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8の怪・追記 かえりみち



「電車こねーなー」

「おう……」

「……」

「来ませんねー」

「……」

「……」

「……(よし)

「んだよーアマヒコー」

「もたれんな」

「うい」

「……」

「……」

「……そういえばさ、アイちゃん」

「え、あ、はい」

「自由研究? にするつもりだったんだろー? 村の話。あれ、だいじょーぶなのか?」

「あぁ……はい、あれは……やめときます」

「そうしたほうがいいよ(ええよ)(あい)。先生に絶対なんか言われるやろし」

「でもそうしたら藍ちゃん自由研究どうするんだ?」

「うーん……十円玉でも磨こかな」

「小学生やないんやから」

透山(とおやま)、なんかいいテーマないか?」

「俺に振るな話を」

「あ、うちパソコンの知識に興味あるんで……そのへん詳しい方にお聞きしたいなと」

「藍ちゃん、あの男はやめなさいマジで。これガチで」

(アマ)パイ顔こわ……」

「アマヒコー別にいーだろ左や右と会わせたってよー」

「お前は黙ってろ喜!!」

「声がでけぇ」

「あ、悪い……」





「……」

「……」

「……小塚(こづか)

「? どないしました天パイ?」

「はい?」

「あ、いや(こん)の方、ごめんね藍ちゃん」

「も〜天パイなんで呼び方戻してしまうんです? 名前呼びでええのに〜」

「うるさい」

「んで、なんの用です?」

「これから……あの村と、どう接していくつもりだ?」

「……」

「……」

「……まあ、戻らへんってわけにはいきまへんしね。あんなことはあったけど、爺ちゃんと婆ちゃんの葬式にも出んようなのは、嫌ですわ」

「んじゃ……何かあったら、戻るのか」

「そうなりますね。ま、ちょこちょこは顔出しますよ。祭りの時期は絶対近寄らへん」

「そうか……」





「電車おせーなー……」

「遅延ですかねー」

「……」

「……」

「田舎だなー」

「田舎ですねー」

「……」

「……」

「……」

「……」

「そういえば、なんだが」

「なんだサキ?」

「何かを聞き忘れている気がするんだが……お前ら、俺に教えてない情報あるか?」

「え? ……なんだろうな、思い当たる節がない」

「サキの気のせいじゃねーの? 村ぐるみで怪異作ろうとしたって証言を聞いたぐらいだぜ」

「そうか……ならいい。また思い出したら教えろ」

「もーなんだよサキ。この間からずっとなんか調べものばっかりじゃねーか」

「気になることがあるんだ」

右太郎(ゆうたろう)先輩や左吉(さきち)先輩に頼むのじゃ駄目なのか?」

「すでに頼んでる。その上で俺も調べる」

「何を?」

「色々、だ」

「教えろよ」

「断る」

「つまんねー」





夕善(ゆうぜん)センパイらって、怪異退治しとるんですよね?」

「おう! おれとーノリボシとーサキがおまけで」

「おいおまけってなんだ」

「サークル棟んときはホンマに驚きましたわ……。あんなもんがホンマにおるやなんて」

「コンコンも見たのか?」

「見ました見ました。やから怖なって天パイに相談したんですわ。したら皆さんが解決してくださりはって、心ん底から安心できたんで」

「良かったなー」

「あのときは姉ちゃんがおかしなったんかと思た」

「酷ない? 藍」

「コンコン、どんなの見た? いつ頃?」

「えぇ……確か……、サークル入って割とすぐに見たんですよ。四月中です。部屋に筆記用具忘れてしもて、取りに行って、その帰り。部屋出ようとしたら廊下からずるずるって物音がして……」

「その日の姉ちゃんホンマに凄かったですよ」

「言わんとって藍」

「ネットに上がってたのと似たようなもんかー」

「その前にサークル活動しよるときに噂聞いたところやったんでね。怖かったですわ……」

「ん、なあアマヒコ。四月の時点で噂そんなに広まってたっけ?」

「広まってたと思うぞ? 俺らには届かなかったけど、サークル棟の連中には」

「いつ頃から?」

「三月頃だな。空き教室の掃除して、ロッカーが見つかってから……って話だったから」

「ロッカーの在り処は?」

「三階の北奥です。うちらはその側で活動しとったんで」

「ふーん……」

「それがどうかしたのか? そもそも開かずのロッカーの話って、ずっと前に作られた創作だったんだろ?」

「確かなー。だったよな? サキ」

「おう」

「創作でもホンマになりうるなんて、怖い話ですよねー」

「怖いよなー。元々何かがあって……とかのほうが、まだ納得いくぜ」

「納得したから言うて怖いもんは怖いんですけどね」

「それは同感」





「……」

「……」

「アマヒコはひどい目ばっかりあってきたもんなー」

「笑い事じゃねえわ」

「あれま……」

「これからも色々大変だと思うぜー? ま、なんかあったらおれらに相談しろよ」

「お前らに頼りっきりだと俺は破産だよ……ってうお!?」

「お!? 何だ何だ」

「夕善お前だ。電話」

「おー、おれか! ん……ユースケだ」

「出ろよ」

「って踏切鳴り出してもうたで!」

「急げ急げ! ……もしもし!? ユースケどした?」

『……あ、喜君? 今その、大丈夫……?』

「電車来てしまいましたね」

「あー……ごめん! 今から電車乗るんだ、メッセージで送れるか? ごめんな!」

『あっ、わかった。ごめんねこっちこそ……』

「気にすんな! それじゃ!」

「電車乗られますかー?」

「乗りまーす!」

「どうしたんだろうなユースケ」

「その人、あれだよな。春の飲み会の」

「おう」

「あのときはうちの馬鹿が申し訳なかった……」

「反省させとけ」

「反省させた」

「どの席座ります?」

「ふたりはボックス席にしとけよ。俺らヤロー三人は横並びすっから」

「空いとるからボックス席二個でもええんでは?」

「こっちの方がなんかあったときにいーんだよ」

「電車の中で何が起こるとおもとるんです??」





「……」

「……」

「……」

「……あ、ユースケからメッセージ来た」

「なんの用件だ?」

「────え」




 いきなりでごめんなさい、朝から大変なことになってて……。自分でどうにかしようと思ったんだけど、どうすればいいかわからなくて頼りました。

 家の前に人が来てる。YouTuber……なのかな。スマートフォンとかカメラ持って、インターフォンを押してくるんだ。僕、何もしてないよって部屋から出ないようにしてたんだけど、そうしたら外から「噂の幽霊アパートですよね」って。

 二十二年、ストーカー殺人が起こった民家の跡地に建てられたアパート。犯人の自殺後、怪奇現象が起こるようになった場所、そこに住んでる人の話を聞きたいって。


 前喜君達に解決してもらった話。その噂がなんでか広まってるらしくて……どうしよう、あれは解決しましたって話したほうがいいのかな? でも、普通の人に怪異がいました、払ってもらいました、なんて説明できないよ。

 ごめんね、ひとりでなんとかしろって話なのに。電車ってことは遠出中? 邪魔してごめんなさい。ひとまず家の前の人達が帰るまで部屋から出ないようにしてみます。





「どういうことだ……?」

「家に押しかけられてる? 警察呼ばねえと」

「でもその前に。今までもちょっとだけとはいえ噂はあった。でも家に押しかけられたなんて話は聞いてない。それなのに今更、人が来るなんて……」

「……あったぞ」

「え?」

「……二日前、その筋じゃ有名なオカルト掲示板に晴間(はれま)荘のことが書き込まれてる。ストーカー殺人が起こった土地、アパートに住む者が見る悪夢……今までの噂を掻き集めた見てえな話、それと……この動画(・・)

「待て待て、イヤホン貸せ」

「あ、お前ら人のイヤホンを……!」

「……なんだ、この声」

「動画は……夜のアパート?」

「……」

「……」

「……これ、(のりと)じゃね?」

「……音質悪くて何言ってっかわかんねーな。傍から聞いたらうめき声だ」

「『心霊アパートの周辺で目撃された影。部屋の窓へ飛びつく姿も目撃されており、更には不気味な声も』……どう考えても祝だろ」

「ノリボシが祓ったときの動画、だな。黒ジャージのせいでほぼ影だけど」

「なんでそんなもんが……てか、こんなもんが投稿されてるって」

「……誰かが、あのアパートの話を意図的に広めてんだろ」

「誰か、が……?」

「ガッツリユースケの部屋だなこれ。そりゃ大変だ……」

「大変なことになったなこりゃあ……」


 

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