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捜索

 3日後、僕達はエルマン君が乗った船の捜索に乗り出した。

 フグレイク連合やハンザ連邦から運んできた積み荷の売却金は、まだ受け取っていない。今は海運ギルドと商業ギルド共営の市場に出荷しただけで、まだ査定は出ていないのだ。

 おそらく、この捜索が終わった頃には結果が出ているだろう。


 それと、今回は準備として食料や医薬品を詰んでいるだけではない。ヘーゲル号の方も救助を満足に出来るように強化を施してある。


 まず、2層だった船体を3層に増やした。3層無ければ設置出来ない設備があったからだ。これが1000ポイント。

 次に、医務室を設置した。この医務室は通常の診療の他に手術室、ICU、調剤薬局などを完備しており、大きな病院にも匹敵する設備だ。

 この設備が3層必要な設備で、6000ポイントかかった。


 そして4人部屋を作った。船員も含めるとそれなりの人数になるし、その人達を収容するための部屋が必要になる。

 これは船体が2層あり、なおかつ50メートル以上必要だが、すでに60メートルになっているので条件をクリアしている。

 3部屋ずつ装備でき、最大12部屋まで増設できる。もちろん12部屋設置した。

 3部屋で1500ポイント、6部屋で3000ポイント、12部屋で6000ポイントと倍々の値段設定になっている。合計15000ポイント。


 合計22000ポイントもかかったが、フグレイク連合から帰国の途上で(主にジェーン姉様が)遭遇した魔物を片っ端から討伐していたので、それほど問題も無く支払う事が出来た。


「お兄様、どこを探すのですか?」


「捜索隊よりも遠い場所を探すつもり」


 ハーバート支部長から提供された今までの捜索隊が探した航路は、沿岸から少々離れた程度だった。

 それ以上遠方を捜索するとなるとそれなりの準備が必要になるからだ。


 というわけで遠方捜索の準備に取りかかろうとしたところで、僕達が帰国した。

 ヘーゲル号であれば卓越したスピードと航続距離を誇るため、遠方の捜査に適任なのだ。




 そして捜索を開始してから5時間後。位置としてはアングリアコーブとサザンエントランスのちょうど中間地点の沖合。


「ウィル~、なんか流れてるよ~」


 発見したのはジェーン姉様だった。

 引き上げてみると、それは木箱だった。中身はアングリア王国の輸出品の1つ、帆布だった。

 最近アングリア王国の造船技術は急速に発展してきているが、各部品もそれに従い急発展している。

 帆布もその1つで、よく風を捕まえ、しかも丈夫ということで高い評価を得ていた。

 この評価は他国でも同じようで、有力な貿易商品としての価値があるのだ。


 今回の件では、箱の中身はあまり関係ない。注目すべきなのは『箱の方』なのだ。


「船と金貨があしらわれた紋章――エルマン家の家紋で間違いないね」


 エリオットの言うとおり、箱にはエルマン家の家紋が焼印で刻まれていた。

 商品を納めた箱にエルマン家の紋章が入っているということは、貴族家としてではなく貿易商のエルマン商会としての持ち物という性格が強い。


 つまり、海外へ貿易目的で航海を強行したエルマン君の船から流れた物である可能性が高いということだ。


「マリー、この荷物が流されたルートを特定できるか?」


『――演算、完了しました。推測されるルートを表示します』


 舵輪の脇に固定されたタブレットに表示されたルートは、ここからさらに東に向かうルートだった。




 東に航路を取ってから3日たった。

 ヘーゲル号で3日ということは、他の船だと半月はかかるか。


「ウィル、これ以上長引けば――」


「わかっているさ、エリオット」


 エルマン君の船が遭難しているとすれば、タイムリミットが近い。

 さらに、僕達の船も長期航海できる準備をしてきていない。あと2日以内に見つからなければ、一度引き返して補給をしなければならないだろう。


 時間に追われる緊張感の中捜索を続行していると、ついに目的の船を発見した。


 だが、同時に厄介な物もオマケで見つけてしまった。


「複数の船に囲まれている? しかも……戦闘していないか!?」


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