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3章 「奴の名はマンティス 3」

 マンティスは時折違うビルの屋上から飛び立ちながら、悲鳴が聞こえた大学の方へと向かう。飛び立つ度に、地面が割れ、マンティスの力を象徴する。


 やがて、大学が見えた。空中から、その聴覚で声が聞こえた。


「……もう我慢ならん! お前ら、全員殺してやる!」


 先程の化け物が戻ってきたのか、今度は大学中の人々を殺す方向に動いている様だ。……近くには、同じ大学の学生らしき女子もいる。……止めなくては。


 マンティスは空中で攻撃の体勢をとると、化け物に向かって高さ数十メートルからキックを放った。


 化け物は空中からの攻撃に気付く訳も無く、攻撃を喰らい、学舎の壁に向かって吹っ飛ばされた。


「……な、何だ……? クソォ!」


 化け物はキックに怯みつつも、歪む視界の中、確かにその敵を捉えた。緑色の目と筋肉。身体に刻まれた青色の稲妻模様。毅然と化け物を見つめている。


「……ちいっ、貴様何者だ!!」


 マンティスは右の拳を固く握り締め、振り下げた。


「……僕は、人類の味方……。インセクターマンティス、それが僕の名だ!」


 周りの人々がその声にどよめき、スマートフォンを取り出して写真を撮り始める。


「……くそ、ふざけた事を言いやがって……。覚悟しろ!」


 化け物は震える足を抑えながら、マンティスに向かって突進してくる。それを見つめながら、マンティスは戦闘態勢をとった。


「……」


 身体がぶつかる瞬間、マンティスは両腕についているカマキリの様な鎌を薙ぎ払った。突進は当たらず、彼を通り過ぎた化け物が、身体から黒い液体を吹き出して怯む。


「……ぐうっ……。卑怯な真似をしやがって!」

「……ならばこちらからいこう」


 その瞬間、マンティスは背後のやや遠くにいた化け物に向かって跳躍し、目の前に立つと猛烈なパンチの応酬を繰り出した。


 動きが早く、周りの人々には腕が幾つにも分裂して見えている。


「畜生! 動きが……早すぎる!」


 化け物の言葉には耳も貸さず、マンティスは最後にもう一度腕の鎌で化け物を吹っ飛ばした。黒い液体を地面に撒き散らしつつ、遠くに倒れる。


「……これで終わりだ」


 そう言うとマンティスは先程変身するのに使ったシックルを取り出し、トリガーを押した。


「Mantis Strike!」

「……マンティス・ストライク」


 腕の鎌が青色に発光し始める。マンティスがそれを思い切り化け物に向かって振ると、鎌からエネルギーが飛び出し、倒れていた化け物を斬った。

 ……断末魔をあげ、気付いた時には化け物の姿は無くなっていた。……どうやら、教師は完全に消滅してしまった様だ。


「……はあ」


 だが、マンティスは一件落着した事を察し、必殺技を撃った時から固まっていた体勢を元に戻し、一息ついた。


 周りの人々は、この事件の衝撃さから、彼を褒め称える事も出来ずに、ただ呆然としていた。


 化け物の肉体は溶けて、空気が抜ける様な音を出し燃えている。……その炎で歪んだ視界の先に……別の男が見えた。


「……ん? 何だ……」


 目を凝らすと……そこには背の高い黒いロングコートを羽織り、まるでハリガネムシが巻きついた様な仮面を付けたオトコが立っていた。


「……実にお見事だった。……インセクター、マンティス」


 男の声は、ボイスチェンジャーでも使ったかの様な人ならざる声をしていた。


「……何のつもりだ」


 マンティスは、先程の戦いで付いた黒い液体を拭いながらそう返す。


「……貴方が先程倒した……『エンヴィーワイヤーワーム』……。私が作った自信作だったのだが……。やはりそう上手くはいかない、か……」


 男は独り言を話すかの様にそう喋り続ける。


「……だが、私達……『ワイヤーワーム族』に仇なす者は、排除しなくてはならない」


 そう言いながら、彼はロングコートの懐から、ベルトを取り出し、装着した。ベルトには透明なカバーの様な物が付いていた。


「……何者だ」


 マンティスが臨戦態勢を取りながら、そう質問した。辺りもどよめきだし、先程の反省から皆ここから離れ始めている。


「……I……愛……哀……。I、ワーム、だ」


 彼はもう一つ、大文字のIの形をした黒い棒を取り出した。そしてそのIの文字を折り曲げ、一本の棒に変えると、ベルトの蓋を開き、中に入れた。


「FIRE……」

「……チェンジ……Iワーム」


 Iがベルトを叩いた。瞬間、中に入っていた棒が回り始める。


「Coming……I.Worm」


 ベルトから沢山の黒い棒が溢れ出す。それはIを包み、段々と異形の肉体へと姿を変えていく。……そして、肉体全てがワームで覆い尽くされ、顔すらもワームで覆われた。……その目は、赤色に光っている。


「……ふう……」


 未だ羽織っているロングコートが、風で靡いた。ゆっくりと、マンティスの方へと向かってくる。


 マンティスは構えて近付くのを待った。……しかし。


「……消えた……?」


 一瞬にして、Iが消えた。慌てて辺りを見るが、何処にも居ない。……その瞬間だった。


「……何処を見ている?」


 声が聞こえたと思うと、マンティスは背後から強烈なパンチを食らった。……先程のワイヤーワームとは比べ物にならない程威力が高く、マンティスは前に吹っ飛ばされた。


「……うがあっ!」

「……私はここだ」


 どうやらIは、その場を瞬間移動出来る能力を持ち合わせて居る様だった。……これでは、太刀打ち出来ない。手の内を明かしたIは、近付きながらも、右へ、左へ、位置を変えながら予測不可能に向かってくる。


「……こいつ……!」


 ……もはや、これまでかと思った。……次の瞬間。


「おい!! 真也!! 鎌足真也!!」


 唯一、マンティスの事を鎌足真也と呼ぶ物が居た。声のする後ろを振り返ると、マンティスと同じカラーリングをした、七メートル程の大きさのカマキリが近付いてきた。


「……さっきの、彼奴!」


 マンティスは何となくあれがプレイだと察していた。プレイが到着すると、急いで鎌を器用に扱いマンティスを背中に載せた。


「いいか真也! あいつは俺達にゃ手が出せねえ! 逃げるぞ!」


 そう言って向かってくるなよ、とIに吠えて威嚇してから、プレイは飛び上がって、何処かにマンティスを乗せて逃げた。


 一人残されたIは、変身を解除して、呟いた。


「……逃してしまった」


 遠くに離れていくプレイを、じっと見つめていた。

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