第十三章 第五十二話 魔王城の休息と、爆弾発言
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魔王城は、思っていたよりもずっと静かだった。
禍々しさよりも、どこか古城のような落ち着きがあり、廊下には柔らかな灯りが浮かび、空気は澄んでいる。
「……本当に、敵地なんだよね、ここ」
ミーニャがぽつりと呟く。
「待遇が良すぎる……」
クリフも頷いた。
「風呂もあるし、ベッドも柔らかいし、飯が美味い」
「疑うところ、そこじゃない」
ネコルトが淡々と返す。
そんな中。
ナリアは、ネコルトの前に立っていた。
「……ネコルト」
「はい」
呼ばれただけで即答する。
ナリアは、じっと彼を見つめた後、急に笑った。
「……改めて言うね」
「おかえり、じゃなくて」
「……また会えて、嬉しい」
ネコルトは、一瞬だけ目を瞬いた。
「……それはどうも」
いつも通りの返事。
だが、わずかに耳が赤い。
「ちょっとー!」
ミーニャが割って入る。
「なに二人だけの世界作ってんの!」
「ここ魔王城!」
「敵地!」
「ラブコメの舞台じゃないからね!」
「いや、ラブコメでは……」
「あるでしょ!」
クリフが肩をすくめる。
「あるな」
ネコルトは否定しなかった。
ナリアは楽しそうに笑った。
その少し離れた場所。
ダイアンは、ライブの無事を確認するように、何度も視線を向けていた。
「……生きててよかった」
ぼそっと。
ライブは、それを聞いて、少しだけ笑う。
「心配してたんだ?」
「……当たり前だ」
即答。
そこへ。
「お前がライブかにゃ?」
ぬっと、ヘトルビースが現れた。
「……?」
ライブが振り向く。
「ダイアンから、愛してる相手って聞いてるにゃ」
――空気が止まった。
「…………」
全員、固まる。
「っ!?」
ダイアンが真っ赤になった。
「な、な、な、何を言ってる!」
「事実にゃ?」
ヘトルビースが首を傾げる。
「愛してるって、何度も言ってたにゃ」
「言うな!!」
ライブは一瞬驚いたあと、くすっと笑った。
「へえ」
にやり。
「何度も?」
「…………」
ダイアン、沈黙。
その様子を見て、ライブは満足そうだった。
さらに。
「それでにゃ」
ヘトルビースは続ける。
「あたしも、ダイアンの子供が欲しいにゃ」
「「「「…………」」」」
全員、再び固まる。
ネコルトとライブだけが、平常運転だった。
「……獣人って、一夫多妻って聞いたけど」
ライブが冷静に尋ねる。
「本当?」
「当然にゃ!」
胸を張るヘトルビース。
そして、ハッとする。
「……え?」
「人間は、違うのかにゃ?」
その瞬間。
「ああ!」
と、何かを理解した顔になる。
「だからダイアンは、何度も“愛してる”って言ってきたのかにゃ!」
「重い意味だったにゃ!」
「言うな!!」
ダイアンが頭を抱えた。
ライブは、ゆっくりと彼を見る。
「……ねえ、ダイアン」
「本当に」
「何度も、言ったの?」
「…………」
沈黙。
完全沈黙。
ライブは満足そうに頷いた。
「ふうん」
そこで。
ライブが、ふとネコルトを見た。
「……ネコルトは、知ってたよね?」
ネコルト「はい」
即答。
「獣人文化では、一般的です」
ダイアンが、ゆっくり振り向く。
「……知ってたのか」
ネコルト「ええ」
ダイアン「…………」
数秒、沈黙。
そして。
「……早く」
「……教えてほしかった」
ミーニャが噴き出した。
「そこ!?」
クリフも笑いを堪えきれない。
ネコルトは、少し困ったように。
「……聞かれなかったので」
「聞く以前の問題だ……」
ダイアンの声が、かすれた。
ライブは、その様子を見て。
満足そうに微笑んだ。
「……なるほど」
そして、ヘトルビースを見る。
「獣人の生活、色々教えて欲しい」
ヘトルビース「にゃ?」
「それに」
ライブは、楽しそうに言った。
「一緒に、ダイアンのハーレム築こうか」
「――!?」
ダイアン「承認していない!!」
だが。
ライブとヘトルビースは、もう意気投合していた。
「面白そうにゃ!」
「色々聞かせて」
「任せるにゃ!」
ダイアン「…………」
魂が抜けたような顔になった。
ミーニャが肩を叩く。
「……強く生きて」
クリフも頷く。
「前衛は大変だな」
ネコルトは、紅茶を飲みながら、静かに呟いた。
「……文化の衝突ですね」
誰も反論しなかった。
「……ところでさ」
ミーニャが腕を組む。
「一番聞きたいことがあるんだけど」
「うん」
クリフも頷く。
全員の視線が、フォードに向いた。
「なんで」
「お前」
「魔王と」
「一緒に行動してるの?」
フォードは、ぽりぽりと頭を掻いた。
「……それがさ」
少し、困ったように笑う。
「結構、長い話になるんだけど」
その瞬間。
ネコルトが静かに言った。
「……嫌な予感しかしませんね」
フォードは、にっと笑った。
「正解」
ピサラも、楽しそうに言う。
「魔王城にせっかく着いたんだ。
ゆっくりしていってよ!」
全員、嫌な顔をした。
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また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。
そちらもよろしかったらご一読ください。




