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三之マリナの契約事情  作者: 流通
亜久良の運命は刹那に続く
6/8

魅力とヴァンパイアとゴスロリ少女と

今年最後ですかね〜……中々更新できなくてすみません。

では、今年最後の「三之マリナの契約事情」をお楽しみ下さい!

「真の、亜久良あくら研究所……」

「えぇ」

そう言ってマリナは室内のど真ん中を歩き出す。堂々と部屋を歩いているにもかかわらず研究者達は一切気にも止めない、なんとも異様な光景だった。

先頭を行く彼女は研究者達の運んでいる液体や実験している姿をじっくりと見ながら何か呟いている。

反対側の壁の扉の前に着くと、マリナは躊躇ためらいなくドアを開けた。

そこは、ついさっきまで居た研究室とは思えない部屋だった。アンティークな家具などが置かれており、洋風の館のような雰囲気の部屋だった。

奥には机があり、その上に資料やら日記やらが散らばっていた。

「ここって……」

「分からないわ。でも、何かありそうよね。ここら辺漁っていい感じのあったらそれ持って帰りましょう。」

そう言いながらマリナは日記をめくり始めた。

「そんなんでいいのか…?」

「帰ってお父様に伝えれば直ぐに警察を手配してくれるでしょう…日本の警察は優秀だと聞いたわ。それに…」


言いかけた時、後ろのドアが蹴破られた。

「「っ!?」」

入ってきたのは男の研究者だった。その目は()く、歩き方からして彼はもう正気では無いのだろう、足元がフラついている。

マリナは今まで着けていたアイマスクを外す。


「詠月、宣言撤回。これは…いくら優秀な警察官でも無理な相手だ。」


ニヤリと笑いながらいつもと違う口調のマリナの目は()く光っていた。


魅惑テンプ……魅了アラクティブの1つ上の状態で、本人の内の性格が出る………。」


詠月は目の前の状況から目を背けるかのようにマリナから言われた魅惑テンプの説明を復唱している。

いつもお嬢様口調のマリナから放たれた言葉はそれ程までに衝撃的だった。

戦い方も先日帰り道に言っていた自分が汚れないように遠距離から攻撃する方法では無く、自分から距離を詰めて至近距離で戦っている。それに、


「それに…魅惑テンプは人間をヴァンパイア並に強くするって言ってたよな…もしヴァンパイアが魅惑テンプを使ったらどこまで強くなるんだ…?」


目の前では男とマリナが激しい近距離戦闘を繰り広げている。マリナの蹴りを男が素手で受け止め、男の殴りをマリナが素手で受け止め。そんな激しい戦いを横に研究者達は歩みを停めず働き続けている。詠月を置いてそれぞれの時間が過ぎる。


そして、激しい戦闘をしている2人は──笑っていた。


心の底から楽しんでいるような、そんな表情だった。目の前にいる彼女はマリナじゃない。詠月は直感的にそう感じた。これが彼女の内側?あのお嬢様がこんな戦闘狂を内側に隠していたというのか。流石はヴァンパイアを取り締まる一家の長女とでも言うべきか。詠月は息を、瞬きをすることも忘れて2人の戦闘を静かに見ていた。

直後、男が投げたナイフがこちらに飛んできた。間一髪避けれたが、改めて思い知らされる。


俺は観客じゃない、その場にいるんだ。


フィクションでもない、今目の前で戦っているんだ。


ここに安全地帯など無いのだ。


俺も加勢しないと。見守っているより戦った方が気持ちを落ち着かせられるかもしれない。

震える足を手で抑えながら先程飛んできたナイフを壁から抜き取り加勢する。

突然の詠月の加勢に男は驚き舌打ちをする。

マリナは、ニヤッと笑い「遅い。」と一言、その言葉で先程までの緊張は一気に解けた。

「2対1なんてずるいぜお嬢ちゃん。」

「何を言う、此処の研究者達全員が私達の敵だ。そう考えると2対数百人でそちらの方がずるいではないか。」

「はっ!戦闘が得意な上に頭まで回るとは、とんだ嬢ちゃんだぜ。」

男が間合いを詰める。俺は咄嗟とっさ魅了アラクティブを発動させ、ナイフと自分を〖強化〗し構える。マリナも同じように自分自身を強化し構えた。

男が詠月を押し倒す。

(こいつっ!!力が強い!!)

押し倒されて殴ら──マリナが横から蹴りを入れた為間一髪で避けられた。

「ありがとよ…。」

「詠月、あいつに倒されるなんて弱すぎるんじゃないか?」

「はっ、マリナが強いだけだろ。」

そんな会話をしながら立ち上がり男に向き直る。すると素早くマリナが俺のナイフを奪い男の体に突刺した。

「うっ……あ……」

しばらく唸っていた男は声も出さなくなった。

「は、ははっ俺らって人殺しか?」

「そんな訳無いじゃない。襲ってきたのはあっちよ?立派な正当防衛よ。」

「お前、目が……それに口調も……」

「あぁ、久しぶりの戦闘だから能力を解放しすぎたわ。次からは魅了アラクティブで戦えるようにしないといけませんわね。」

「次から気をつけろよ。急にされるとこっちも驚く」

「分かりましたわ。ですが、ここはもう少し探索しないといけないわね。この男もヴァンパイアに操られていたみたいですし、間違いなく此処のどこかに操っているヴァンパイアが居るでしょうね。」

「早く帰れると思ったんだがな……。」

「早く帰りたいなら行きましょう。」

詠月達は半分程破壊されたアンティーク部屋を後に研究室を出て隣の部屋へと入っていった。

「マリナ……ヴァンパイアに操られた人間は殺す以外に解放する方法は無いのか?」

「無いわよ。ヴァンパイアに操られたらもう終わり。死ぬまで働かされるわよ。いくら骨が折れようと、いくら病気にかかろうと。」

「そうか……。なんかこう、操っている主が死ねば…とか無いのか?」

「主が死んだら操られてる人も死ぬわ。結局、死ぬ以外の方法なんて無いのよ。」

「本当、世界って残酷だな。」

「あら、今更気付いたの?」

そんな会話をしながら部屋の中を探索する。

そこは物置のような場所で、鉄骨の棚にフラスコやケーブルなど様々な物が置いてあった。

「ここは特に何も無いな……」

「そうでも無いわよ?これを見て。」

そう言ってマリナから手渡されたのは、タブレットだった。マリナは素早く画面を操作すると動画が映し出された。そこには白衣姿の男が椅子に座っている映像だった。

『人間は武器を持ってして戦おうとしても勝てないものがある。




ウイルス。




ウイルスとは未だに未知のものが何万、何百万とある。ウイルスという存在は非常に小さく肉眼だけでは見えない。だが、非常に繁殖性があるものだ。世の中には『遺伝する』というウイルスもある。ウイルスとは何なのか、それは未だに分からない。


さて、話がつまらなくなる前にここで一旦切っておう、このまま話を続けていたら飽きてしまうからね。ウイルスという存在は本当に素晴らしいものでね、ときに生命の無いものを動かすことだって出来るんだよ、不思議だろう?そして人間にだって超人じみた能力を付与することだってある。ただ・・・ウイルスの感染によって超人化した人間が犯罪に使うなんてしたら・・・そこは、君達のご想 像にお任せしようかな。さて・・・そろそろ急がなくては。じゃあまたお会いしようじゃないか。』

そこで映像は途切れた。

「なんだこれ?ウイルス?」

「分からないわ、でもこれは持ち出した方が良さそうね。」

「そうだな……映像からして昔か?崩れる前の研究所かここ?」

「そうね……少なくとも5年前、いや3年前かしら…?」

「3年前って……」

「ただの憶測よ。」

「そうだよな。」

しかし気になる単語をいつくか言っていたな……。まぁ今は関係無いだろうから良いか。

「もうここは無いみたいね、次の部屋に行きましょうか。」

「ああ。」

部屋を出て左に進むとT字の通路に出た。お互いに反対方向に道が伸びている。

「マリナ……」

「えぇ、分かっているわ。別れましょう。」

「っ!いいのか?」

「確かに、ここはヴァンパイアの住む研究所(しろ)ですが詠月は魅了アラクティブを使いこなしているもの。心配しなくていいわ。だけど……無茶はしないで。何かあったらすぐにわたくしを呼んでくださいまし。それが約束できるのなら別々に移動致しましょう。」

「あぁ、分かった。」

「健闘を祈りますわ。」

そう言ってマリナは迷わず右の通路へと走って行った。俺はしばらくマリナの背を見たあと振り返り反対側の左側の通路を歩き始めた。


◇◇◇


本当は、心配だった。

詠月と別れてから30分以上経った今、三之マリナは少し後悔していた。

心配だったけど詠月ならやってくれるだろう。そう考えて別々の行動をとることを選んだ。でもやっぱりわたくしは心の中で別々に行動することに抵抗があった。せめて逃げ道が、希望がある方に詠月を行かせたかった。だから詠月が行動する前に()()()()()()()()()()()()右側の通路に行った。左側は特になんの気配もしなかったから大丈夫だろう。

魅了アラクティブを発動させ戦闘態勢に入る。

ここからは注意して進まなければならない。いつここの主…ヴァンパイアが向かってくるのか分からないからだ。

「詠月は大丈夫でしょう。心配するならわたくし自身の心配をしなければいけませんわね。」

読んで下さりありがとうございます。

来年も「三之マリナの契約事情」をどうぞよろしくお願い致します……!!

年越す前辺りにもう1つの小説……「色旗詠月の生活事情」を書けたらいいなと思っております!!

ここでは、「三之マリナの契約事情」では描けないようなコメディ全振りの話や細かい設定、裏話などを書ければなと思います!!!

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