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ハンザ連邦-フグレイク連合間航路

「さて、そろそろだな」


 現在、僕達はフグレイク連合を目指して航海をしている。

 すでに初夏と言ってもいい時期なのに、どんどん肌寒くなる。冬の終わりくらいの気温だろうか。


『キャプテン、流氷が見えてきます』


 マリーがそう言ったが、流れてくるのはコップに入るくらい小さい氷ばかりだった。

 だが、航行に支障を来すような氷が流れてくるまで時間の問題になっていることは確かなようだ。


 しばらく航行を続けていると、10メートルはあろうかという氷が目の前に現れた。


「よし、あの氷に突撃する」


 そのままのスピードを維持して突っ込むと――氷が砕け、ヘーゲル号は何事もなかったかのように航行を続けていた。


「うん、思ったよりも効果があったね、砕氷衝角は」


『現在のレベルですと、船と同程度の大きさの氷であれば難なく砕くことが出来ます。それ以上の大きさですと、船の装甲との兼ね合いとなります。最悪、船がダメージを受けるでしょう』


 もし限界を超えた大きさの氷と遭遇した場合、マリーが知らせてくれたり自動で回避してくれたりするそうなので、その点は安心だ。


「すごいド派手な破壊だったね~、ウィル~。細かい氷の破片が飛び散って、波も小さい船なら沈められそうだったし」


 砕氷衝角のテストは事前告知していたが、見学していたのはジェーン姉様だけだった。

 映像は撮ってあるのでマリーに頼めば見られるが、実際に生で見ようとしたのはジェーン姉様だけだった。

 しかも姉様は、わざわざ船首まで行って見ていたのだ。


「ねぇ、今度は氷を砲撃してよ~」


「そんな無駄なことはしませんから。あくまで、航行の邪魔だったから破壊したに過ぎません。それに小さな船を沈められる波が立つんだったら、無闇やたらに破壊するわけにはいかないでしょう」


 それを聞いて不満げな顔を浮かべる姉様だったが、決定を覆すつもりはない。

 もし死角に他の船がいて、気付かずに氷を破壊してしまったら? 破壊の際に起きた波にその船が飲み込まれ、出さなくてもいい犠牲を出してしまうだろう。


「それより、メアリーとエリオットは工房ですか?」


「うん。何か作るのに熱中してるみたい。そのおかげで、あたしがヒマしてるんだけどね~」


 とりあえず、様子を見に工房に行ってみるか。




 工房はその名の通り、様々な研究や開発が出来る施設だ。

 多人数で作業するときに向いている大きな作業台が1つと、個人で集中して作業するときに使う個人用の作業台が何台か置いてある。

 そのほかにも様々な工具や装置が置かれており、狭いながらもディベロップールにある研究施設と遜色ない、あるいはそれ以上の充実ぶりだ。


「エリオット、調子はどう?」


「うーん、ちょっと行き詰まってるかな」


 現在、エリオットは工房で『太陽を見られる六分儀』を作ろうとしていた。

 この世界では、羅針盤による方角の把握と天体観測を使った現在位置の把握を利用して航海している。

 理論上、太陽を観測しても星を観測した場合と同じ高価が得られることがわかっているが、当然ながらレンズを通して直接太陽を見るのは危険すぎる。

 そこで太陽の観測に適したレンズを開発しようとしているのだが、エリオットはかなり苦戦しているようだ。


「まだアイディアはあるんだけど、材料がないんだ。フグレイク連合に到着するまで、別の研究をやることにするよ」


「そう。フグレイク連合に着いたら、目当ての材料に出会えると良いな」


 エリオットとの会話を切り上げ、次は個人用の作業台にいるメアリーに声を掛けた。


「お兄様、見てください! 新しい砲弾が完成しました!」


 メアリーに見せてもらった砲弾は、毒々しい紫色に塗装され、ドクロマークが描かれた砲弾だった。


「着弾すると毒ガスを噴出する『毒ガス弾』です!」


 実はメアリー、医療や回復魔法の才能の他に毒魔法の才能もある。とは言っても本人曰く『副次的に毒魔法を使えるだけで、ちゃんと毒魔法の才能を持っている人に比べると上手くない』そうだ。

 おそらく、メアリーのスタチューがヘビであることと、医療に欠かせない薬は毒と本質的に同じ事が要員だろう。


 まぁとにかく、メアリーが毒魔法を込めて作った砲弾が、この毒ガス弾なのだ。


 正直エグくてちょっと引きそうになったが、一生懸命作ったのに苦言を呈するのはどうかと思い、お礼を言っておいた。


「ありがとう、メアリー。有効に使わせてもらうよ」


「褒めてもらってうれしいです、お兄様!」


 この後、正式に毒ガス弾がマリーによって登録されており、全砲門に1発装填する数の砲弾を50ポイントで購入出来るようになっていた。



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