表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/34

第一章・第三話 「王命、闇の遺跡へ」

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 毒竜王討伐から三日。

 勇者一行は、山を下り、王都へ向かう街道を進んでいた。

 ネコルトは馬の背で、帳簿を閉じる。

(……消耗品、回復薬、予備武器。

 討伐後の補充分まで含めて、なんとか帳尻は合ったか)

 勇者一行は勝った。

 だが、それは余裕の勝利ではなかった。

 クリフの鎧は竜の爪で裂かれ、

 ネリアの拳は鱗に砕かれ、

 ミーニャは毒煙の中を三度も駆け抜け、

 ダイアンの盾は半ば溶け落ちている。

 回復役のライブとクエラがいなければ、

 誰かが欠けていてもおかしくなかった。

「……それでも、生きて帰れた」

 フォードが前を見据えたまま、静かに言った。

「帰って、報告して、休もう。

 あとは国の仕事だ」

 その言葉に、誰も異を唱えなかった。

 ――はずだった。

 王都の門が見えた、その時。

 街道脇から、騎馬が現れた。

 王国軍の伝令兵だ。

「勇者フォード殿!」

 馬を止め、膝をつく。

「王命を預かっております。

 毒竜王討伐の功、誠にご苦労。

 ――そのまま、次の任務に移っていただきたい」

 空気が、凍った。

「……次?」

 フォードが、低く問い返す。

「はい。

 王国西部、闇の遺跡。

 魔王軍の拠点が確認されました。

 奇襲を敢行せよ、とのことです」

「ふざけるな」

 クリフが即座に言った。

「俺たちは今、満身創痍だ。

 補給も休養も――」

「承知しております」

 伝令は、感情のない声で続ける。

「ですが、

 勇者は国家の剣。

 鈍れば研ぎ、折れれば替えればよい」

 ネコルトの胸に、嫌な感触が走った。

(……今の、聞き間違いじゃない)

「待ってくれ」

 ネコルトは、思わず前に出た。

「毒竜王討伐の正式報告も、

 戦利品の精査も、

 王都で行う手筈のはずだ」

「貴殿は後から合流せよ」

 伝令は、あっさりと言い切る。

「報告は必要だ。

 だが、勇者一行の即応性が優先される」

 クエラが唇を噛む。

「……それは、

 私たちに、休むなと言っているのですか?」

「勇者殿」

 伝令は、ほんの一瞬だけ、視線を逸らした。

「王命です」

 沈黙。

 フォードは、ゆっくりと息を吐いた。

「……分かった」

「フォード!」

 ネリアが声を上げる。

「無理だ! 今行けば――」

「分かってる」

 フォードは、仲間たちを見渡した。

「でも、逆らえない。

 俺たちは……そういう存在だ」

 その言葉が、

 ネコルトの胸に、深く突き刺さった。

 その場で、役割分担が決まった。

 ネコルトは、王都へ向かう。

 毒竜王討伐の正式報告、

 戦利品の引き渡し、

 補給要請。

 勇者一行は、

 先行して闇の遺跡へ。

「すぐ追いつく」

 ネコルトは、必死に言った。

「王都で全力で手配する。

 物資も、援軍も――」

 ミーニャが、無理に笑った。

「師匠、

 大丈夫ですよ。

 私たち、今までだって――」

 言葉が、途中で途切れた。

 クリフが、ミーニャの肩に手を置く。

「生きて待ってる」

 その一言が、

 冗談に聞こえなかった。

 フォードは、ネコルトに近づき、低く言う。

「ネコルト。

 もし、何かおかしいと思ったら――」

「分かってる」

 ネコルトは、拳を握った。

「絶対に、迎えに行く」

 フォードは、微かに笑った。

「……頼んだ」

 王都は、賑わっていた。

 毒竜王討伐の噂は、すでに広まり、

 酒場では英雄譚が語られている。

 だが、

 城の空気は、冷たかった。

「ご苦労」

 大臣バルザンは、書類から目も上げずに言った。

「毒竜王討伐、確認した。

 報奨金については、後日通達する」

「……闇の遺跡への王命について」

 ネコルトが切り出す。

「勇者一行は、消耗しています。

 補給と援軍を――」

「不要だ」

 即答だった。

「勇者であろう?」

 その一言。

 将軍バランドスも、腕を組んだまま言う。

「彼らは強い。

 それで十分だ」

 ネコルトは、何も言えなかった。

(……違う)

(それは信頼じゃない)

(使い捨てだ)

 王都を出る時、

 胸の奥が、妙にざわついていた。

 嫌な予感。

 根拠のない、不安。

 ネコルトは、馬を飛ばした。

(殺されなかった理由は、分からない)

(でも――)

(殺されずに、連れて行かれるなら)

(生きている可能性は、高い)

 まだ、終わっていない。

 そう、信じたかった。

 闇の遺跡の影が、

 遠くに見え始める。

 その時、

 ネコルトは、まだ知らなかった。

 ――この夜、

 勇者一行が、

 世界から切り捨てられることを。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ