第十九章 第七十八話 命の雫と、まだ終わらない戦い
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フォードは、倒れたクエラの身体を抱き起こした。
「クエラ……!」
頬に触れる。
冷たい。
嫌な冷たさだった。
眠っている人の温度ではない。
「おい、起きろ……!」
「クエラ! 目、開けろって……!」
肩を揺さぶる。
返事はない。
呼吸が浅い。
ほとんど感じられない。
「起きろって言ってんだろ!!」
声が裏返る。
指が震える。
遅れてネコルトが駆け寄った。
「フォード!揺さぶるな!」
短く、鋭い声だった。
フォードの手が止まる。
ネコルトはすでにアイテムバックを開いていた。
瓶を取り出す。
透明な小瓶。
中には、わずかに金色の液体が揺れている。
そこへピサラが歩み寄る。
「……ハイポーションどころか、エクスポーションでも」
「死者は蘇らないよ」
静かな声だった。
「死んでない!!」
フォードが即座に怒鳴る。
ネコルトは視線も上げずに答えた。
「はい、まだ死んでません」
一拍。
「そして、これはポーションではありません」
栓を抜く。
「神具のエリクサーです」
ピサラの目が、はっきりと見開かれた。
「……は?」
神話の単語だった。
市場にも、王城にも、教会の秘蔵庫にも存在しないはずの品。
ネコルトは淡々としている。
「飲ませます。支えてください」
フォードがクエラの頭を支える。
唇に瓶を当てる。
金色の雫が、喉へ流れた。
静寂。
魔法陣の脈動だけが響く。
「……クエラ?」
フォードが顔を近づける。
頬に、わずかに色が戻る。
指先が、ぴくりと動く。
「……ん」
小さな声。
「クエラ!?」
まぶたが震える。
ゆっくりと、開く。
焦点が合う。
フォードを見る。
ネコルトを見る。
そして――
「……ありがとう」
森の日と同じ。
安心したような笑顔だった。
フォードの喉が詰まる。
「ば……ばか……」
「心配、させんなよ……」
ネコルトは静かに息を吐いた。
肩の力が抜ける。
そこへ足音が重なった。
「片付いた!」
クリフの声。
「全部、落としたよ!」
ライブ。
ナリア、ミーニャ、ヘトルビース、ダイアンも駆け寄る。
「無事でよかったにゃ!」
「よかった……本当に」
空気が一気に緩む。
だが。
「――喜ぶのは、まだ早い」
ピサラの声だけが、冷えていた。
全員の視線が向く。
ピサラは顎で床を示す。
封印の魔法陣。
白い光は、止まっていない。
聖杯はまだ満ち、
神聖力が流れ続けている。
「聖女は助かった」
「でもさ」
目を細める。
「コスモは、復活しそうだよ」
魔法陣の光が一段、強く脈打つ。
喜びの余韻が、静かに剥がれていく。
「……ここからが本番だね」
誰も否定しなかった。
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また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。
そちらもよろしかったらご一読ください。




