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『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第二章 第五話 置き去りにされた商人

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 どれほどの時間、地に伏していたのか。

 冷たい石の感触が、頬にじわりと染み込んでくる。

 ネコルトは微かに呻き声を上げ、ゆっくりと目を開いた。

 闇の遺跡。

 天井の崩れた裂け目から、灰色の光が差し込んでいる。

「……みんな……?」

 呼びかけた声は、驚くほど弱々しく、空虚に反響しただけだった。

 勇者フォードも。

 クエラも、ライブも。

 ミーニャも、クリフも、ダイアンも、ナリアも。

 ――誰も、いない。

 胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

 嫌な想像が、次々と頭をもたげてくる。

「……生きてる。殺されてはいない……はずだ……」

 自分に言い聞かせるように呟き、ネコルトは歯を食いしばった。

 あの暗黒神官ザルヴァト。

 そして、突然現れた魔王ピサラ。

 フォードが連れ去られる直前、確かに言った言葉が、耳から離れない。

――すまない。みんなを、頼む。

 その言葉を思い出した瞬間、胸に走ったのは絶望ではなく、焼けるような悔恨だった。

「……俺は……何も……」

 拳を握りしめた、その時だった。

 ――キィン。

 脳裏に、澄んだ警報音が鳴り響く。

「……?」

 それは、外から聞こえた音ではない。

 ネコルト自身の内側――スキルの発動音だった。

「まさか……」

 震える指で、アイテムボックスを開く。

 そこにあったのは――

 勇者フォードの聖剣。

 ダイアンの大盾。

 クリフの重槍。

 ナリアの龍拳装具。

 ミーニャの忍具一式。

 クエラの聖銃と聖具。

 ライブの魔導書。

 それだけではない。

 回復薬、魔石、予備装備。

 旅のために積み立てていた金貨袋――すべて。

「……全部……?」

 思わず、息を呑む。

 それは、ネコルト自身が仕込んだ 警報スキル の発動だった。

 ――装備・物資の不正奪取を感知した場合、即時回収。

 毒竜王討伐の少し前。

 装備の紛失や盗難が相次いでいるという噂を耳にし、ネコルトが提案した仕組みだった。

「いざという時のために、警報を付けよう。

 みんなの装備なんだから、守らないと」

 そう言ったネコルトに、最初に賛成したのはダイアンだった。

「理にかなっている。

 俺たちは常に前線だ。後方の安全策は必要だろう」

 ミーニャも笑って頷いた。

「さすが師匠。

 こういう細かいとこ、ほんと抜け目ないよね」

 フォードも、当然のように言った。

「共有財産だ。

 ネコルトが管理するのが一番だろ」

 ――誰一人、疑わなかった。

 金も、装備も、アイテムも。

 「貸している」などという意識は、ネコルトには一切なかった。

 これは勇者一行のもの。

 ギルドの共有財産。

 皆が使って当然のもの。

 ただ管理を任されていただけだ。

 だが。

 勇者一行が連れ去られ、

 その身ぐるみを剥がそうとした瞬間。

 スキルはそれを 「不正な奪取」 と判断した。

 結果――

 全資産は、ネコルトのアイテムボックスへと強制回収された。

「……みんな……」

 ネコルトは、思わず膝をついた。

 奪われたのではない。

 預けられていたのだ。

 命すら危うい状況で、

 誰一人として「返せ」と言わず、

 誰一人として「持っていけ」と指示しなかった。

 それでも――

 装備も、金も、未来も。

 すべてを、ネコルトに託していた。

「……俺なんかに……」

 その瞬間。

 世界が、軋むような感覚とともに反転した。

 ――スキル通知。

《条件達成:資産規定超過》

《役割再定義を確認》

《クラス進化が可能です》

 文字が、脳裏に浮かび上がる。

 ネコルトは、唖然とそれを見つめた。

「……クラス……進化?」

 商人。

 ただの後方支援。

 戦えない、役に立たないと、ずっと思っていた自分。

 だが今――

 勇者一行のすべてを預かり、守り、回収した存在として。

《商人 → 金融商》

 その文字が、静かに、しかし確かに刻まれる。

「……俺は……」

 立ち上がる。

 膝はまだ震えていた。

 恐怖が消えたわけではない。

 それでも。

「……必ず、取り戻す」

 奪われた仲間を。

 踏みにじられた信頼を。

 使い捨てにされた命を。

 剣ではない。

 魔法でもない。

 ――契約と、回収で。

 ネコルトは、初めて真正面から前を見据えた。

 復讐は、ここから始まる。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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