、息を潜め、立った
またも白き愚者は
王に群がり 切り裂かれ
血飛沫を浴びた 平民達
狂乱の踊りを舞う
昨日より少し早くに
体の疼きを 感じた女王
自らが王に依存して
いる事を改めて知って
少し早くに 王を誘った
その身のヴェールを
脱ぎながら、ね
「夜~ 」
闇に沈んだ 人の街
煤に塗れた街燈から
漏れ出た 淡い光
微かな 光源
もうすぐ 覆い隠されて
しまいそうな儚い光
ちかちか、と 明滅を
繰り返している
何かに抗がうが如く
闇に隠れた 裏世界
影に埋もれた路地裏で
今日も 目覚めが始まる
ゴミに塗れた 老人は
体に蟲達を纏う
襤褸布の変わりとして
ふらふら、と 当てなく
歩み続けている
何かを探し求むが如く
黒に濡れた 夜の空
星明りに輝いた屋根
闇に紛れた 盗人
溢れ続ける 欲望を
その身に受けつつ
そろそろ、と 足音を
隠し続けている
何かから逃げるが如く
流れ去った光の欠片
消え行く 流星群
燃え続ける その身を
煌めかせ続けて
街燈は憧れた
刹那に消え行く儚さに
老人は笑った
光に願う人の愚かさに
盗人は見上げた
隠した欲望につられて
やがて夜は明ける
僅かに 光の源が
街燈は意味を無くした
肩身を狭めた 老人は
表の世界から身を眩ます
屋根を伝う 盗人は
その身に品を抱え逃げる
空を横切る 流星は
願いを秘めて消えていく
人々の目が覚めた
世界は光の元へ回帰し
闇は人々の足元へと
こうして世界は回る
巡って、廻って出来ている