第三章 第七話 商人と金融商
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教会の一室。
簡素だが、清潔な客間だった。
ネコルトは、椅子に座りながら、拳を握り締めていた。
王国への正式な嘆願は、すでに行った。
勇者一行の資産差し押さえの撤回。
懸賞金の取消。
救出作戦の立案。
だが、返ってきた答えは冷酷だった。
「決定事項だ」
「覆らない」
大臣の一言で、すべてが終わった。
唯一の救いは――
王女シレッタの介入だった。
ネコルト個人にかけられた懸賞首だけは、
彼女の計らいで取り下げられた。
財産も、形式上は守られた。
だが、それだけだ。
(勇者一行は、見捨てられた)
ネコルトは、奥歯を噛みしめた。
次に向かったのは、冒険者ギルド。
正式な依頼書を提出し、救出を要請する。
しかし。
「……申し訳ありません」
受付の奥から出てきたギルド幹部は、
目を合わせようとしなかった。
「貴族や商工会から、強い圧力がありまして」
「この依頼は……受けられません」
「……理由は?」
「……」
沈黙。
ネコルトの胸に、怒りが湧き上がる。
これまで――
割に合わない依頼も引き受けた。
物資を融通し、赤字覚悟で支えた。
ギルドの信用を守るため、頭も下げた。
それなのに。
(恩を、仇で返すのか)
教会へ戻ったネコルトは、
静かに、ステータスを開いた。
■ 商人 と 金融商
クラス:商人
アイテムボックス(大容量)
武具・道具の知識(全装備可)
価格鑑定
交渉術
流通把握
物資管理
クラス:金融商(追加)
契約魔法
債務管理
担保設定
差押権行使
創知権
身体起源権
ネコルトは、息を呑んだ。
(……両方、使える)
剣も魔法も使えない。
戦闘スキルもない。
だが。
契約は破れない。
返済は免れない。
暴力で奪われたものは、
権利として、取り戻せる。
ネコルトは、静かに立ち上がった。
「……まずは、冒険者ギルドからだ」
救わなかった者たち。
切り捨てた者たち。
殺さない。
奪わない。
――借金を、背負わせる。
その復讐は、
この夜、静かに始まった。
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また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。
そちらもよろしかったらご一読ください。




