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主人公の宿命

――時は、リア達が苛烈な戦いをしている最中まで遡る。


 ライアの手助けにより、場内の進入に成功した俺は女王部屋に向かっていた。

 中には至る所でエルフが倒れていて、死んではいないがどうやら眠らされているようだ。


「リア達は無事だろうか・・・」


 城外から激しい魔法の音や地響きが聞こえてくる。俺より強い2人だ、心配するだけ無駄だろうが……ん、というかなんで俺が1人なんだ?

 なあなあと来てしまったが、普通城の中にいる奴の方が親玉で強い。


 なら、レベル18の俺がどうして一人なのか。


 まあそう言う事なら、そういうことなのだろう。主人公の宿命、ってね。

 俺が本当に主人公的ポジションかは、今後の展望にはよるが……と、そんな事は冗談として、俺にはいざという時、フライデーが居る。


 スキルポイントの自由度は、彼女のおかげでずっと高くなった。

 もしもの時、実力では補填できない何かを補ってくれる。


 最もこの先に居る敵が、純粋な実力者だったなら――。


 ま、頑張るよ。


 いざとなれば逃げればいいし。そんな軽い気持ちで、俺は片っ端から部屋を開け放つ。


「おっ、ここかな?」


今までのドアと違いひと際大きいドアを見つけた、ここが王部屋だろう。


「おじゃましま」


「何ですか?」


 おもむろにドアを開けると、眼鏡を掛けたエルフの青年がこちらに振り向いてくる。

 何か機械を操作していて、部屋の中央にはカプセルのようなものに、エルフの女性が眠ったまま捉えられている。


 眠っていても分かる美貌。彼女が女王に違いない。


「下賤な化け物風情に頼った私も私ですが、もうやられたんですか、あの牛は。あなた、名前は?」


「ハルだ。悪いね、俺には頼もしい仲間がいてね」


「僕はラルフ。謝らなくて大丈夫ですよ、仲間諸共天国に送って差し上げますから」


 落ち着いた雰囲気で笑いながら、そのままこちらに魔法を撃って来る。

 戦闘開始の合図だ。


「らぁ!」


 ラルフの詠唱が完了する前に持ち前の速さを生かし、肉薄する。眼鏡越しの視線が俺に追い付いた頃には既に遅く、剣で肩から腰にかけ一直線に斬り刻んだ。


「―――」


 ラルフは苦悶の声すらも漏らさずに、地面に倒れ伏せた。

 倒したと、喜ぶには斬った感触がなさすぎる。それに、こんなにも早く戦闘イベントが終わるはずはない。


「おぉ、凄い凄い。楽しめましたか?」


 倒したはずのラルフが手を叩きながら、俺の背後に再び現れた。

 咄嗟に振り向いて切り伏せる――が、またもや感触の無い『斬り捨て』がおきるだけだ。


 やがて、またもやラルフが現れて、地に伏せていた二人のラルフは幻想の様に消え去った。


「どういうカラクリだ?」


「どうせ死ぬんですから、教えて差し上げますよ」


 ラルフが指を鳴らすと、8人のラルフが現れる。

 いわゆる、分身って奴だろう。


「"運が良ければ、勝てるかもしれませんね"」


 賢げなエルフ8人が一斉に喋り始める。動作やしぐさも同じなため、正直気持ち悪い。


「全部斬れば、問題なし!」


 こういう時、範囲攻撃がないのが困る。片っ端から攻撃していくしか選択肢はないが、所詮は幻な為、斬っても直ぐに復活するの繰り返しだ。


 どれか、本体を叩かなければ。


「ファイアーボール」


 と、そんな見定める時間すらも与えてくれない。

 ラルフ達が呟くと、一斉に8個の火の玉が飛んでくる。どれか1つが本物だが……。


「くっ」


 当然見分けられるわけがなく、直で食らってしまう。

 右肩から右腹にかけての装備は消失して、火傷をおってしまった。


「先ほどの威勢はどこに行ったのですか?」


 挑発気味の口調でラルフは魔法を連発してくる

 正直、魔法自体の威力はそんなに強くはなく、少し火傷を負うだけ。


 そんな奴が高度な幻影魔法をずっと維持し続けられるだろうか?。スキルか……いや、よく観察しろ。


「そろそろ、終わりにしますか」


 またも全員同じ構えをし、魔法を発動させるべく詠唱を唱えてくる。

 そうだ、こいつらは動きが統一しすぎているんだ。1つ1つが独立した分身ではなく、投影――そうか、プロジェクタだ!


「渾身切り!」


間髪置かず直ぐに俺の唯一の技を使い、敵を直接狙うのではなく右側の部屋の壁を吹っ飛ばした。


「血迷いましたか?」


「俺は趣味で、家にプロジェクタ買ってたんだよ。でも、遮光カーテンじゃなきゃ、昼間は外の光に埋もれて見えやしない。まぁ、何が言いたいのかというと――」


「……なるほど、案外頭が回る男の用だ」


 外から差し込む日光、同時に1体を残して他全てのラルフは靄になってその場から消えてしまった。


「どうして、気づいたのですか」


「お前らは動きが統一しすぎてるんだよ。独立した分身ならもっと俺をかく乱して直ぐに倒すことだってできるはずだ。そいつらは投影されてるんだろ?」


「ええ、そうですよ。所詮私は、幻影魔法すらも使えない弱者。――でも、貴方では絶対勝てません」


 ラルフが頬を吊り上げると、ポケットから手のひらサイズの黒い錠剤を取り出し口に含む。

 直後、彼の周囲に黒い雷鳴が走った。


「グ……ゥァアアアアアア!!!!!」


 禍々しいオーラを発して、ラルフの姿が変容していく。白く透き通るようなエルフの肌色ではなく、肌は褐色より少し暗い所まで染まって、背中には今までなかった黒い翼が生えている。


 魔族よりも悪魔らしい様相だった。


「さぁ、本番はここからですよ」


 第2R開始である。

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