step.15 アリスの知らないSEKAI 2 screen
「やっぱりぃ~、だあれもおらんじゃん。あぁ~キャンプファイヤーは、あるね」
「...毎度のことですんが、今回は、Campですんかぁ...でもぉ、遅刻したらぁ、したでぇ、えらい目ぇ合いますんよぉ?」
「...まぁね」
ヨルムンガルドは、ふっと笑って、時計ウサギを見る。時計ウサギは、なぜか、お尻を隠す。
「さぁ~て、SLにずっと乗っとるとぉ~、座るとこぉ~固うてぇ~お尻が毎度痛うなるしぃ、ずっと同じ所ぐるぐるされても、やっぱぁ~つまんなぁ~い。狛、降りるよぉ~」
ヨルムンガルドは、隣にいた時計ウサギを、むんずっと、首根っこを掴んでから、脇に抱え、開けっ放しの窓を潜り抜けると、勢い良く飛び降りた。
すると、落下するヨルムンガルドを、大きな耳のアフリカゾウの赤ん坊が、空から舞い降りて、背に乗せた。
「ダン◯、久しぶりぃ~!なぁ~にぃ、気狂いの気まぐれに付き合うて、もこもこフライトキャップにぃ、かわぁええ!!Mにモン◯ベアが、ちっちょう隠れるぅ!かわぁ!!リスペクトぉ!」
パチンと、指を鳴らせば、ヨルムンガルドは、もこもこボアベストを、身に付けた。
「いや、あんさん、それ、メイプルリーフですんし、LOGO◯やん!!どこぉ、リスペクトぉ!」
アフリカゾウのダン◯の肌を、愛おしそうに撫で撫でしながら、ケラケラ笑う、ヨルムンガルドに、眉間に小皺寄せて、歯を剥き出しで、ぺっぺ、ペッペ早口で、ツッコむ時計ウサギは、いまだ、脇に抱えられているため、説得力のかけらもない。
二人の漫才みたいなのが続いて、二人が自分の足で地上に降りた時には、ダン◯は、炭水車の側面、パレオパラドキシアの金色エンブレムが描かれた、四角いナンバープレートに583635972と表示された、ヘッドマークには、上がHpLGHsCで、下はEXPRESSと、カッコよい文字の、絵柄はRX-78-2の白兵戦用MSが描かれている、C58形蒸気機関車12系客車と共に、天の川を走って、消えた。
漫才コンビみたいな二人は、夜の帷から、輝く赤煉瓦造りのTOKYO駅から、駅舎のドームへと、入っていった。
中は、芸術的な内装のMARUNOUTI駅舎を忠実に再現しているが、天井の十二支の彫刻だけが、シャーマナイトでできたレリーフとなっている。
フロアは、石でつくられた、幾何学模様となっていて、三日月のような半円を描き、七席、独創的で個々に主張が激しい、キングチェアが並ぶ。
その七席の反対側、中央に、一際大きく、黄金に輝く、キングチェアが、置かれている。
そのキングチェアは、一際、禍々しく、般若の仮面を斜めに被った骸骨が、チェアの背もたれを押し潰せんと絡みついて、噛みついて、火の玉を吐き出し、その炎が、チェア全体を燃やしているような、イカれた、デザインだ。
背もたれには、鶴のような姿だが、一本足で、炎を喰らう、不気味な感じで描かれている絵が、ある。
それとは対照的に、そのチェアと、七席のちょうど、ど真ん中に、小さい子供が、ファミリーレストランで座るようなイスが二脚、横並びで並んでいる。
クッションの白い方には、阿、という漢字が、黒で草書書きされている。
逆に黒い方には、白で、吽、を草書書きされていた。
ヨルムンガルドは、脇に抱えていた時計ウサギを、遠慮なく両手でぽっいっと、弧を描くように、中央、ど真ん中イスへと、投げた。
時計ウサギは、いつものことのように、くるりとイスを上手く使って、ムーンサルトで華麗に着地。
それを、移動しながら見ていたヨルムンガルドは、花紫色の、しなやかで美しく、女性のような丸みと、華奢さを感じるキングチェアの前で、小さく拍手し、すっと、流れるようにしゃがむと、囲うように弧を描いた肘掛けの左側へ、誰かに寄り添うように、気怠げに、座った。
シーンと、音がなくなり、静まり返った。
その次の瞬間、
キンコンカンコン、キンコンカンコン
と踏切の音だけが、部屋中に響き渡る。
ひとしきり、警報のように鳴り終わると、ピタッと、音が鳴り止み、静寂。
TOKYO駅の中は、何も変化はないが、外は、音もなく、全体は白いが、赤い、リボンをした猫と、カラフルだが落ち着いたモダンな、和テイストの植物の柄が描かれた、271系の空港連絡特急列車が、一本、天高く、煌めく天の川を、滝が落ちるが如く、勢い良く、下ってきた。
闇夜に、光り輝く一線が、引かれる。
そして、それに続き、エバーグリーン色の前面が頑丈そうな、クルーズトレインでMの字に、右の天使がラッパを吹いているロゴマークが入った87系気動車と、頭部に太い青ラインが入ったE7系の新幹線が、一線を、両サイドから挟むように下り、その三本を追いかけるように、艶のある、黒い車体の787系の特別急行列車が下ると、四本が横一列に並んで、下っていく軌道が、円を描くように、周り出す。
そこへ水星の如く、一直線、落ちてきたのは、車体の横の星形のロゴマークが印象的で、ロイヤルワインレッド色のDF200形の周遊型臨時寝台列車。
輪を突き抜けると、軌道をグンと変えて、上へ登り、ぐるっと一回転。
スピードが乗っているのもお構いなく、各列車から、一斉に、人が、飛び降りた。
それを地上から、停車した真白い車体に、綺麗な青いラインが入った、フルキャブハイルーフの大型トラックの運転席から、上半身をぐぐっと乗り出し、上空を、子供のように目を爛々と輝かせ、見つめているウサギが、一匹。
そのウサギも、両耳に太陽と、太陽光が十二線描かれた耳飾りをし、緑と黒の市松模様羽織を羽織った、コスプレをしている。
無数の獣が、轟然と、吠える。
上空、天の川から、七体の獣が星屑を散らしながら、飛び出してきた。
1966と書かれた、ハートドームのロゴが入った、飴色のカルフォルニアハットを被り、アイボリー色の、口のデカイよく分からない生き物は、アルグルボサを、青字の縫製品を表したロゴマークの、可愛いトライバル柄のネックゲイターを首にした、のっぺりとした顔で、愛くるしい羽根の生えたケルベロスは、フェンリルを、ペンギンロゴが入ったグレーのデイパックを背負ったロイヤルペンギンは、ヘルを、アスターリスクのロゴマークが入った、黒のオーバーオール風な、アウトドアベストを着たやる気のないパンダは、シギュンを、ランタンのロゴマークが入った、黒のフライトキャップを被った、真っ白で綺麗な毛並みのグレート・ピレニーズは、ビューレイストを、顔のみウサギのロゴマークが入った、赤白帽の白キャップを被ってゴム紐を垂らした、赤橙色の九尾は、ナリを、上手くキャッチして、それぞれ背に乗せ、TOKYO駅へ。
一列になって、星屑を蹴り散らしていけば、そこが新たな天の川で、軌道となる。
その軌道を、随分後から、大トリとして、星屑を派手に散らし、登場したのは、血のように朱い、まん丸な虚な目に、真っ白な猫のようだが、耳の中から毛先が桃色に染まった、長い毛に、ゴールドリングを嵌め、ふさふさで、異常に長いしっぽ、背中のショッキングピンク色の卵型模様が、得体の知れなさを感じさせる生き物の背に、ロキは跨り、踏ん反り替えったような姿勢で、狩でもするかのように、前を、追い立て、駆け込んでいく。
キングチェアを外から、円陣のように囲い、六体は降り立つと、直ちに、六人は流れるように、美しく飛び降りた。
そこへ、ロキが、登場。
察して、空になっている、ど真ん中のイスを、勢い良く、木っ端微塵に破壊して、中央ど真ん中に、降り立つ。
床に、七本の歪なヒビが、雷の如く入り、ロキは、ゴールドリングを手早く抜き取ると、上空へと飛ぶ。
左手に持ったゴールドリングが、急に黄金の炎に包まれ、大きく輪を広げる。
にやっと、不気味に、ロキの口角が上がり、その、燃え盛る輪を、地面に叩き付ければ、ロキが乗っていた生き物は、蒸発したみたいに、一瞬で消滅。
その燃え盛る金の輪は、床に、強く印を刻み、その余波で、爆風で、紅焔が燃え広がり、獣六体、一気に墨にし、焼却させた。
ロキが左腕を高く上げ、パチンと、指を鳴らせば、一瞬でその紅焔も、木屑さえも、きれいさっぱり、消却した。
ドヤ顔のロキの横で、いつの間にか、左右にウサギが並ぶ。
右に時計ウサギ、左にコスプレウサギという、位置付けだ。
しかも、コスプレウサギは、号泣で、はち切れんばかりに拍手し、それを呆れたような目で、時計ウサギが見ている、という奇妙な光景だ。
「毎回、思うんだけど、何がそんなにいいんわけぇ?眼鏡ぇウサギぃぃ。ていうか、あんたぁのトレぇードぉまぁーくの、黒縁眼鏡、忘れてんよぉ?」
面倒臭そうに、時計ウサギは、眼鏡なしウサギへ、話し掛ける。どこからか、あんぱんに顔が付いたのと、宇宙人だか虫歯のバイ菌風の絵柄が描かれた、黄色いハンカチで涙を拭い、それを雑巾みたいに絞ってる、眼鏡なしウサギ。
眉間に、富士山の如く、皺を寄せて、歪な口の形をした、立派な、人間のような歯を見せる。
「自分だって......キテ○ちゃんの列車の時、目が爛々......してた......視界共有......分かる」
声は、消え入りそうな声なのだが、態度はデカイ、眼鏡なしウサギに、実に、嫌そうな顔をした時計ウサギは、チッと、小さく舌打ちする。
「興味ある時んしかぁ、全、然、喋んないんくせしてぇ!そんな、いらんことぉをよぉ、喋るぅ!」
「馬鹿に......するから。ヴィランこそ......派手...登場...カッコ...いい」
「はっ、私ら、神使、ですけど、悪ですもんね、はいはい、チッ」
ぼそっと、小声で、聞き取りずらいほどの早回しで、吐き捨てて、時計ウサギは、ぼやく。
「素...出てる」
眼鏡なしウサギに、ぴくっと、耳を立てた時計ウサギは、また、チッと、小さく舌打ちし、パチンと、指を鳴らした。
「とりあえずぅぅ、あんたわぁ、瓶ぞこ眼鏡ぇしてぇ、今、は、黙っててぇ?」
黒縁眼鏡ウサギになった、眼鏡ウサギは、時計ウサギの言う通り、黙りこくった。
「やぁ、我が、ファミリー!よく、来てくれたね。早速だが、家族会議を、始めようじゃない?さ、そんな突っ立ってないで、ヨルムンガルドのように、大人しく、座って?」
六人は一斉に面倒臭そうな顔をすると、仕方なさそうに、大人しく、側にあるキングチェアへと、座った。
「見れば分かるけど、ファミリーの絆を確かめるため、まずは、名前を、名乗って?はい、時計回り、ビューレイストから」
颯爽と一直線、ドカッっと、イカれたキングチェアに、ふんぞり返って座ったロキは、肘掛けに、左手で頬杖を付くと、長い足を自慢げに組んで、口はにこやかなのに、目が笑ってない状態で、七人を、ねっとりと見つめた。
「七席、筆頭、ビューレイスト、傲慢に輝く捌の七剣星」
ビューレイストが、姿勢良く座る、青褐色のキングチェアには、背もたれに大きな翼が生え、肘掛けの先は、大きな四本の鉤爪が食い込んでいる。
ビューレイストが、眼鏡を左手でクイっと、少し上に上げ、長い右足をドォンと、勢い良く肘掛けの上に乗せると、同時、ロキの方から地面を伝って、鈍い光の鎖が、蛇のようにうねり、ビューレイストの右足首に、絡みついた。
そして、背もたれの裏面、グリフォンが、捌の字にとまり、大きな嘴で、噛みついている絵が、黄金の炎で、一瞬、燃え上がる。
「七席、次席、シギュン、強欲に輝く伍の七剣星」
シギュンが、背もたれにもたれて座る、紫紺色のキングチェアは、背もたれが鋭い剣のようになっており、ふさふさの毛皮で、肘掛けから座面まで覆われている。
シギュンは、刀の柄を愛おしそうに撫でてから、肘掛けに右手を乗せると、同時、鈍い光の鎖が、手首に絡みつくと、裏面にある伍を、噛み砕かんと絡みつくケルベロスの絵が、一瞬、燃え上がる。
「七席、三席、アルグルボサ、憤怒に輝く弐の七剣星」
アルグルボサは、背を丸め、腕を固く組んで座っている。
銀朱色のキングチェアは、煌びやかな鱗で覆われ、背もたれに鋭く、長い、二本角が斜め上に生えている。
アルグルボサが、頭を少し下げた瞬間、鈍い光の鎖が、首に絡みつくと、裏面にある弐を、踏み潰している炎駒の絵が、一瞬、燃え上がる。
「七席、四席、フェンリル、嫉妬に輝く漆の七剣星」
フェンリルは、右手にはタブレットを持ち、左手を反対の肘掛けに置いて座る。
刈安色のキングチェアは、艶やかな上品な毛皮で、覆われている。
トントンと、左の指で肘掛けを叩いた瞬間、鈍い光の鎖が、左手首に絡みつくと、裏面にある漆を、大きな口で、鋭い牙を剥き出しで咥えている狼の絵が、一瞬、燃え上がる。
「七席、五席、ヨルムンガルド、色欲に輝く参の七剣星」
ヨルムンガルドは、左足を前にピョンと出して、鈍い光の鎖が、左足首に絡みつくと、裏面にある参に、とぐろを巻いて絡みついた太く、大きな世界蛇の絵が、一瞬、燃え上がる。
「七席、六席、ヘル、爆食に輝く陸の七剣星」
ヘルは、右の肘掛けに、腰を下す。
金青色のキングチェアは、暖かそうな、もふもふの毛皮に覆われている。
はぁと、ため息が漏れると、鈍い光の鎖が、胃袋辺りをぐるぐると纏わりついて絡みつくと、裏面にある陸を、前歯で噛んで引っ張っている羊の絵が、一瞬、燃え上がる。
「七席、トリ席、ナリ、怠惰に輝く肆の七剣星」
ナリは、檳榔地黒色の、高級感溢れるパイソンレザーのキングチェアから立ち上がれば、鈍い光の鎖が、心臓目掛け、辺りをぐるぐると纏わりつくように巻きつくと、裏面にある肆を、とぐろを巻いて締め付けている蛇の絵が、一瞬、盛大に燃え上がった。
「僕は、君らと共同体。僕らは、役目の鎖で繋がった神々である。約束の時まで、連なる星であり、厄災でもあり、666(スリーシックス)の名の下に、我らは〈闇の眷属〉に抗えん」
ロキは、ポツポツと独り言のように発すると、ガン!っと、組んでいた足を地面へ下した。
キングチェアが揺れるほどの勢いで、立ち上がり、左掌を大きく広げ、顔の前に持ってくると、数分停止。
眼鏡ウサギ以外の者は、白けた目で、ロキを見つめている。
「ジョ○○立ち...最高!」
眼鏡ウサギ、一人、小さな歓喜の声。
虚しくも、ロキは、ご満悦で、両手を後ろで構えて溜めてから、両手を前方へ、勢いよく出した。
両手に集まる、凝縮した黄金の炎は、波動として前方へ、押し出される。
「カ○ハ○波!!!」
一直線に、ものすごい勢いで放出され、波動が消えると同時、金の鎖も、幻の如く消え失せた。
一人、小さい拍手を送り続ける眼鏡ウサギと、ドカッと、疲れたかのように座った、ロキ。
一人への、ワンマンショー。
ロキは肘掛けに両腕を置き、背もたれにもたれ、ご満悦な顔で、いかにも偉そうな格好。
ロキ以外は、阿呆らしいと、言わんばかりの顔をして、イカれ独裁者と、一斉に、ボソリと吐き捨てた。
「お遊戯は、これくらいにして、本題に入ろうか?」
パチンと、ロキが指を鳴らすと、景色は一変して、本能寺。
後ろ手には、豪華な黄金のシャンデリアがある、本堂の中へと、移り変わる。
ただ、通常の広さとは異なり、縦幅、横幅が、外国の城のように広く、歪な空間なっている。
ロキの頭上、高く、細長い、真っ赤に染まった運命の槍が、七席に向けて、睨みを利かせるように、ギラリと光る。
そして、666がいる場所の畳の上には、繋がりを囲うように、鴉色の炎の大輪が、七席のいる方には、禍々しい七つ星が、大きく描かれ、刻まれていた。
「でさぁ~、彼、成長が遅くない?あ、フェルリン、映して」
無言で、フェンリルは、タブレットの画面を操作、上に飛ばすようにスワイプすれば、空中に、大きなスクリーンが浮かび上がり、アリスと、その仲間達が映し出される。
「で...ん?...時に、時計ウサギ?なぜ、その格好、なのかな?」
パチンと、指を鳴らす音がして、時計ウサギは、アリスの時計ウサギから、ピンクのおカッパ頭の、黒三角の髪飾りを両サイドに付け、和テイストの、フリフリピンクドレスへと変身する。勿論、時計ウサギは、驚愕し、絶句している。
「問題あらへんどす。アーニ○が、キュアプ○シャ○のコスプレしてる、コスプレをしてますさかい」
「...そうだね...挑戦的だね、常に」
ロキは、ちらっと、シギュンの頭上に突如現れた、空中に浮かぶ無数の日本刀を見遣る。
刀は、黒、赤、青、黄と様々で、美しい色合いの輝きを、放っている。
「まぁいいか。僕のコスプレ閃きオーダーで、揃ったから。話を戻そうか。で、どうなの?いいところまで、いってるような気は、しなくもないけど。このままで、本当に、〈覚醒〉できるの?君達、どう、思ってるの?」
シーンと、静まり返り、七席のうち、ナリ以外は、ナリを責めるように、一斉に、視線を移し、じっと見た。
更なる、沈黙。
誰しも、表情は硬い。
なぜなら、氷のように、ロキの視線が冷たく、背筋が凍るほどの冷気が、じわり、じわりと、漂っているからだ。
「お腹...空き...ませんか?」
おどおどした、小さい声の眼鏡ウサギは、声とは裏腹、堂々とした態度で、その場の空気を、切り裂く。
「ん?あぁ、グルメ品評会するって、僕、確かに、言ってたね。じゃ、まずは、ルールに則って、言ったことから始めようか!眼鏡ウサギ、用意して!」
「了解!」
パチン、と勢い良く指を鳴らした眼鏡ウサギ。
急に、温かな雰囲気になったのは、ロキ、七席の前へ、真ん中に穴が空いている大きな円状の光のターンテーブルが、現れたから。
様々な料理が、皿の上にふんだんに載り、ものによっては、湯気が立っている。
穴の真ん中には、いつの間にか、コックコートに、長いコック帽へ、衣装チェンジしたウキウキな、眼鏡ウサギと、不貞腐れて、口が一文字の、時計ウサギがいる。
パチンと、指を鳴らすと、それぞれの席の前に、ミニカーが、それぞれに、カラーリングされた、のりものプレートを牽引した格好で、止まった。
ただし、プレートの中は、空。
「では、ご説明させて頂きます!ロキ様はメルセデス○ンツ300SL、ビューレイスト様は日○スカイラ○ン、シギュン様はホン○S600、アルグルボサ様はトヨ○2000○T、フェンリル様はフェラー○DIN○、ヨルムンガルド様は○ツダコスモ○ポーツ、ヘル様はポルシ○356、ナリ様は○ットサンフェア○ディです!僕の力作、です!」
「馬ぁ鹿、ミニカぁーのぉ説明して、どんするぅ」
不貞腐れていた時計ウサギは、すかさず相棒に、ツッコミを入れる。義務、というように。
「では、改めまして、北から南までオーダー通り、四十七品目、説明させて頂きます。成吉思汗、一升瓶完熟サンふじジュース、だまっこ鍋、わんこそば、米沢牛のステーキ、仙台牛のステーキ、喜多方ラーメン、そぼろ納豆、宇都宮餃子、焼きまんじゅう、わらじかつ、どぜう鍋、すずきめし、生しらす丼、へぎそば、白えび天丼、おやき、きぬかつぎ、富士宮焼きそば、ひつまぶし、飛騨牛にぎり、若狭牛しゃぶしゃぶ、加納ガニ茹で、近江牛すき焼き、伊勢海老蒸し、大仏プリン、クエ鍋、たこ焼き、明石焼き、湯葉ドーナツ、鳥取カレー、ひるぜん焼きそば、出雲そば、そば肉玉お好み焼き、ちり鍋、讃岐うどん、南阿波丼、みかん大福、カツオのたたき、博多ラーメン、琉球丼、チキン南蛮、白熊かき氷、赤牛丼、イカの活造り、ちゃんぽん、沖縄そば、です!好きに、お召し上がり下さい!」
眼鏡ウサギは、最初は、歌舞伎の口上のように述べていたが、料理の名前になった途端、早口言葉のように、スラスラ喋り出して、言い終わった後は、精魂尽きたように、気力なしで、電池切れの玩具みたいに、黙りこくる。
「あぁ、馬鹿ぁ!...ロキ様ぁにぃは、特上ぉの、ドイツぅのプリプリぃソぉーセージ、イギぃリスのフィッシュぅアンドぉチップすを、別でぇ、ご用意してますん、はい!」
相棒の尻拭いで、後を継いだ時計ウサギは、パチン、と指を鳴らし、そう捲し立てると、ロキのプレートに、ロキが見えないくらいの、熱々のドイツのソーセージと、イギリスのフィッシュアンドチップを、富士山のようにてんこ盛りで、急いで乗せた。
一瞬、シーンと、静まり返る。
パリっと、肉を噛む、軽快な、音がする。
「うん、悪くないね......流石に、これを食べ終わるまでには、終わってるんだよね?」
ロキの顔は、隠れて見えないが、声は、ひんやり冷たい。
七席の姿勢が、ピンと伸び、一人、ぎこちなく、ナリが笑う。
一同は、偽り、不気味な、えせら笑いを顔に、はりつけた。
ナリは、重い、静寂耐えられず、パチンと、指を鳴らすと、遮断するように、現れた鎧のヘルムを被り、天を仰ぐ。
遠く、一点を見つめ、似つかわしくない、祈りを、捧げるように、両手を組んだ。




