異常
・・・・・・桜舞い散る春一学期。(始業式)
ーもしかしたら自分はかなりの馬鹿かもしれない。
進級し一学期早々、何とも自虐的な事を考える少女泉坂 要は今年の春で2年生へと進級する。成績平凡体力平凡といった至って普通の少女である。しかし彼女の格好から見て彼女を普通等と思う人間なんてまずい無いだろう。
彼女は成績体力は普通の平凡な女子高生だが、格好こそが全く普通ではないむしろ逆で異常と言うべきであった。
彼女は女であるにも関わらず、茶髪の男性用ウィッグをつけ男子用制服を着ているのだった。
顔は童顔ではあるが中性的で普通にモテる容姿はしているが、16歳ともなると男女の体格の違い等がハッキリしてくる頃だ。なので、たとえ彼女が中性的な顔で男子用制服を着ていたとしても、女である事は誰から見ても一目瞭然であった。
ーそれにも関わらず何故彼女は男装をしているのか・・・、今年入ってきた一年が彼女を見たとき皆思う事である。それは全校生徒例外ではなかった。
・・・・一年前の春入学式
彼女は一年の入学式から、既に男装をしていた。入学式早々周囲から冷たい視線で見られ、明らかに浮いている存在となっていた。それは彼女自身が最も良く分かっていた、自分が今している事は異常であると周囲からどんな目で見られているかという事を。
そしてそんな周囲からの視線に耐え切れなくなった彼女は、入学式途中まだ校長が長たらしいスピーチをしている最中に、勢い良く椅子から立ち上がり半ばやけくそに叫んだ。
「私は好きでこんな格好をしているわけではありません!私の双子の弟に無理やり着せられました!私はこんな格好なんてシタクナカッタっ!」
と体育館に反響するほどの大声でそういったのだ、語尾に近づくにつれて彼女は自分が何を言っているのかさえ分からなくなっており、外国人風にカタコトな言葉となってしまった。それ程彼女は追い詰められていたのだ、周囲からの視線は勿論だったが、彼女にとってそれよりももっと重要な理由があった。
要が叫ぶとあたりはシンと静まり返っていた、校長の話を聞いているうちに眠気に襲われていた半数の生徒でさえも、その叫びに目を覚まし要の方へと体育館にいる全員が目を向けた。唯一人を除いては・・・・
その人物は、要には目を向けず周囲にばれない様に下を向いて笑っていた。その顔は唯純粋におかしくて笑ったような笑みではなかった。口角を上げ目を細めまるで今の状況を心底楽しんでいるかのように、しかしそれを周囲にばれないように静かに笑った。その笑みは楽しんでいるのと同時に見下したような笑いでもあったのだ。周囲の人間全員が、あっけらかんとした顔をしているのに唯一人まるでこうなる事が分かっていたかのように冷静に、静かに笑っていたのだ。
その人物は要と全く同じ顔で静かに静かに笑ったのだった。
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続く
初めて恋愛小説を書きますが、まだプロローグのような物です。これから色々と登場人物達を喋らせていこうかなと思っています。
かなり、更新が遅くなると思いますがどうぞ暇さえあれば、読んでください。