第十八章 第七十二話 反撃の狼煙
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ザルヴァトの翼が、一枚動いただけだった。
それだけで。
空気が裂けた。
フォードの剣が弾き飛ばされる。
足が床を滑り、石が砕ける。
「……っ!」
踏み込み直す。
斬る。
届かない。
光の膜に触れた瞬間、刃が逸らされる。
横からピサラが拳を叩き込む。
空間を歪める一撃。
――止まらない。
ザルヴァトは、ただ腕を上げただけだった。
それだけで衝撃が返る。
「うわ、硬っ」
「硬いとかの次元じゃないね、これ」
フォードが歯を食いしばる。
力ではない。
質が違う。
「……神気、か」
ザルヴァトは微笑む。
「人が届く領域ではない」
その時。
――ヒュッ。
空気が細く鳴った。
ザルヴァトの肩に、一本の矢が刺さっていた。
「……?」
全員が振り向く。
ネコルトが、いつの間にか弓を構えていた。
足元には、小さな道具箱。
「……通った」
ザルヴァトの眉が、わずかに動く。
傷は浅い。
だが、確かに肉を裂いている。
ザルヴァトが、初めて眉をひそめた。
「……なぜだ」
ネコルトは弓を下ろす。
「完全無効ではありません」
淡々とした声。
「“弾いている”だけです」
「条件が合えば、通る」
フォードの目が見開かれる。
「突破口……!」
ネコルトは答えない。
ただ、もう一本の矢をつがえた。
一方、外周。
「集合!」
ライブの声が響いた。
全員が、半歩だけ距離を取る。
息を整える。
視線を合わせる。
「ナリア」
「ミーニャ」
「ヘトルビース」
三人が顔を向ける。
「多数、いける?」
一瞬の静寂。
ナリアが拳を握る。
「もちろん」
ミーニャが笑う。
「修行の成果、見せるときでしょ」
ヘトルビースが爪を鳴らす。
「全部、ほどくにゃ」
ライブは頷いた。
「じゃあ任せる」
次に、クリフとダイアンを見る。
「私たちで、ウリエルとラファエルを同時に受ける」
ダイアンの眉がわずかに動く。
クリフは無言。
「私が補助する」
「ダイアンなら、ウリエルの圧も受け切れる」
「ラファエルの刃も、いなせる」
ライブの視線が、クリフへ向く。
「そうすれば」
「クリフの槍が、届く」
クリフが、短く頷いた。
「……十分だ」
ダイアンが大槌を握り直す。
「……やる」
ナリアが前へ出る。
ミーニャが糸を構える。
ヘトルビースが低く唸る。
ライブが深く息を吸った。
「行くよ」
白い軍勢の奥で、
大天使たちが翼を広げる。
その瞬間。
仲間たちの足が、同時に踏み込んだ。
反撃の狼煙が、
白い戦場に上がった。
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また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。
そちらもよろしかったらご一読ください。




