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『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第十一章 第三十九話 号令をかける者

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 その日、ネコルトは王女シレッタに怒鳴られていた。

「――やりすぎです!!」

 王女は机を叩き、真正面から睨みつける。

「王都の経済を“構造ごと”壊す人間がどこにいますか!!」

 ネコルトは深く頭を下げた。

「申し訳ありません」

「本当に思ってますか!?」

「……半分くらいは」

「半分!?」

 王女は頭を抱えた。

「あなたは……本当に……」

「ですが」

 ネコルトは顔を上げた。

「遅かれ早かれ、こうなっていました」

 王女が黙る。

「私は、壊したのではありません。

 “持続不可能だった構造を、露呈させただけ”です」

「……」

「むしろ、これを戦争の前に起こせたのは幸運です」

 沈黙。

 将軍バランドスが、深く息を吐いた。

「……理屈は正しいが、言い方というものがある」

 ラグナも肩をすくめた。

「正論で人は救われないんだぞ、商人」

「存じています」

 ネコルトは、いつものように淡々と答えた。

 *

 その場に、ラグナが一歩前に出る。

「報告します」

 空気が変わった。

「クーデター軍の構成が判明しました」

 地図が広げられる。

「主力は――」

 彼は指で示した。

「元冒険者ギルド所属の上級冒険者」

「破産確定した貴族の私兵団」

「商工会の私設護衛部隊」

 ミーニャが鼻で笑う。

「……寄せ集め」

「だが」

 ラグナの声が低くなる。

「問題は、ここだ」

 赤い印。

「彼らは、魔族の支援を受けている」

 ざわり、と空気が揺れた。

 将軍バランドスが歯を鳴らす。

「……だから押されているのか」

「はい」

 ラグナは続ける。

「王都近郊の防衛線は、すでに二つ突破されています」

 王女の拳が、震えた。

「……国王軍は?」

「善戦はしていますが……」

 ラグナは言葉を選んだ。

「魔族の介入が本格化すれば、持ちません」

 その瞬間。

 ネコルトの脳裏に、一つの名が浮かんだ。

「……大魔公爵」

 全員が、彼を見る。

「この構図」

 ネコルトは静かに言った。

「資金、混乱、権力争い、魔族の支援」

「……あの男のやり方です」

 ミーニャが歯を食いしばる。

「……やっぱり、裏にいる」

 ネコルトは、目を閉じた。

(やはり……“来た”か)

 彼は、ゆっくりと息を吸い――

「迎撃準備を始めます」

 そう言った。

 *

 数時間後。

 王都郊外の大広場。

 そこには――

 ・親衛師団

 ・近衛師団

 ・将軍傘下の正規兵

 ・ネコルト一行

 すべてが集結していた。

 空気は張り詰めている。

 王女が、ネコルトの横に立った。

「……あなたが号令をかけなさい」

「……はい?」

 ネコルトは、聞き返した。

「私が?」

「そうです」

 王女は真剣な目をしていた。

「この軍は、あなたの“決断”で動いている」

「いや、無理です」

 即答だった。

「私は商人です。政治家でも将軍でもありません」

「だから?」

 ネコルトは、振り返った。

「将軍、お願いします」

「断る」

「ラグナ」

「断る」

「クリフ」

「断る」

「ダイアン」

「断る」

 次々に、拒否される。

 ネコルトは困惑した。

「なぜですか」

 クリフが言った。

「お前が始めた」

 ダイアンが続ける。

「お前が守った」

 ミーニャが言う。

「お前が決めた」

 ラグナが、真っ直ぐに言った。

「――だから、お前が言え」

 ネコルトは、言葉を失った。

 王女が、静かに言う。

「あなたは、自分が思っているほど“器じゃない人”ではありません」

「……」

「少なくとも」

 彼女は言った。

「この戦争を、目的から考えている唯一の人間です」

 沈黙。

 風が吹いた。

 旗が、揺れる。

 ネコルトは――

 一歩、前に出た。

 心臓が、うるさいほど鳴っていた。

(……逃げるなら、今だ)

 だが。

 彼の背後には――

 守った人たちがいた。

 信じた人たちがいた。

 そして。

 奪われた仲間たちがいた。

 ネコルトは、顔を上げた。

 声を張った。

「……私は」

 一瞬、詰まった。

 だが、続けた。

「私は、戦争が嫌いです」

 どよめき。

「英雄でもありません」

「将軍でもありません」

「正義の味方でもありません」

 彼は、拳を握った。

「私は、ただの商人です」

 だが。

 その声は、震えていなかった。

「……だから」

 ネコルトは言った。

「この戦争を、利益のためのものにさせません」

 空気が、張り詰める。

「奪うための戦いではなく」

「縛るための戦いでもなく」

「――終わらせるための戦いにします」

 彼は、叫んだ。

「クーデター軍を討伐する!」

「王都を守る!」

「そして――」

 深く、息を吸う。

「この国を、取り戻す!!」

 一瞬の静寂。

 そして。

 轟音のような、歓声。

 剣が掲げられ。

 盾が打ち鳴らされ。

 魔力が揺れた。

 王女は、目を伏せて、微笑んだ。

「……やはり」

 ラグナが呟く。

「向いていないと言いながら、完璧だな」

 ネコルトは、その場に立ったまま、呆然としていた。

(……やってしまった)

 ミーニャが横で囁いた。

「もう逃げられないね」

「……ええ」

 ネコルトは、乾いた笑みを浮かべた。

「逃げません」

 彼は、前を見た。

 戦争が――

 始まる。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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