【可能性】 不思議な少女
僕はなぜか白と黒の半分に分けられた世界にいた。
「「いい判断だね」」
白の方にはあの右側の僕がいた。
「「いい判断だね」」
黒の方にはあの左側の僕がいた。
「君達は、、、、いったいなんなんだ?」
僕はひどく冷静にそう訪ねた。右側の僕は答えた。
「「君は自分をすごく普通だとおもってるね」」
「「君は普通じゃない可能性があるよ」」
僕はこの二人の僕が何を言っているのかわからない。まだこの世界がなんなのかがまったくわからない。なぜ僕がこんなことに、なぜ?
「「「「君には可能性がある。それを頭に入れておいて」」」」
そういって二人の僕は徐々に消えていく。
「ま、まってよ!どうゆうこと?!」
そういって二人を止めようと腕を伸ばしたが、空気を裂いただけだった。
「いったい、なんなんだッ!!!」
そう叫んだが、いまは白黒の世界に響いただけだった・・・・・
「だ、大丈夫ですか?」
僕は倒れていたらしく、目をあけると天井と僕が助けた彼女がいた。彼女はとても心配そうな顔をしている。
「うん。大丈夫」
そういって立ち上がろうとしたが、足が重たい。そして頭が痛かった。しかし彼女に手助けをしてもらうのも申し訳なかったし、なにしろ手に触れたくはなかった。またあの世界に引きづり込まれてしまうとおもったから。僕は壁をつかってゆっくりと立ち上がった。
「そういえば、お名前を聞いてませんでした。あなたは?」
頭を少し抑えながら、僕は答えた。
「杉原俊太だよ。君は?」
僕はそういって、イスに向って歩き、イスに座る。
彼女は少しうつむいて答えた。
「私は・・・名前がありません」
「え?」
僕は一瞬その言葉を疑った。まさか、そんなことがあるのかと。
「・・・親は?」
少しうつむいた顔がまた更に、うつむく。
「いません」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないんです、私は・・・・私は・・・」
彼女はついに泣きだしてしまった。
「ご、ごめん!」
「・・・私が悪いんです!・・・私が・・・・」
結局僕は泣いている彼女を見ていることしかできなかった。すると駅員が待合室に入ってきた。
「君たち、今日はもう帰っていいそうだよ。これを。」
そういって駅員は僕に封筒を渡してきた。
「彼女を助けたお礼。ほんとに事故にならなくて、よかった。ありがとう」
そういって駅員は深々と頭を下げた。
「そんな、お礼なんて!!いいですって!」
僕はお金を返そうとしたが駅員はそれを拒んだ。
「お願ですからもらってください。俺は君に感動しました。自分が死ぬかもしれないのに、彼女を助けて・・・俺には絶対できないことを・・・・すいません。これはと私と駅長の気持ちです。どうか受け取ってください」
僕ははじめて人に感謝された。日頃から何も行動に移さない僕は、リーダーとして先頭に立ったこともなく、ただ影が薄かったのだから。
「それでは」
そういって駅員は去っていった。僕は目を彼女に移した。
「ごめん!立てる?」
彼女はこう言った。
「すいません・・・・」
「とりあえず、帰ろうよ!」
僕はそう言って、彼女をおんぶした。そして彼女は僕の背中でこう言った。
すいません・・・・・・
僕にはいまの状況がまったく理解できなかった。この彼女。そして二人の僕。まさかこんなことがありえるなんて、思ってもいなかった。僕はただはやく家に帰って・・・・寝たかった。