第七章 第二十五話 親衛兵団 ― 戻ってきた商人、選ばれた役割
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地下礼拝堂には、回復魔法の穏やかな光が満ちていた。
解放された元・奴隷拳闘士たちは、床に横たわりながら、静かに呼吸を整えている。
生き延びた――
その事実だけが、今の彼らを支えていた。
ネコルトは列の端に立ち、全体を見渡す。
クリフは無理を押して歩き、仲間の様子を確認していた。
ミーニャはその隣で、淡々と回復符を貼り替えている。
その背後から、重い足音が近づいた。
「……よく戻ってきたな、ネコルト」
低く落ち着いた声。
振り向けば、そこにいたのは ラグナ だった。
鎧姿は以前と同じだが、表情にはわずかな安堵が滲んでいる。
「魔族領に向かう前、ひと月だけだったが」
「鍛えた甲斐はあったようだ」
ネコルトは苦笑した。
「生き残る訓練でしたからね。戦えるようにはなってません」
「それでいい」
ラグナは短く頷く。
「お前は、生きて帰る役目だ」
そのやり取りを見守るように、二人の人物が前に出た。
王女シレッタ。
そして将軍バランドス。
「ご無事で何よりです、ネコルト」
王女は穏やかに言った。
「ラグナから、あなたが魔族領でミーニャを助けに行ったと聞いています」
ネコルトは一瞬だけ目を伏せる。
「それに」
王女は続けた。
「教会からも、あなたが帰還したとの報告がありました」
――見られている。
だが、悪い意味ではない。
将軍バランドスが腕を組む。
「状況は把握している」
「大魔公爵が動いたのは想定内だが……早すぎる」
空気が、自然と引き締まった。
「そこでだ」
将軍は告げる。
「新たな部隊を設立する」
王女シレッタが一歩前に出る。
「親衛兵団です」
礼拝堂に、静かなざわめきが走る。
「第一から第三師団は国王と王太子派」
「第四から第九師団は第二王子と大臣派」
「どちらも、信用しきれません」
「だからこそ」
ラグナが言葉を継ぐ。
「表に出ない戦力が必要だ」
王女の視線が、ネコルトに向けられた。
「あなたに、師団長をお願いしたいのです」
「……また厄介な役目ですね」
ネコルトは本音を漏らした。
「承知しています」
王女は微笑む。
「ですが、あなたは――」
「人を守り、縛り、救う方法を知っている」
沈黙の後、ネコルトは静かに頷いた。
「分かりました」
「ただし、実戦指揮はこの二人に任せます」
そう言って、クリフとミーニャを見る。
「私は裏方です」
「それが、私のやり方です」
「それで構わない」
将軍は即答した。
こうして――
闇に潜むための部隊が、産声を上げようとしていた。
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