【可能性】 みなれた光景、新たな世界
展開は急に進んでいく小説です
僕は彼女を背負ったまま、家まで歩く。いつも帰っている道もいつもとは違うのだ。それがなぜだか僕にはよく分からない。ただ感覚として、いやこれを人間の直感というものかもしれない。五感を超えた・・・これ以上は言語ではうまく表現はできなかった。
「すぅ・・・」
彼女は僕の背中で寝ていた。あんなことがあったのだ。疲れて当然だろう。僕も疲れてるんだけどなぁ、などと考えていたらいつのまには家についていた。
僕には両親がいるが、二人とも海外に住んでいる。両親はどちらもデザイナーで世界を飛び回っているようだ。僕は一人で家にいることなんて慣れているし、逆に親がいないほうが楽といえば楽だ。家の外見は結構大きい。ここの一帯はそういう大きな家ばかりでそんなに大きくは感じないが、普通の家の2倍はある。僕は玄関のカギを開けた。
「とにかく、この子を寝かせないと」
そういって、奥のリビングのソファに彼女をおろした。いまだ眠っている彼女の顔はとても綺麗だった。時間をみるともう8時を指していた。流石にこの時間に何も食べていないとお腹が減ってしまった。僕は手早く遅い夕ごはんを作った。もちろん彼女の分もだ。そのおいしい匂いに誘われたのか彼女が目を覚ます
「いい匂い・・・ここは?」
「僕の家だよ」
「えぇ!?いいんですか?!親とか!!」
「大丈夫だよ~、実は親は海外にいて一人暮らしなんだ」
そういってフライパンで焼いている肉をお皿にうつす。料理はおてのものだった僕は手早く食事の用意を済ませた。その間はずっと彼女はこちらを見ていたが、目を合わせると顔を赤らめて目をそらした。なんか青春って感じ。あぁ僕いま青春真っ只中か。
「できたよ。食べよ」
「いいんですか!?」
「いいから。早く座って」
彼女をイスヘと促す。
「いただきます。」
彼女はそう言ってパクパクとごはんを食べる。そうとうお腹が減っていたらしい。僕もゆっくりとごはんを口にする。
「今日うちに泊まっていきなよ」
僕がそんなことを口にすると彼女は顔を真っ赤にした。
「い、いやそれは申し訳ないです!!」
「君家ないでしょ?」
「う・・・はい」
「んじゃ隣の部屋に布団用意しとくよ」
僕はそう言ってお茶をすすり、食器を重ねた。
「あぁ。心配しないで。僕は二階で寝るから一階でのんびりしていいよ」
「あ・・・はい・・・」
そういって彼女はうつむく。僕は少々気を遣いすぎるかもしれないといま気づく。
「ホントにいいんでしょうか?」
そんなことを彼女は口にする。
「大丈夫。僕はだいたい一人だから、その人が増えてうれしいよ」
本心だった。これほど人が頼れるというか、家に僕意外に人がいるなんて初めてだったからとてもうれしかった。なにしろ小学生の時から一人で過ごしてきて、友達を家に呼んだこともない。そういう話にもならなかった。ただ僕はいつもなにもない家の中で食と寝ることしかしてなかったのだから。でも今日の僕は違った。なにか変った気がしたんだ。僕のなかで何かが、確かに動き始めてる。彼女に出会ってなにもかも変わった気がするのだ。
「僕今日は疲れたからもう寝るよ。布団は敷いておくから適当に寝てね。明日は土曜日だしどこかに行こう」
「あ、はい!ありがとう」
彼女も楽しそうだった。僕はとてもうれしくなった。僕から遊びに誘うなんて初めてだ。それにしても急展開すぎるけど、確かに感じた。
僕も彼女もいま現状で頼れるのはお互いだったことを・・・・・
すいません。こんかいは恋愛模様でしたが、恋愛小説じゃありません。これから真面目な話に入っていきます