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『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第四章 第十五話 誓いと近衛兵団、そして魔王領へ

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 夜の軍部武具庫。

 灯りは最小限に落とされ、金属の匂いと静寂が支配していた。

 帳簿を閉じた、そのとき。

「……師匠」

 聞き慣れた声。

 かすれていて、それでも確かに、懐かしい声。

「……ミーニャ?」

 忍装束の少女は、以前よりも明らかに痩せていた。

 目の下には濃い隈。唇は固く結ばれ、指先がわずかに震えている。

「生きて……たね」

 その一言を口にした瞬間、ミーニャは堪えきれず肩を震わせた。

「よかった……本当に……」

 ネコルトは言葉を失った。

 駆け寄り、肩に手を伸ばす――だが、ミーニャは一歩だけ後ずさる。

「……長くは話せない」

 そう前置きして、彼女は一気に言った。

「クリフが……捕まってる」

「魔王領の、コロシアム」

「奴隷拳闘士として……」

 胸の奥を、鈍い衝撃が貫いた。

「生きてはいる。でも……」

「勝たなきゃ、生き残れない」

 ミーニャは拳を強く握りしめる。

「私は……クリフを買い戻すために、魔王軍と契約した」

「前線に出て、情報を集めて、働いて……」

「裏切れば、その積立は全部無効になる」

 声が、かすれる。

「だから……私は、裏切れない」

 沈黙。

 そして、震える声で――。

「……助けてほしい」

 それは、懇願だった。

 ネコルトは、一切迷わなかった。

「――二人とも、必ず助ける」

 静かに、だが確かな声で言う。

「契約も、檻も、全部壊す」

「君が一人で背負う必要はない」

 ミーニャは目を見開き、次の瞬間、ぽろぽろと涙をこぼした。

「……ありがとう」

「やっぱり、師匠だね」

 深く頭を下げる。

「……気をつけて」

「魔王軍の中にも、私を縛っている連中がいる」

 それだけ告げると、ミーニャは闇に溶けるように姿を消した。

 残されたのは、重たい沈黙だけだった。


 翌朝。

 ネコルトは第十師団長ラグナと共に、軍部上層の執務室へ呼び出されていた。

 机の向こうに座るのは、将軍バランドス。

「――で?」

 腕を組み、露骨に不機嫌そうな声。

「商工会を通さない武具調達だが」

「おかげで、他の物資の割引率が下がった」

「商工会から苦情が来ている」

 将軍は視線をネコルトに向ける。

「国軍すべてを、その“リース”で賄えるのか?」

 ネコルトは、首を横に振った。

「無理です」

「供給力も、整備人員も足りません」

「ならば」

 将軍は即断した。

「第十師団は、リースをやめろ」

 その瞬間。

「それは困りますわ」

 凛とした声が、扉の外から響く。

 現れたのは、王女シレッタだった。

「第十師団は、今後、国軍を離れます」

「私の近衛兵団として再編します」

 室内が、凍りつく。

「……近衛、だと?」

「はい。王命です」

 将軍は数秒沈黙し、やがてゆっくりと頷いた。

「……ならば、商工会にも弁明が立つ」

「国軍の装備ではない、ということだな」

 立ち上がり、去り際に一言。

「それと――」

「冒険者ギルドを潰してくれた件、礼を言っておく」

「貴族の私兵団が、ずいぶん弱体化した」

 それだけ言い残し、将軍は去った。


 廊下で、王女は静かに語った。

「将軍は国防第一の方です」

「勇者一行に特別な感情はありません」

「これまで、有力な冒険者が貴族の私兵団に流れていました」

「国にとって、危険でしたから」

 ネコルトは苦笑し、深く頭を下げる。


 その後。

 第十師団改め――王女近衛兵団の兵舎で。

「……魔王領へ行きます」

「仲間を、助けに」

 ネコルトの言葉に、ラグナは即答しなかった。

 やがて、短く言う。

「――一月だ」

「ここで鍛えろ」


 訓練は、過酷だった。

 勇者たちの武具。

 スポンサー冒険者から徴収したスキル。

 それらを使っても――。

「……正直に言う」

 ラグナは腕を組む。

「戦闘センスが、ない」

「知ってます」

 ネコルトは苦笑した。

 それでも、諦めなかった。

 戦うためではない。

 生き残るための訓練。

 距離。

 撤退判断。

 武器の切り替え。

 逃げ道の確保。

 一月後。

 ラグナは、静かに頷いた。

「……行け」

「死なずに帰ってこい」

 ネコルトは、深く一礼する。

 こうして――

 金融商ネコルトは、魔王領へ向かう。

 仲間を、取り戻すために。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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