3人目
「で?レベルを稼げるクエストはないかって話だったよな。ちょうど良かった今年は"これ"があるぜ」
魔道王国から戻って来た俺は、ホームタウンのギルドで、今日も今日とて暇人ギルド職員のレギオに色々教えて貰っていた。
その指が示したチラシを見ると"ラベル島、4年に1度の収穫祭"と書いている。
「なんだこれ?」
「そっか、兄ちゃん他所から来たんだったな、これはな―」
どうやらラベル島とは、4年に1度出現する島で、経験値を多くドロップするモンスターの『メタリン』大量に湧くらしい。
しかし魔王のせいで各地に被害が出ている現状。一刻も早く討伐するための、次世代の『英雄』を育てるべく、今回はSランク以上が限定らしかった。
「さっき見た兄ちゃんのステータスなら、期日までにAランクにはなれるだろうが……」
「Sランクを探しているのかい?」
まるで切符を切るように、ライアが横からするりとステータス更新表を割り込ませて来た。
最近までAランクだった筈だが、果たして本当にレベルが上がったのか、それとも元々Sランク並の実力があったのか……後者だろうが、まだまだ其処が知れないのが恐ろしくある。
「このあんちゃんは兄ちゃんのパーティーか?なら、申請を出すことは可能だぞ」
「本当か?じゃあ頼む」
「分かった、出発は3日後だ。朝8時にギルド集合だ」
俺は今回ランクの更新でBランクになって、ギルドの外に出た。
そうだ、そろそろスキルポイントも振り分けておこう。
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メイン 勇者 熟練度★3→6(38ポイント使用) Next 20ポイントが必要
New!!!効果5.勇気に呼応して強くなる。
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サブ 剣士 熟練度★2→3 (5ポイント使用) Next 7ポイントが必要
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【特技】
New!!! 燕返し ある方向に打ち込んだ刀の刃先をすぐに反転させて斬る。
New!!! 回転斬り 周囲の敵を蹴散らす
50→7ポイント
一応使う時があるかもしれないので、7ポイントは残しておいた。
今回は、勇者の基礎効果を新しくゲットしたのが主な収穫だ。
だが、今後一生使い道はないだろう。
異世界転移当初ならまだしも、今の俺の戦い方は『何としてでも勝利する、なるようになれ』戦法。
勇気とは程遠く、正直効果の欄から消しても構わない。
「ここが、リアの妹が居る場所、で間違いないかい?」
「ああ。中で、待ちわびてる」
住宅街とは少し離れた場所にある民家、その場所の訪れたのは他でもない。
リアの長年の悲願である妹の病気を治療する為である。
「おぉ、やっと来たか!はやくしやがれ!」
「そう急がなくても……って、ヒューマン……?」
銀髪に翡翠の瞳、そのリアとそっくりではあるがどう見ても只のヒューマンのミアに、ライルは目を丸くする。
無理もない、今のリアは何処からどう見てもアマゾネスで、ならば話の辻褄が合わない。
「変な推測するなよ。ただ、この姿が『偽り』ってだけだ」
「――何だか騙された気分だな」
そう言って視線を落としたライルを、流石に忍びないと思ったのか、
「隠すつもりはなかった。というか、人生で一番長く居るこの姿が私みたいなもんだ」
「お姉ちゃん今も美人だけど、本当はもっときれいだよ!」
「……冗談だよ。そもそも、僕は容姿でリアを好きになった訳じゃないからね」
「てめぇ……」
やっぱり図る事の出来ないライルに、リアは幾度目の嫌悪感を示す。
も、それも何時もより短かった。
「改めて頼む。ミアを……妹を助けて欲しい」
「任された」「任されたよ」
真剣な面立ちに、俺とライルは応じる。
直ぐにフライデーを呼び出して、リアが60ポイント。デートの対価として、ライアが40ポイント支払った。
「では、確かに。これより、変換致します」
直後、ミアの体が淡く発光する。
魔力ではない、思わず見入ってしまう神秘的な力。それは、神々のギフトであるスキルを成長させる為の『スキルポイント』だからこそできる、頂上の治癒魔法だ。
常に苦痛に歪む表情は安らかに。
体の至る所にあった痣が、水に洗い流されるように消えて行く。
やがて、光が消失した頃。
「……治っちゃった」
そう言ってひょこんと。容易く二本足でたって、親指をぐーと立てたミアに、リアはその翡翠の双眸を見開いた。
そのままポツリと、大粒の涙が溢れ始める。わき目も降らずリアは妹に抱き着いて、わんわんと泣いた。
「良かったな」
口の回る俺とライアも、今だけは何も言うまい。
本当の意味での姉妹の再開を静かに見守っていた――――――だけなのに、ミアに散々キレ散らかされたのは、又別のお話で。
というか、余り思い出すと記憶の中のリアが殴ってきそうだ。
涙が枯れて、感動が喜びに代わった頃。
「本当に、何といっていいか……ハルは勿論、癪だがライアの糞野郎も。――借りは何時か必ず返す、だから今は"これ"で許して欲しい」
「!!」
次いでとったリアの行動に、俺とライアは目を疑った。
リアが深々と、頭を下げているのだ。助けたのに、俺の事を「犬」とか言って来るとんでも不遜野郎が、感謝の意を示している。
俺はライアが目視命令を使ってるのかと疑った。
ライアは、何か呪術の類でも掛けられているのかと疑った。
だが目の前にある感謝だけが、ただ一つの現実だった。
「ごめんなさい、お姉ちゃんは不器用なの」
「「知ってるよ」」
「勝手に知るな、てめぇら!」
「ふふ。お姉ちゃん、すっごく楽しそう。わたしからも、本当にありがとうございます。助けてくれたことも、それにお姉ちゃんのことも」
ひょこりと頭を下げて来るミアは、庇護欲を擽った。
この可愛い生物が本当に、目の前の脳筋の妹なのかと疑いたくなる。
取り合えず、よしよしと頭を撫でておこう。
「これで晴れて、リアの願いは叶った訳だけど。これから、どうするんだい?」
「パーティーを離れるつもりはねぇよ。ミアは、知り合いのとこに預ける」
「ミアちゃんはそれでいいのかな?」
「うん。お姉ちゃん、今までわたしの事でいっぱいっぱいだったから。いーっぱい、冒険して来て欲しい」
「本当によく出来た子だな……」
「あ、でも!一つ聞いていい?」
ミアの年不相応の礼儀に感嘆していると、その純粋無垢な笑顔で聞いてきた。
「どっちがお姉ちゃんのお嫁さんなの?あ、あともう体の相性は確かめあった?」
訂正しよう。
負けず劣らず、とんでもない妹だったと。
◇◇
~三日後、ギルドの前にて~
「お、集まったか」
俺たちはラベル島に向かうため、早朝のギルドに集合したわけだが、当然、他の乗船する冒険者達も集結している。
都市外に名を轟かせる、立派な二つ名を有する猛者ばかりで、『無能勇者』の称号を持っている俺は肩身が狭かった。
「おい、"あいつら"が来たぜ」
そんな、弱者何て気にしないような奴らが、ざわざわと騒ぎ始める。
一行の視線の方向――深い霧の向こうで影を落とす『3人』の姿があった。
この世界では珍しい、ヒューマンの三人組だった。
何れも、装備屋ではお目にかかる事の出来ない伝説級の装備を纏っている。
赤い髪の、鋼の肉体。全てを掌握する、蒼色の知性。
全てを一掃する、黒色の乙女――、
記憶が疼く。嫌な思い出が、沸々と湧きあがる。
あれは、あの特徴は。忘れる訳もない、俺がこの世界で初めて出会った三人――共に召喚されて、勇者となった者達。
――そして俺をパーティーから追い出した、糞野郎どもである。
見直しせずにちゃちゃっと書いたので醜い所は勘弁を(*´Д`)




