表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/38

第五章 第十七話 忍びの契約、折れぬ心

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 暗闇の中で、意識が浮上した。

 最初に感じたのは、冷えだった。

 石の床。湿った空気。鼻を突く、鉄と薬草の混じった臭い。

(……生きてる)

 それだけで、胸が少しだけ軽くなる。

 だが、次の瞬間――現実が叩きつけられた。

 縛られている。

 忍具はすべて奪われ、指先の感覚も鈍い。

 魔力拘束具だ、とすぐに分かった。

 視界の端で、仲間たちが引き離されていく。

「ライブはこっちだ。研究区画へ」

「龍拳士も一緒に連れて行け。耐久試験に使える」

「聖女は別枠だ。価値が違う」

 無機質な声。

 ネリアが暴れ、クエラが必死に叫び、ライブが何か言い返そうとして口を塞がれる。

「待って――!」

 叫びかけた、その瞬間。

「お前と、武星は――こちらだ」

 低く、尊大な声。

 振り向くと、豪奢な魔族の男がいた。

 金と宝石で飾られた装束。

 その背後に、武装した配下。

(……大魔公爵)

 直感で分かった。

 そして――。

「クリフ!」

 少し離れた場所で、膝をつかされている青年がいた。

 血まみれで、それでも歯を食いしばって立とうとしている。

「無事で……」

 その言葉を言い終える前に、衝撃が走る。

 床に叩き伏せられた。

「商品が喋るな」

 冷たい声。

 その場で、すべてが決まった。

 ライブ、ネリア、クエラは研究用。

 ダイアンは獄獣将軍へ。

 私とクリフは――大魔公爵へ売却。

 理由は、説明されなかった。

 ただ「そうなった」だけだ。

 ***

 契約書を渡されたのは、その後だった。

 羊皮紙。

 魔界式の正式な雇用契約。

 内容を読んで、眩暈がした。

 ――最低賃金以下。

 ――休息日、なし。

 ――命令違反は即時契約破棄(違約金あり)。

 ――任務内容:前線斥候、諜報、物資運搬、暗殺補助。

 その代わりに、たった一行。

 「賃金の一部は、指定対象〈クリフ〉の購入資金として積み立てる」

 「積立額が購入額に達した場合、対象を解放する」

 ……ふざけてる。

 そう思った。

 でも。

 震える指で、署名した。

 他に選択肢は、なかった。

 ***

 契約後、すぐに仕事が始まった。

 前線。

 魔王軍の補給路。

 危険地帯の索敵。

 忍びとしての技術は、役に立った。

 評価も、悪くなかった。

 だが――報告書が、定期的に届く。

「奴隷拳闘士・クリフ」

「本日の試合:勝利」

「損傷:肋骨二本、内出血」

 別の日。

「勝利」

「右腕負傷」

「次戦は三日後」

 胸が、締め付けられる。

(……急がなきゃ)

 積立額を確認する。

 ――全然、足りない。

 どれだけ働いても、

 どれだけ危険な任務をこなしても、

 購入額には、かすりもしない。

 ***

 私は、忍び込んだ。

 魔王軍だけじゃない。

 王国の教会。

 軍部の倉庫。

 記録室。

 情報を盗み、売り、契約条件の穴を探した。

 でも――。

(……ダメだ)

 金額が、あまりにも高すぎる。

 最初から、自由にする気なんてない。

 そう思った瞬間、心が折れそうになる。

 それでも。

 私は、拳を握った。

(泣くな)

(諦めるな)

 だって――。

(私は、忍びだ)

(そして、あの人の弟子だ)

 ***

 夜。

 魔王軍の拠点の屋根を、影のように移動する。

 今日の任務は、情報収集。

 王国側の動きの確認。

 ――そこで。

 見えた。

 フードを深く被った、ひとりの男。

 物資帳簿を確認し、

 警備の隙を読み、

 魔族と自然に交渉している。

(……あれ、は)

 胸が、跳ねた。

 間違えない。

 あの背中。

 あの動き。

(……師匠)

 ネコルトが、魔王軍の中にいた。

 その姿を見た瞬間。

 心の奥に、灯がともる。

(まだ、終わってない)

 ミーニャは、静かに息を整えた。

 助けは、来る。

 きっと。

 だから――。

(私は、折れない)

 闇の中で、忍びは再び走り出した。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ