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ニーニャの過去

 両親はクズだった。

 私が15歳の時、12歳の妹が"未知の病気"にかかったことが原因で捨てられた私達は、幼い少女2人では当然生きる術もなく水すらも手に入らない日々を送っていた。


 そんなある日だった――。


「妹を、、ミアを助けてください」


「おう、まかせろ」


 その時、気付く事が出来ているなら良かったが、私は大男何かを企むような表情に気付くことができなかったのだ。私は……幼過ぎた。



 それから私は妹の薬代を稼ぐ為に、"変身能力"のスキルを使って色々な場所に潜入し、報奨金や金品を掠めて来た。


 そいつらは馬鹿ばっかで、私の事を信用し裏切られると皆子供の様に癇癪を起し、私を罵倒して来た。

 私が全面的に悪いと、自分の弱さを自覚していない奴ばかりだった。


 最近になって更にミアの具合が悪化したため、大男が所持する店でのバイトも始めた。

 そういえば、久しぶりにパーティーを組んだ奴もいたが、そいつはもっと"馬鹿"だ。日々、報奨金をちょろまかしているのにも関わらず、まったく気が付く気配がないし、何よりも私の事を『友人』と勘違いしている。


 本当に馬鹿な男だ。1年間私の宿に居座って、自分を無能だと肯定し何もしようとしなかった弱き男だ。あいつより、惨めな奴は見たことがない。


 なのに、どうして――、


「おう、ニーニャ元気だったか?」


 どうして、また私の前に現れるのかどうしてもわからなかった。


◇◇


 開店する少し前に時間を合わせ、俺は店のドアを蹴破り突入した。突然の出来事にせわしなく開店準備をしていたニーニャを含める従業員はこちらを驚いた表情で見つめている。


「っおい、なんでまた来た!」


「助けにだよ」


「勇者気取りか?いいこと教えてやろう、私がいつも依頼を受諾しにいってただろ?あれは、私が報奨金をちょろまかすためにやってたんだよ!」


 ニーニャが怒号を散らしてくる。たしかに、彼女がいつも受諾しにいっていたが―――


「そんなのとっくに気づいてるぞ」


「っ!じゃあなんで」


「もし、ニーニャが本当に悪い奴ならわざわざパーティーなんて組まず、俺の私物を奪えばいいじゃないか。だけど、それをしなかった。そもそも弱い俺とパーティーを組む必要性は全くない、だろ?」


「それは……」


 ここで大人しくニーニャが助けてと言って、ここから一緒に離れるのが理想だが――、


「おいおい、さっきから耳障りな声がすんな、また来やがったのか?無能勇者」


 人生、そうはいかない。

 図体に見合う深いため息を吐きながら、ドラゴンタトゥーは眉を揉んだ。


「――賭けをしよう。今から俺と勝負して勝ったらニーニャの借金を免除しろ」


「お前が負けたら?」


「これを全てやる」


 俺は金銭が詰まった麻袋を力いっぱい叩き付けた。おそらく1億ゴールドはくだらないだろう。

 その何処から持って来たのかも分からない『謎の大金』に、貧乏勇者(ハル)を知ってるニーニャは眉を上げた。


 そもそも勝ち目のない賭け。やめさせようと手を伸ばすニーニャだったが、


「いいぜ?取り消しはなしだ。いっておくが俺は"Bランク"だぞ」


 がっとその賭けに乗る意思を示すために、男は麻袋に入る大量の金に手を乗せる。


「成立、だな」



 正に(かも)(ねぎ)を背負って来るとはこの事。

 ニーニャには、ハルがこっぴどく負ける姿が容易に想像できた。

 

 しかし、戦う為に外に出るハルの横顔にふと、記憶が揺さぶられる。


 ――ニーニャは気付いたのだ、その時のハルの顔が――幼かった私が見た大男の様に『企み』を存分孕んでいた事に。

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