第十五章 第五十九話 白き異形、進撃
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「――来るぞ!!」
ネコルトの叫びと同時に、白き異形たちが落下した。
それは、降臨ではなかった。
投下だった。
翼を畳み、槍のように地面へ突き刺さる個体。
着地と同時に、四肢を“再構築”する個体。
墜落し、砕けた肉体をその場で縫い合わせる個体。
「……っ、なんだ……あれ……」
神殿騎士の一人が、声を震わせた。
白い外皮は神聖を思わせる。
だが、その内側は腐肉色。
骨が突き出し、臓器が露出し、筋繊維が蠢く。
翼は羽根ではなく、硬質化した肉片。
羽ばたくたびに、血が散った。
「……天使なんかじゃない……」
「化け物だ……」
恐怖が、騎士団を侵食する。
その時。
第一陣が、地上に着弾した。
「――迎撃!!」
イグナーツの号令。
神殿騎士団が槍を構え、突撃する。
「神の御名のもとに!!」
一斉突進。
だが。
天使の一体が、正面から“抱きついた”。
次の瞬間。
騎士の胸が、内側から破裂した。
「――――っ!!」
悲鳴は、途中で潰れた。
天使の腹部が開き、無数の触手が伸び、騎士の体を引き裂いた。
血が、噴き上がる。
「……っ、退け!!」
「距離を取れ!!」
だが、もう遅い。
天使たちは、兵器だった。
斬られても、潰されても、焼かれても、止まらない。
肉体を再構成し、即座に戦線へ復帰する。
「……再生速度が異常すぎる!!」
ライブが叫ぶ。
「魔法で焼き切る!」
炎の奔流が天使の上半身を消し飛ばす。
だが。
下半身が這い寄ってきた。
「……キリがない!!」
ナリアが歯を噛み締める。
その横で、ダイアンが前に出た。
「……来い」
盾を構え、突進してくる天使を受け止める。
衝突。
骨と肉の塊が、盾に激突した。
「……っ、重い!!」
腕が、軋む。
天使の腕が分裂し、四本に増えた。
ダイアンの体を、包み込もうとする。
「――させるか!!」
ヘトルビースが、横から飛び込む。
鉤爪が閃き、天使の脚を切断する。
だが。
切断面から、骨が伸び、新しい脚が“生えて”きた。
「……何度でも再生するにゃ!?」
ヘトルビースが叫ぶ。
「……普通の戦い方じゃ、無理だ!」
一方。
フォードが、天使の群れへ斬り込んだ。
聖剣が、白い閃光を放つ。
一体を両断。
二体目を貫く。
三体目の頭部を粉砕。
だが。
倒れた天使たちは、数秒後には、再び動き出した。
「……再生、するのか」
フォードの眉が歪む。
「ちっ」
ピサラが舌打ちした。
彼女の一撃は、空間ごと歪める。
肉体を、概念ごと潰す。
だが。
それでも。
天使たちは、完全には死ななかった。
「……おかしい」
ピサラが、目を細める。
「こいつら、“生命”として成立してない」
「破壊しても、壊れてない」
「……意味がズレてる」
その時。
上空から、声が降った。
「無意味だ」
六翼の大天使。
空中に浮かび、戦場を見下ろしていた。
「下位個体は、消耗品」
「貴様らの能力を測定するための素材に過ぎない」
ネコルトが、睨み上げる。
「……よく喋るな」
「知性がある個体か」
「上位層は、そうでなければ務まらない」
大天使は、翼を広げた。
「さて」
「優先目標、ネコルト」
「排除する」
次の瞬間。
空間が、歪んだ。
大天使は、瞬間移動のように距離を詰めた。
「――速っ!?」
ネコルトが反応するより先に、拳が迫る。
だが。
「……させるか」
割り込んだのは、クリフだった。
槍が、閃く。
衝撃。
空気が、爆ぜる。
衝突の余波で、周囲の瓦礫が吹き飛んだ。
「ほう」
大天使が、目を細める。
「闘気……か」
「珍しい」
クリフは無言で踏み込み、連撃。
槍が、淡い光を纏う。
だが。
大天使は、それを軽々と避けた。
「……遅い」
クリフの脇腹に、拳が叩き込まれる。
衝撃。
吹き飛ばされる。
「……っ!!」
「クリフ!!」
ミーニャが叫ぶ。
その瞬間。
別方向から、天使の群れが押し寄せる。
神殿騎士団は、すでに崩壊しかけていた。
悲鳴。
血。
祈り。
「……これは……」
ネコルトが歯を食いしばる。
「……負ける戦場だ」
圧倒的な数。
意味の通じない肉体。
死なない兵器。
これは。
“通常戦”では、勝てない。
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そちらもよろしかったらご一読ください。




