表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結済『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/84

第十七章 第六十九話 最初の一歩と、辿り着く場所

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 ――ギィ、と。

 大ネズミが、牙を剥いた。

 腐った肉の臭い。

 赤く濁った目。

 人の子ほどもある体躯。

「……っ!」

 クエラの足が、すくむ。

 木剣を構えたフォードも、一瞬だけ固まった。

 勇ましい言葉とは裏腹に、相手は“本物”だった。

「フォード、下がって」

 ネコルトの声は、落ち着いていた。

 腰のナタに、手が伸びる。

「大ネズミだ」

「突進が速い」

「正面からは危険です」

「で、でも!」

 フォードは一歩、前に出た。

 足が震えている。

「クエラが――」

「だからです」

 ネコルトは、フォードを一瞥する。

「君が怪我したら、もっと危険になる」

 大ネズミが、地面を蹴った。

「来る!」

 ネコルトが叫ぶ。

 次の瞬間。

 フォードは、考えるより先に動いていた。

「――うおおっ!!」

 木剣を振り上げ、真正面から飛び出す。

 無謀だった。

 だが。

 ネズミの注意は、完全にフォードに向いた。

「……っ」

 クエラの喉が、ひくりと鳴る。

 ――今だ。

 ネコルトが、横から踏み込んだ。

 低く、速く。

 ナタが、閃く。

 狙いは首ではない。

 脚。

 ザクリ、と嫌な音がして、

 大ネズミが体勢を崩す。

「今!」

 フォードが、叫びながら振り下ろす。

 木剣が、頭部に叩き込まれた。

 鈍い衝撃。

 悲鳴。

 ネズミは数歩もがき、

 やがて動かなくなった。

 静寂。

 風が、森を渡る。

「……」

 フォードは、木剣を落とした。

 膝が、がくりと折れる。

「……生きてる……?」

 ネコルトが確認し、頷いた。

「完全に絶命です」

 その瞬間。

 クエラの胸に、熱いものが込み上げた。

 怖かった。

 でも。

 フォードは、逃げなかった。

 自分を守るために。

 震えながらも、前に出た。

「……ばか」

 気づけば、そう呟いていた。

 フォードが顔を上げる。

「え?」

「ばか……」

「……でも」

 言葉が、続かない。

 胸が、どくどくと鳴る。

 この時、クエラははっきりと理解した。

 ――ああ。

 ――この人が、好きなんだ。

 フォードは、照れたように頭を掻いた。

「……大丈夫だった?」

 その一言で、十分だった。

 ネコルトは、二人を見て、ため息をつく。

「……危険でした」

「ですが」

 一拍、置く。

「判断自体は、悪くありません」

 クエラは、ネコルトを見る。

「……ありがとう」

 心からの言葉だった。

 ネコルトは一瞬だけ目を逸らし、

 いつもの調子で言った。

「合理的だっただけです」

 でも。

 クエラは知っていた。

 この人は、信用できる。

 怖い時に、逃げずに考える人だ。

 それから。

 三人は、冒険者になった。

 最初は、村の近くで小さな依頼。

 次に、少し遠い町。

 仲間が増えていく。

 ミーニャと出会い、

 クリフと出会い、

 ダイアンと、ヘトルビースと、ライブと。

 ネコルトはいつも後ろで考え、

 フォードは前で剣を振り、

 クエラは、支える役を選んだ。

 それが、自然だった。

 そして――。

 現実に戻る。

 金属と白石で構成された巨大な施設の前。

 空気が、重い。

 勇者一行は、足を止めた。

「……着いたな」

 フォードが、低く言う。

 目の前にそびえるのは、

 旧世界の観測拠点。

 秩序神復活の中枢。

 ザルヴァトの拠点。

 ネコルトが、地形を見渡す。

「警戒網、複数」

「内部構造は複雑です」

 ナリアが拳を握る。

「……クエラは、ここにいる」

 フォードは、剣を握り直した。

「必ず、助ける」

 その言葉は、もう誓いではない。

 昔から、そうすると決めていたことだ。

 眠れる聖女の記憶と、

 辿り着いた現在が、静かに重なった。

 物語は、いよいよ核心へ踏み込む。

 次に開く扉の向こうで、

 待っているのは――

 真実と、決断だ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ