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エッセイ集

「記事は小学5年で読めるように書け」と教育された元専門ライターの文章論

作者: 瀬川雅峰

ツイッター記事を沢山の方に読んで頂いたので、こちらに再編集して掲載しました。

 最近ツイッターを見ていると「わかりやすい文章を書こう」という議論の場面にちょくちょく出くわす。で、その中で「小学生に読めるように」とか、「偏差値○○でも読めるように」といった意見が出てきて「小学生でも読める文章にしろとか、馬鹿にしてるのか」と噛みついている人が出てくる。

 どうも、小学生でも読める文章=稚拙で子供向けの文章、と捉えてしまっているらしい。


……いや、そうじゃないんですよ。



 専門誌ライター時代、記事は「小学5年以上で読めるように書け」と言われた。小学生までに触れている標準的な語彙、文章構造の複雑さを念頭に置いて、難解な専門誌の記事を書いた。

 そのためには書き手が物事を正確に、構造的に理解していなくてはならない。知ったかぶりや特殊な語彙の使用は、書き手の逃げであり、自己満足である、と厳しく教育された。


 文章を仕事にしているプロも千差万別で、こうした考え方から遠い人も勿論いる。経験から言えば、大学教授や評論家に不親切な文を書く人が多かった。大学教授の場合は、正確性の担保を考えてそうしているのであろうケースも多いが、相手にわかってもらおう、という気持ちの弱い文章は、読めばどうしてもわかってしまうものだ。専門用語をただ並べて一見さんお断りの文章にしてしまったり(多くは本人の理解、抽象化不足)主語と述語の関係を整理しきれず文脈がこんがらがってたり。



 で、ここから本題の小説の話なのだが「小説家になろう」などのウェブ小説サイトを読み歩いていると、初心者に近い人ほど、日常で使わない語彙を得意げに使っていたり、主語と述語の関係が捻れていたりする。そして何より恐ろしいことに、多くの書き手はその弱点に気付いていない。


 文章力を本気でアップさせたいなら、評価されているプロの文に大量に触れて技術を盗むのが近道だ。名文とされる作品を書き写し、言い回しやリズム感を学ぶのもいい。

 でも「自分の文」に拘りが強い人ほど、文の弱点に自覚的になりにくい。何十万字も書いてるのに、そうした「悪いクセ」が抜けない、読みにくいまま(というかぶっちゃけ日本語がちゃんと書けてない)人が結構いる。


 


 時に、なんで読まれないんだろう、と嘆いている方の作品も読むが、正直「文章の初歩ができていない」と感じさせてくる作品に出会う率は高い。頼まれて指摘したこともあるが「自分のはラノベじゃなくて純文学なので」「わかりやすいだけが正しいとは限りませんよね」と素直に聞いてもらえないことが多くて……さすがに「あなたの文章、日本語としておかしいです」と直言するのは指摘する側としても辛い、つーか大抵の場合、書き手には自覚がないので喧嘩になってしまう……黙ってブラバするクセがついてしまった。



 どの作品にも熱意が一杯こもってて、見せたい場面、キャラを考えて書かれた大事な作品なのはわかっている。でも、文章がわかりにくい、ひっかかるというのはやはりストレス大で、せっかくの見せ場前で読み手を離してしまう…読みやすさのために3回はじっくり見直す派として、推敲大切にしようよ!と主張したい。

 推敲のときに一度声に出して(つぶやきでも、心の中ででも)読み上げてみるだけで、この文直るんじゃないか? と思うケースは多かったりする。

 自分で書いた文の表現、句読点まで正確に音にしてみると、ひっかかりは相当拾えるはず。最近は読み上げアプリや、読み上げ機能のあるワープロソフト(一太郎)も良い、と教えてもらった。ほんの一手間で、ぐっと読みやすい文章になるはずなのだ。


 書き手の、読み手への「心配り」が感じられる文は、それが自然と伝わってくるものだ。気持ちよく読めるものなのである。

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書籍情報はこちらのnoteにまとめております。
i360194
― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 僕は学生なので、小学5年よりは少し年齢が高いくらいなのですが、自分の周りは言うと悪いですけど、語彙力皆無クラスメイトがちょっと多めなので、その人たちを基準にしています。 …
2022/02/03 13:19 退会済み
管理
[一言] これ分かっていない新規著者様が多いんですよね・・。 華麗な文書を駆使出来る自分が凄いと思っている自己陶酔型の素人著者様が・・。 一番酷いのが、「平坦な文章しか書けない」他者は馬鹿と思ってい…
[良い点] 私もプロライターなので本当にこちらのお話に完全同意です。でも、なぜか文章力のない人に限って自分の文章に自信を持っているんですよね。「文章の基本がなっていませんよ」って指摘するわけにもいかず…
感想一覧
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