表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/57

第十章 第三十六話 王都バブルの正体

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 王都の朝は、今日も平和だった。

 市場には人が溢れ、果物の香りが漂い、子どもたちが走り回る。

 だが――

 ネコルトの目には、それが異様な光景に映っていた。

「……増えてますね」

 彼は通りの両脇に貼られた紙を指差した。

『住居を持とう!』

『保証付き永住権付き物件!』

『未来価値固定型居住契約!』

『月々の支払いは銀貨三枚から!』

 クリフが首を傾げる。

「……普通の売り文句じゃないか?」

「違います」

 ネコルトは一枚を剥がし、裏を見る。

「残価設定型です」

「ざん……なに?」

「要するに」

 ネコルトは歩きながら説明した。

「今は安く住める。でも契約満了時に“残価”を一括で払えなければ、家は没収。さらに差額は借金として残る」

 ミーニャが眉をひそめる。

「えげつない」

「ええ」

 ネコルトは静かに言った。

「低所得層向けに見せかけた、搾取構造です」

 ダイアンが低く言う。

「……逃げられない罠だ」

「その通り」

 ネコルトは、露店の前で立ち止まった。

 そこでは、裕福そうな商人が貴族と話している。

「この物件は将来価値保証ですから!」

「王都拡張計画が控えておりますので、三年後には倍以上に!」

「保証は?」

「魔法契約書で!」

 ネコルトの目が細くなった。

「……魔法担保」

 ヘトルビースが耳を伏せる。

「嫌な匂いにゃ」

 ネコルトは頷いた。

「価値の根拠が、すでに幻想です」

 彼らは通りを進む。

 すると――

 別の広場で、演説台が設置されていた。

 大臣派の貴族の一人が声を張り上げている。

「王都の発展を、すべての市民に!」

 拍手。

「新たな住宅政策!」

 歓声。

「将来価値保証型不動産!」

 どよめき。

 ミーニャが囁く。

「……やってるな」

「ええ」

 ネコルトは静かに言った。

「私のやり方を、悪い意味で完璧にコピーしています」

 彼は続けた。

「価値を作る → 保証する → 流通させる → 担保化する → 証券化する」

 クリフが目を丸くする。

「……なに?」

「“家”を“投資商品”に変えているんです」

 ダイアンが呟く。

「……住む場所が、賭けになる」

「ええ」

 ネコルトの声は冷たかった。

「しかも今回は――」

 彼は指を鳴らす。

「貴族同士が、互いに投資し合っています」

 ヘトルビースが首を傾げる。

「……それ、ダメなのかにゃ?」

「最悪です」

 ネコルトは即答した。

「これは、価値の空回りです」

 彼は説明した。

「実体のない価値を、互いに担保にして膨らませている。誰かが転べば、全員が崩れる」

 ミーニャが腕を組む。

「爆弾じゃん」

「ええ」

「しかも――」

 ネコルトは足を止めた。

 露店の片隅で、老婆が震える手で契約書を握りしめていた。

 文字は細かく、難解で、魔法印が押されている。

「……この人たち」

 彼は、その紙をじっと見つめた。

「“終わり”が用意されていません」

 ミーニャが眉をひそめる。

「どういう意味?」

「搾り取る設計にはなっている」

「でも――」

 ネコルトの目が、静かに細くなった。

「逃げ道が、条文の隅にだけ書いてある」

 クリフが言う。

「……それ、偶然か?」

「いいえ」

 ネコルトは、はっきりと言った。

「これは、“使わせない前提”で用意された逃げ道です」

 彼は小さく息を吐いた。

「……市民は、これを知らない」

 そして、低く呟いた。

「――なら、知らせるだけでいい」

 ミーニャが一瞬、言葉を失う。

「……まさか」

「ええ」

「ええ」

 ネコルトの声は、静かだった。

「このバブルは、“内側から”崩せます」

 王都の空は、今日も青かった。

 誰一人として、まだ気づいていない。

 ――この街が、もうすぐ“逆流”を始めることに。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ