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【第三部】黒瞳少女は帰りたい 〜独りぼっちになった私は、故郷を目指して奮闘します〜  作者: 笛乃 まつみ
第三章 ルッツィ孤児院

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19. 森へ

 ルッツィ孤児院での新しい生活は、思っていたよりも順調に進んでいた。

 孤児院の皆は、突然現れた私に対して嫌な顔一つすることなく、温かく受け入れてくれた。私がここに来た経緯についても特に聞かれることはなく、ここの子供たちにとって、新しい子供が増えることは日常の範囲内なのだろう。

 着替えの一つも持っていなかった私は、余っている服や下着や靴下などを貰って、着たきりではなくなった。


(ベルラさん達に用意してもらった服は、娼館から逃げる時に置いてきてしまったのだよね……)


 娼館に取りに戻ることも考えたのだけれど、マリサさんに止められたのであの服は諦めた。そもそも、荷物が残っているとは限らないしね……。


 孤児院では、私を含めた身寄りのない子供九人と、院長先生であるマリサさんの総勢十人で生活をしていた。ご飯の準備、洗濯掃除、菜園の世話、小さな子達も含めて皆が皆それぞれに分担して仕事をこなす。

 成人に近い年長の男の子二人は、割り振られた仕事を終えた後は日雇いの仕事を探しに商業ギルドへ。年長の女の子は、孤児院で内職をしつつ年少の子――洗礼式を迎える前の小さな子のお世話。そして、その中間の年中の子は、薪や食べられる物の採集のために街を出て近くの森へと向かう。

 雨が降ったり天気が悪ければ予定は変わるけど、孤児院の生活は基本的にそんな感じだった。


 孤児院で生活をするようになって四日目、私は初めて街を出て孤児院の皆と森へ向かった。この四日間は、孤児院での生活に慣れたり、街のどこに何があるかを同じ孤児院の仲間に案内してもらったりしていた。そして今日ついに、森へ行く事をマリサさんが許可してくれたのだ。

 私はうきうきしながら籠を背負って、皆と一緒にまずは東門へ向かった。私達が向かう森は東門を出た先にあるため、森に行くときはこの東門から街の外へと出るみたい。

 ちなみに、私が一番最初にメルクリオの街に入った時に使った門は南門である。


「おはよう」

「おぉ、お前らか。今日も精が出るな」


 年中の子ども達は私も含めて四人。年中のリーダーになるフレドが、門兵に挨拶をしていた。

 フレドは私が孤児院に来た時にマリサさんに取り次いでくれた赤茶色の髪の少年で、この春に十一歳になったらしい。


「ん? お前ら、いつもより一人多いな」

「この前に孤児院に入った子だよ。アリーチェっていうんだ」

「ふぅん、歳は?」


 そう言って門兵は私をジロジロと見る。私は一歩前に出て「十一歳です」と答えた。


「アリーチェ、十一歳ね。分かった、伝えておこう」


 門兵は何処かから紙を取り出すと、私の情報をさらさらと書き込んだ。おそらく、門兵が途中で交代した場合でも、私の出入りを伝達できるようにするためだろう。

 外部の人間が街に入る時はお金が必要だけれど、街の住民はもちろん例外で出入りは自由。孤児院の子供は、一応は街に属するため、出入りにはお金が掛からないのだとフレドが教えてくれた。

 ただし、外部の子供が孤児院の子供だと偽って入らないように、孤児院の子供が何人街を出たという記録が重要みたい。私は特に新顔だから、年齢や性別、髪の色とかも控えられているのだと思う。


「門兵さんたちが顔を覚えてくれたら、聞かれることはなくなるわ。それまでの辛抱ね」


 そう言って私の隣を歩くのは、八歳になる女の子、アガタ。年中組は女の子が一人しかいなかったから、おしゃべりの相手が増えて嬉しいみたい。

 東門を出て、アガタとおしゃべりしながら道なりに少し進むと、左側に大きな森が見えてきた。ここが普段孤児院の皆が採集に来ている森みたい。アガタとフレドの説明を聞きながら、私達は森の中へと足を踏み入れた。


「ねえ、アリーチェは本当に獲物を捕まえられるの……?」


 年中組の最後の一人、七歳になったばかりのチーロが疑問を投げかけた。チーロは私が持ってきたお肉を一番喜んでいた男の子だから、お肉が食べられるかどうか、とても気になるのだろう。


「絶対ではないけれどね。この森はかなり広いから、ちゃんと仕掛ければ捕まえられると思うよ」

「うわぁ、楽しみ!」

「あんま期待するなよ。捕まえられなかった時のショックが大きいだろ」


 チーロの喜び様に、フレドが横から釘を刺す。そんな心配しなくても、私も本気なので少なくとも二、三日もあれば最低でも一匹は捕まえられるのではないかと思っている。


「あら、この森って野ネズミとか野ウサギとか、動物をよく見かけるって聞いているから、何とかなると思うよ」

「見かけても簡単には捕まえられねぇけどな」

「もう、せっかくアリーチェが捕まえようとしてくれてるんだから、フレドは邪魔しないの」

「邪魔はしてねぇ……」


 アガタがさらに横から入って、フレドは口を閉じた。ちょっと拗ねるフレドの様子から、期待が増えれば私への重圧が大きくなるだろうと、気にしてくれたのだろう。口調は乱暴だけれども、気遣いのできる子である。


 森を歩いていると、何処にどういう草や実があるのかを、各人が丁寧に私に教えてくれる。今日はまとまって行動しているけれど、普段はもう少しバラけて分担して採集をしているみたい。

 カメリアの実を拾い、食べられる野草を摘んでいると、フレドが手を動かす合間にチラチラと私を見る。


「アリーチェ、何で罠を仕掛けないんだ?」

「罠は何処でも良い訳じゃないんだよ。仕掛けるなら、ちゃんと場所を選ばないと」

「そういうものなのか」

「まずは、地面や藪、岩や木の陰を観察して動物の痕跡を探すの。動物の通り道や餌場、隠れ場所になっている所を見つけたら、罠を設置する感じだよ」

「なるほどな……」


 思っていたよりも真剣そうな返事がフレドから返ってきた。


「あとは、人が頻繁にいるような場所にはあまり近寄らないから、設置するならもう少し静かな場所がいいね」

「なら、次に行く途中に繁みが広がってる場所があるから、そこならちょうど良いかもな」

「じゃあ、そこの案内もお願い。もし痕跡があれば、罠を仕掛けてみるよ」


 ここでの採集が終わると、次の採集場所に行く前に言っていた繁みへとフレドが案内してくれた。

 小動物が隠れるにはちょうどいい場所みたいで、野ウサギの足跡を見つけた私が罠を設置すると、フレド達が興味津々に私の周りを囲む。


「凄い、それっぽいな」

「うんうん、ただのロープと木の枝なのにね」

「ねぇ、何で葉っぱを擦り付けてたの?」


 フレド、アガタ、チーロがそれぞれ思い思いの感想を口にする。チーロは私が繁みの葉っぱをロープに擦り付けていたのを不思議に思ったみたい。


「孤児院にあったロープだからね。動物たちが匂いに違和感を感じないように、この繁みの葉っぱで誤魔化しているんだよ」

「わぁ、なるほど」


 私が繁みに設置したのは、ロープを使った簡単なくぐり罠だ。私は数種類の罠を知っているけど、その中で一番手軽に設置できるのがロープを使った罠だった。

 道具さえあれば小さな矢が飛び出す罠もいいかもと思っていたのだけれど、どうやら今いる森では、矢や槍などを使った狩りは禁止されているみたい。狩猟が許されるのは、もう少し森の奥に行ったところって決まっているのだって。そういう事もあって、今日私が準備したのはロープを使ったくぐり罠だけだった。

 ちなみに、私が春に魔獣を仕留めた罠は、投げ矢罠だったりする。投げ矢罠ができれば中型の獣も捕まえることができるのだけれど、禁止されているなら仕方がないよね。ちょっとだけ残念に思いながら、私はその繁みの中に二つの罠を設置したのだった。


ここに来て、アリーチェの罠猟スキルが活躍します。

手に技術があると、強いですね。

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