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到着、ハンザ連邦

「陸だ、陸が見えるぞ!」


『位置照合。あの陸地は間違いなくハンザ連邦の都市、スダインガングです』


 アングリア王国を経ってから1ヶ月と少し。予定よりも早くハンザ連邦に到着した。

 ここまで来るのは大変だった。海賊とは鉢合わせず、魔物はジェーン姉様がさっさと倒してしまったので命の危険は無かったが、退屈との戦いだった。


 途中でヨットというゲームを紹介したりもしたが、同じゲームをしていると飽きてしまう。

 賭けを行ってスリルを出してみると最初は白熱したが、閉鎖空間で決まった人とのやりとりでは得をした気に慣れないことに気付いてしまい、やはり飽きてきた。


 しまいには、メアリーにこう言われてしまった。


『お兄様、私はもう退屈で死んでしまいそうです。だから今夜は身体を重ね合わせて、熱い夜を過ごしましょう?』


 甘えた声で言われたもんだからドキドキしてしまったが、残念ながらこの状況になっても僕は既成事実を作る勇気を持てなかった。

 メアリーの機嫌は悪くなってしまったが、その日の夜は思いっきり抱きしめてやったので少しは機嫌が直ってくれたと思いたい。


 なお、エリオットの方も似たような物だったらしい。

 相手があのジェーン姉様なので無理矢理ヤられるような口調だったらしいが、意外とエリオットの拒否に素直に応じたらしい。

 ジェーン姉様の要求を断れるのは母様と兄様位だと思っていたので、正直びっくりした。


 ともあれ、ハンザ連邦の南の玄関口『スダインガング』に寄港するため、すぐさま停泊操作を行う事にした


「帆を畳め、微速前進」


『了解。帆の展開を50%まで縮小。以後、自動で帆の面積を調整し、速度を管理します』


 そして桟橋に近くなると、停泊命令を出す。


「帆を全て畳め。錨を降ろせ。タラップを桟橋と接続しろ。停泊だ!」


『帆の収納、完了。投錨、完了。タラップと桟橋の接続、完了。停泊作業全て完了しました。お疲れ様です、キャプテン』


 停泊作業が完了したところで、メアリーとエリオットが話しかけてきた。


「長かったな」


「本当に退屈でした。でも街に到着できたから、ちょっと羽を伸ばしたいですね」


「気持ちはわかるけど、その前にやらなくちゃいけない事があるよ、メアリー」


 スタインガングの海運ギルドへ寄港手続きを行わなければいけないしノーエンコーブの海運ギルドへ連絡を取る必要もあるが、それと同じくらいやらなければならないことがある。


 それは、積み荷の売却だ。


 これまでも僕は積み荷を運んだ経験はあるが、全て誰かの依頼によって荷物の受け渡しをしていた。つまり運送の仕事をしていたわけだ。

 だが今回は、自分で売却するための積み荷を仕入れて運んでいる。つまり貿易商的な活動をしている。

 ということは、きちんと積み荷を売却してお金をもらい、それを元手にこの街でアングリア王国に運び込む商品を購入しなければならない。


 しかし、僕らはハンザ連邦に来たのは初めてで、従ってこの国で取引相手になってくれそうな商人とのツテはない。

 変に商人と取引しようとすれば騙される可能性もあり、大損させられる可能性もある。


 ではその状況でどうやって積み荷を売却するかというと、実は海運ギルドと商業ギルドが今日で運営している市場が一定規模以上の港には存在している。 

 この市場を利用すれば、ほぼその国もしくは街の相場通りの取引が出来て安心なのだ。

 もちろん、直接商人と取引した方が高い利益を得られる場合もあるが、信頼できる商人が以内場合は市場を利用するべきだろう。苦労して長い船旅をしてきた価値が吹っ飛ぶどころか、さらなるトラブルを引き寄せる可能性もあるのだから。


 市場は、ハンザ連邦の南の玄関たるスタインガングにももちろん存在している。

 積み荷を売却するときは海運ギルドか商業ギルドに申し込めばいいので、寄港手続きのついでに申し込んでおくことにする。


「ってことで、これから海運ギルドに行ってくる」


「お兄様、私も一緒について行きます」


「行ってらっしゃい。僕はジェーンと留守番しているよ」


 というわけで、僕はメアリーと一緒に海運ギルドへと向かった。




 海運ギルドで寄港手続きと市場への積み荷の売却の申し込みを行い、特にトラブルになる事も無く終わった。

 積み荷に関しては今日の昼過ぎに引き取るそうなので、それまでに宿を取る。

 幸いスタインガングは大きい街で、こういう大きい街では海運ギルドで宿を取ることも出来る。


 全ての手続きがスムーズに進み、宿も取れて今回の航海は成功かな、と思っていた。

 しかし、思わぬ落とし穴が僕達を待っていたのだった。



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