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第12話 幻術の本質

              


 エミリアさんが来たことでやっと作戦会議が始まる。


「それでは、作戦会議を始めます。」


 なぜか議長はエミリアさんだ。カドックがやりそうなものだが。


「議題は【アルス君の無謀な目標に対して今できること】です」


 すいません、無謀な目標で。


「アルス、いきなりだが聖女に会ってみる気はあるか?」


 カドックがいきなりの提案をしてくる。それも聖女とはビックネームだ。教会の最高権力。神が遣わした現人神。


「聖女に会えるなら願ったり叶ったりだな。ぜひとも、【勇者と魔王の摂理】について聞きたい」


「まあ、お前ならそう言うよな。だが、いくつかデメリットもある。アルスの目標は権力者側にとって都合が悪い。勇者一人を犠牲に平和を築く方が楽だからな。それを聖女がどう見るかわからない。」


 カドックが問題点を挙げるがその前に疑問がある。


「その前にカドック、どうやって聖女に会う気だ?」


「聖女がこの天才カドック様に会いたいらしい。つまりは招集されている。」


 魔法のありようを変えた天才ともなると最高権力者の方から会いに来るのか。


「そうか、それなら会えるな。」


「ああ、だからアルスの覚悟の問題だ。ちなみに謁見形式ではあるが質問もできる。俺が質問する形にはなるが。」


 それなら願ってもない話だ。というか都合が良すぎる。カドックが俺に共感してくれているのは分かった。でも、それは最高権力者に質問できる権利を使っても後悔しないほどに熱量のある感情なのか?


「カドック、ありがたい話だ。この際、聖女に俺が排除されようとかまわない。ただ、この話においてのお前のメリットは何なんだ?」


「覚悟は十分なのに、俺の心配かよ。俺のメリットは優秀な幻術師の協力を得られることだ。」


 幻術師の協力がメリット?それならエミリアさんに頼めばいい。なのに、なぜ?兵士を魔道具で作ることに幻術?わからない。情報が足りない。


「アルスくん、ここからは私が説明します。兵士の魔道具化に際して、カドック様は魔道具に任意の幻術をかけることで魔道具を動かそうとしています。そのサンプルとして多くの幻術師の協力が必要なのです。」


 エミリアさんが説明を代わるがよくわからない。 任意の幻術をかけて人間を誘導するならわかる。そいつの好物を鼻先に映し出すようにして誘導すればいい。だが、魔道具に幻術って意味あるのか?


「エミリア、俺とお前で共有している知識は世の中の常識ではないぞ!」


「申し訳ありません。」


 婚約者同士の気のおけない漫才をしていないで説明してほしい。


「アルス、幻術の本質ってわかるか?」


 そんなのは簡単だ。魔法とは魔力を用いて現象を引き起こす手法だ。そして一番大切なのは。


「イメージだろ。より鮮明なイメージが幻術や魔法の効果を上げる。」


「間違ってはいない。だが、違うな。俺が聞いているのは幻術というものが魔力を糧にどのような魔力現象になっているのかという話だ。」


 なるほど、水の魔法を使うなら魔力を水という現象に変換している。火なら魔力を火に変換。土なら土にという具合に。ただ、よくよく考えてみると幻術ってどういう現象だ?人に幻を見せる現象?幻は触れないから実体がない何かなのは確かだけど。


「カドック、正直にわからない。人に幻を見せる現象なんて存在しないからな。」


「アルス、厳密に言うと幻を見せる現象は存在する。名前は考えていないがこんな感じだ。」


 カドックの周りに魔力が集まり、水に変換され極彩色の光が当てられる。すると、不思議なことにそこに今日の晩御飯が映し出された。


「すごいな、こんなことができるのか。だが、幻術とは違うな。理由は分からないが。」


 俺の言葉と共に今日の晩御飯の幻は消えて、その奥からカドックのニヤニヤした笑みと相変わらずのエミリアさんの上品な笑みが見える。


「まあ、そうだろな。だが、違うことは分かった。それにアルスは幻術を放つときどうしてる?」


 幻術を放つとき?あの恐ろしいトラもどきに襲われた時と授業でも何回か幻術は使用しているけど。


「ああ、見せたい相手に対して、イメージを見せる感じだな。」


「そうだ。だから、アルスのイメージという答えも間違っていない。だが、正確に表現するなら、幻術師のイメージに沿った【情報】に魔力を変換し、投射するのが幻術の本質だ!!」


 カドックがすごく興奮して宣言する。だが、何が違うんだ。イメージでいいじゃないか。なんか細かい違いで虫に違う名前を付ける研究者と話してるみたいだ。なんか、一気に萎えた気がする。


「カドック、それでイメージに沿った情報だったら何が違うんだ。どっちにしろ幻術師がイメージした幻を相手に見せることに変わりないだろ。」


「まあ、人相手に使う分にはそれでいい。だが、幻術の本質が情報であるなら、魔道具を動作させる命令情報を幻術で書き込むことができる。」


 んん。そうか、そうか。幻術の本質が情報であるのなら、別に幻を見せることに頓着せずに別の情報を渡してやればいい。だから、魔道具に幻術をかけるか。エミリアさんの言うことも間違ってない。でも、それなら対人戦で相手を操るような幻術を使えれば最強じゃないか?


「なるほどな、それで兵士の魔道具を動かすための命令を再構築するわけか。幻術を写し取った紋様を分解して。あと、この命令って人相手には使えないのか。」


「危ないことを考えるな。一発の幻術に相手の総魔力量を超える魔力を使えるなら、理論上は可能だ。」


 つまり、ほぼ不可能だ。幻術師は比較的魔力が多いジョブだと言われているが。魔力が少ないジョブの何倍も魔力があるわけじゃない。命令を聞かせるなら、一回で魔力枯渇を起こして気絶してしまうだろう。さらに幻術を使う者の勘だが、そんな複雑なことはできなさそうだ。


「まあ、分かった。カドックは俺が使う幻術の対価として聖女に謁見させてくれるってことでいいか?」


「ああ、その通りだ。協力よろしく頼む。」


「それでは、具体的に必要なことついてお話しましょうか!!」


 議長のエミリアさん無駄にテンション高く宣言する。まだ、もう少し、会議は長引きそうだ。


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